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今度は三国志の真っ只中にいます  作者: 水原伊織


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61.未来からの警告 ー異形の正体と“核”の存在を知った俺たちー

アキトとミナが生きていた未来。

あの世界は、AIと人類が共存し、戦争のない平和な時代だった。

だが、そのさらに先の未来は、まったく違っていた。


廠と織に語りかけていた“声”の主。

その正体は、未来の地球に生き残った科学者の一人、グレイだった。


彼は、かつてアキトとミナが生きていた時代の、数百年後の世界に生きていた。

地球上の人口は、かつての 一割以下。

都市は崩壊し、海は濁り、空は黒い雲に覆われている。


グレイは、廃墟となった研究施設の奥で、通信装置の前に座り、かすれた声で記録を残していた。


「こちらグレイ。生存者は、世界で数千人を切った。異形の侵攻は止まらない。我々はもう、限界だ」


数年前。


世界は突然変わった。

空が裂け、黒い光が降り注ぎ、そこから“異形”が現れた。


最初は小さな個体だった。

だが、数は増え続け、やがて巨大な群れとなり、都市を、国家を、文明を飲み込んでいった。


人類は最先端の兵器を持っていた。

AI兵器、軌道砲、量子シールド、あらゆる技術を総動員した。


だが、数が違った。


異形は無限に湧き続け、倒しても倒しても、黒い裂け目から次々と現れた。


人類は追い詰められていた。

異形の出現から数年。


都市は次々と陥落し、海は黒く濁り、空は灰色の雲に覆われた。

そして、人類はついに“禁忌”に手を伸ばした。


核兵器。


本来ならば、二度と使われてはならないはずの兵器。

だが、異形の群れは都市を飲み込み、地下シェルターに避難した人々すら追い詰めていた。


「……撃つしかない」


そう判断した国家は、核を落とした。


地上は焼け、地下は崩れ、人類は自らの手で自らを削り取っていった。


だが、異形は死ななかった。


むしろ、核の熱と放射線を“養分”にするかのように、さらに数を増やしていった。


「…地球が、人類を拒んでいる」


その仮説を、最初に口にしたのがグレイだった。


----


グレイは、崩壊した研究施設の地下で、異形のサンプルを解析し続けていた。

ある日、彼は恐るべき仮説に辿り着く。


「異形は、どこかの時代で増殖を繰り返している」


異形の細胞は、この世界の物質では説明できない“歪み”を持っていた。


「時空の狭間、どこか別の時代で力を蓄え、この時代に送り込まれている……?」


その仮説は、後に廠が見た“黒い塊”と完全に一致する。

異形は、未来と過去を行き来しながら増殖していたのだ。


そして、グレイには誰にも言えない秘密があった。

彼もまた、廠と同じ“転生者”だった。

かつて、さらに未来の世界で、人類が完全に滅びる瞬間を見た。


都市は崩れ、海は黒く染まり、空は裂け、異形が地球を覆い尽くす。

その地獄の中で、最後まで生き残っていたのが――グレイだった。


「……誰もいない。人類は終わったのか」


その孤独と絶望は、言葉では表せないほど深かった。


そして気がつけば、彼はこの時代にいた。

廠と同じように、理由もなく、説明もなく。


ただひとつだけ確信していた。


“異形を止めなければ、未来は必ず滅ぶ”


グレイは、廃墟の研究室で通信装置を握りしめた。

誰かに届けばと思って、周波数をランダムに設定し、言葉を繰り返した。

その声が届いたのが廠だったのだ。


----


神域の守りに一万を残し、残るすべての三十万の兵が動いた。


劉備軍、神軍、そして各将の精鋭部隊。

それぞれが数万単位の兵を率い、大地を揺らしながら洛陽へ向かう。


先頭を走るのは、紅陽の騎馬隊。

その背には、廠の旗がはためいていた。


「洛陽まで、あと数里」


伝令の声が響く。


廠は馬上で槍を握り、前方を見据えた。


----


地平線の向こうから、黒い波が押し寄せてきた。

異形の群れ。

巨大アリの大軍。

地面を埋め尽くすほどの数。


紅陽が叫ぶ。

「殿、前方に異形の大群が」


張飛が槍を構え、笑った。

「よし、やっと出てきやがったか」


劉備軍の後方では、紅仁が歩兵を整列させる。

「全軍、構え! 押し返すぞ!」


廠は前方を指差した。


「紅陽、洛陽の、あの塊を破壊しなければ、終わらない」


紅陽は槍を掲げ、叫んだ。

「突撃」


----


紅陽の騎馬隊が、黒い波へ、一直線に突っ込んだ。

異形の群れを切り裂き、巨大アリの甲殻を砕き、血と黒い体液が飛び散る。


だが紅陽は止まらない。


「道を開け」


騎馬隊が一斉に叫び、洛陽城門へ向かって突撃する。

その先、洛陽の空に、黒い塊が浮かんでいた。


脈動し、光を放ち、まるで“呼吸”するように膨張している。


廠が叫ぶ。


「あれだ、あれがタイムマシンだ、破壊しろ」


----


紅陽が城内へ突入する一方、廠と劉備軍は異形の大軍と正面から激突していた。


「押し返せ」


張飛が槍を振り回し、十数体の異形をまとめて吹き飛ばす。


関羽は静かに、しかし確実に首を刎ね、趙雲は白龍のように駆け抜け、紅仁は歩兵五万を率いて前線を押し上げる。


廠は槍を構え、異形の中心へ突っ込んだ。

「ここを突破する」


劉備が叫ぶ。

「前へ進め」


異形の大軍は無限に湧くように見えたが、三十万の軍勢は圧倒的だった。


大地が揺れ、空気が震え、戦場は黒と赤に染まる。


----


紅陽は城門を突破し、洛陽の中心へ馬を走らせた。


「……なんだ、これは」


洛陽の空に浮かぶ黒い塊は、かつて鄴で見たものよりも巨大だった。

脈動し、光を放ち、その表面には無数の“目”のような模様が浮かんでいる。


まるで、未来の異形本隊がこちらを覗いているかのように。

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