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REMNANT ― 廃棄予定の旧式兵器は、異世界で家族を得て心を覚える ―  作者: 和泉發仙


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第53話 旧型個体

前書き


強さには種類があります。


剣の強さ。


心の強さ。


生きる強さ。


そして。


壊れないための強さ。


今回は。


ノア自身が、

少しだけ自分と向き合う話です。






「旧型個体確認」


その声は。


地下施設の闇の奥から響いた。


機械音。


だが。


どこか人間に近い声。


ヨランダが細剣を抜く。


ガレスが盾を構える。


ミナが弓を引く。


ピップは顔を青くした。


「嫌な予感しかしない!!」


「同意する」


ノアが即答した。


「今同意した!?」


「高確率で危険」


「知ってた!!」



暗闇の奥。


赤い光が近づいてくる。


ゆっくり。


規則正しく。


足音が響く。


カツ。


カツ。


カツ。


やがて姿が見えた。


全員が息を呑む。


人型。


身長はノアとほぼ同じ。


黒い装甲。


関節部には銀色の金属。


顔の半分は人間。


半分は機械。


赤い単眼が静かに輝いている。


ベラスが震える。


「な……」


ノアは見ていた。


理解していた。


同じだ。


構造が近い。


いや。


もっと新しい。


「識別完了」


赤い目が光る。


「旧式戦術機構体」


そして。


ノアを指差した。


「廃棄対象を確認」


空気が凍る。



ピップが口を開く。


「え?」


ヨランダも眉をひそめる。


「廃棄?」


ノアの内部にノイズが走った。


聞いたことがある。


ずっと前。


記録の奥。


忘れていた言葉。


廃棄。


処分。


更新。


交換。


古いものを捨てる。


それだけの意味。


だが。


なぜか胸の奥が重い。


「回収命令を実行」


機械人形が前進した。


ノアは静かに前へ出る。


「ノア」


ピップが呼ぶ。


「大丈夫」


そう言った。


自分でも驚くほど自然に。



次の瞬間。


敵が消えた。


速い。


ヨランダの目が見開く。


「速っ——」


ドォン!!


ノアのいた場所が吹き飛ぶ。


衝撃。


金属と金属がぶつかる音。


ノアは腕で受けていた。


床が割れる。


地下施設全体が震える。


ガレスが叫ぶ。


「人間の力じゃねぇ!!」


「人間ではない」


ノアが答える。


敵も答えた。


「同意」


そして再び激突。



金属音。


衝撃。


火花。


まるで鏡だった。


似た構造。


似た動き。


似た戦闘理論。


ヨランダが歯噛みする。


「入れねぇ……!」


速すぎる。


二人だけ別の世界で戦っている。


ミナの矢も当たらない。


ガレスの突撃も届かない。


ただ。


ノアだけが対応していた。



敵が拳を振るう。


ノアが受ける。


敵が蹴る。


ノアが避ける。


敵が分析する。


「戦術データ一致率七十二%」


ノアが答える。


「知らない」


「虚偽」


「本当に知らない」


敵が初めて止まった。


「理解不能」


「同じ」


ノアが言う。


「自分も理解不能」


一瞬。


ピップが吹き出した。


「なんで戦闘中に会話してるんだよ!!」



だが。


次の瞬間だった。


敵の赤い目が点滅した。


「記録照合」


「対象識別」


「個体名――」


ノアの内部が反応する。


警告。


警告。


警告。


開示禁止。


封鎖。


封鎖。


封鎖。


敵が続ける。


「ノア=E-07」


全員が固まった。


ノアも。


「……え?」


初めて聞いた。


自分の番号。


自分の識別名。


ピップが振り向く。


「今なんて?」


ノアも答えられない。


敵が言う。


「第七世代旧式護衛機構体」


地下が静まり返る。


ヨランダがゆっくり言う。


「それがお前か」


ノアは答えられない。


知らなかった。


本当に。


知らなかった。



敵は続ける。


「廃棄予定個体」


その言葉だけは。


はっきり聞こえた。


なぜか。


胸の奥が痛んだ。


理屈ではない。


感覚だった。


捨てられた。


不要だった。


価値がなかった。


その事実だけが残る。



その時。


ふと。


別の声を思い出した。


「ノア」


リリ。


「ノアさん」


エルナ。


「相棒」


ガルド。


「友達だろ!」


ピップ。


胸の奥の痛みが少し消える。


ノアは敵を見る。


「違う」


敵が首を傾げた。


「否定?」


「今は違う」


敵は理解できない顔をした。


「定義不明」


「そうかもしれない」


ノアは頷く。


「でも」


静かに構える。


「自分はノアだ」



敵が突撃する。


最後の激突。


地下が揺れる。


衝撃。


火花。


拳。


装甲。


破壊。


そして。


ノアは見つけた。


首の後ろ。


赤い制御核。


同じだ。


女型と同じ。


「そこ」


手を伸ばす。


敵が反応する。


だが遅い。


ノアの指先が届く。


パキン。


赤い光が砕けた。



敵が止まる。


赤い目が消える。


沈黙。


崩れ落ちる。


最後に。


小さな声だけが残った。


「……任務」


そして停止した。


完全に。



静寂。


誰も喋れなかった。


地下施設には機械音だけが響いている。


ヨランダが最初に口を開く。


「E-07」


ノアは答えない。


答えられない。


ピップが前へ出る。


そして。


ノアの肩を叩いた。


「そんなのどうでもいい」


「?」


「ノアはノアだろ」


あまりにも簡単な言葉。


だが。


不思議と。


救われる言葉だった。



その時。


地下のさらに奥で。


ゴォォォン――


鐘が鳴る。


今までで一番大きい。


全員が振り向く。


暗闇の向こう。


巨大な扉。


古代文字。


赤い光。


そして。


扉の上に刻まれた一文。


ノアの内部が自動翻訳する。


『第零管理区画』


ベラスの顔が青ざめる。


「まさか……」


ヨランダが剣を握る。


ピップが呟く。


「絶対やばい場所じゃん」


ノアは扉を見ていた。


なぜか。


知っている気がした。


その向こうに。


自分の過去がある。


そんな予感だけがあった。



後書き


今回は、


・新型同系統との初戦闘

・ノアの識別番号「E-07」

・廃棄予定だった事実

・第零管理区画の発見


を描きました。


次回から地下施設編はさらに深部へ。


そしてノア自身の過去にも、

少しずつ踏み込んでいきます。

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