第36話 「電話2」
廃ビルの一階にある電話機が、いきなり鳴った。
西牙丈一郎は、銀色のペンダントの上蓋をカチリと閉じると、鳴りつづけている電話機を眺めた。
そして、意を決した様に電話に出る。
「もしもし」
西牙丈一郎は、電話の子機を掴むと言葉を発した。
「お久しぶりです・・・西牙さん」
電話の向こうから、聞き覚えのある声が綺麗に聞こえてきた。
あの戸倉一心である。
「ククク、久しぶりじゃねぇーか?」
西牙は気味の悪い笑い声を出して、それに答える。
「すみません。いろいろと野暮用がありまして・・・」
戸倉は静かに言う。
「あと・・・うちの香川君が大変お世話になったみたいで・・・」
戸倉一心の口調が少し強まった。
それはそうであろう。
自分が一番可愛がっていた男が、敗北して病院送りにされたのである。
その感情が言葉に出ない方が不自然である。
「ククク、香川浩介か。あれは美味しかったぜ、戸倉一心さんよ」
西牙丈一郎は、戸倉一心の名前をはっきりと言った。
「ほう、私の名前をご存知でしたか?」
戸倉は言う。
「ククク、お前ほど有名な裏社会の人間はいないだろうが」
「そうでしょうか・・・」
「ところで、何時まで俺を待たせる気だ?」
西牙はニチャリとした口調で言う。
「もう少し待って頂けませんか?ちょっと面白い人物を見付けましてね」
戸倉は楽しそうに言った。
「面白い人物だ?ククク、俺よりもか?」
西牙は軽く喰らい付く。
「そうです。あなたと同格、いや、あなた以上かも知れませんよ、その男は」
戸倉はそう言うと、電話を切ろうとした。
「俺以上だと?ククク。誰だ?」
西牙は戸倉に問いかける。
「中国の至宝・李宗民ですよ」
戸倉は、また後日電話しますと最後に言うと、電話を切った。
「李宗民だと?ククク、知らねぇな」
西牙丈一郎はポツリと呟くと、電話の子機を電話機に置いた。
そして、両手を頭の後ろに回すと、そのまま上を向いて天井を眺めた。
「相手が誰であろうと・・・俺の邪魔をする奴は壊すだけだ」
西牙はニヤリと笑った。




