命懸けの賭け
昼休み。俺は屋上に居た。基本的には進入禁止だが、俺は用務員なんで入ることが出来る。
ここなら邪魔が(主に綺堂)が入らない。
後は六角が俺を見つけるのを待つだけだ。昨日とうって変わって空はどんよりとした雲に覆われ、日の射す隙間もない。
こりゃ、絶好だな。アレな展開が来るには。
どたどた足音がする。来たみたいだな。
演出のためにフェンスから外でも眺めとこう。待ってたって感じだすと不自然だしな。
「用務員!」
六角が大声をあげながら、ドアを壊さんばかりの勢いで開いて現れた。
顔だけ向けてみるが、こりゃ相当怒ってら。ま、それも計算のうちよ。
「私はこんな屈辱受けたのは初めてだ!」
どこから持ってきたのか竹刀を突きつけてくる。
「勝負しろ!」
言って、こっちにも竹刀を一本投げてよこした。いらねーっつーの。
「やなこった」
「この臆病者が!」
目を吊り上げて大声で叫んでる。ふふん。キャラから推察するに、こいつは昔から一人で敵と戦いながら各地を転々としてたから、自分の能力がだけが拠り所になってるんだろう。
今まではサブキャラにそういうのが多かったが、最近はヒロインでそれ系のも多い。
まぁ、そのかたくなさを解きほぐすのも主人公の役割なわけだが、とりあえずそれは後回し。今は作業に集中しないと……。
「いい加減にしろお子ちゃまが。ちょっと人より優れてるってだけでもう天狗か」
さて、これからが肝だ。タイミングだけは絶対に外さないようにしないとな。こりゃ命がけのギャンブルだぜ。
行くぜ。ここで苦言を呈せば……
「だいたいお前みてえな奴は、周りの事なんか考えずに、自分が一番正しいと思って周りを巻き込むんだ。いい疫病神……」
残り二文字! 今だ!
俺は疫病神に続く「だよ」の二文字を飲み込み、正面に思い切りジャンプした。
「!?」
六角の顔が驚愕に歪む。
それは俺が突然跳んだからじゃない。
つい一瞬前まで俺が居たところに巨大な鎌が突き立っていたからだ。