表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生!貧乏貴族の下剋上物語  作者: かめねこ
第一章 タイゼック家の使用人
35/56

第34話 本気!vsゴーレム決着

 ズドン――!!!

 大地を揺るがすほどの衝撃が横切る俺の近くで起きた。


「大丈夫か?」

「......ソルト?」


 どうやら大丈夫っぽいな。

 潰されそうになったクイキを間一髪で助けることができた。

 ただ、助ける時にお姫様抱っこの形で抱えたんだが、足を抱えている方が少し......いや、これ以上は何も言うまい。クイキの尊厳は守ろう。


「......ソルト、もう足生えたの?」

「ああ、助けてくれてありがとう」


 実際クイキの手助けが無かったら俺は死んでた。

 また恩を作ってしまった。ホント、どこまでも優しい人っているもんなんだな。


「......こちらこそありがとう」

「いやいや、当たり前のことをしただけだよ。じゃあクイキはここにいてね」


 クイキをおろすともう2、3歩下がらせる。

 さて、そろそろ本気を出そうか。

 俺はこのゴーレムをなめてた。トゥアベアやオークを単独で倒せたからだろう。

 チートを持ちまくった俺は自分の強さに酔いしれていた。前世ではもちろん強く無かったから、ここまで順調に進むことで俺は神に愛されていると(おご)っていた。


 そんなことないのにな。

 よく考えればわかるだろう。いくらスキルが高レベルだとしても元の体は5歳児。スキルや技で底上げしたって元が弱いんだから普通の成人男性より少し強くなるぐらいだ。

 しかし対戦経験が浅く、もらったチートでさえ完璧には使いこなせていない。


 こんな弱いくせに何が助けるだ。


 本当にカッコ悪いな、俺。

 第一このゴーレムはBランクの魔物を倒すぐらいの強さなんだ。トゥアベアより一回り以上強い。

 今度こそ本気で......あいつを倒す。

 俺が(にら)み付けるとゴーレムもこちらを見てきた。


   *


 ゴーレムを倒す。

 まず、ゴーレムとは何か。それは【ゴーレムの核】を使って作られる人工の魔物だ。

 主人には忠実だが、一度敵と見なした奴には容赦せず襲い掛かる。しかも核を壊されない限り何度でも修理できるため、この国にはゴーレム軍という国内最強の騎士団の次に強い軍が配備されているほどだ。


 そんなゴーレムを倒すには四肢を切り離し行動不能にするか、ゴーレムの核を破壊するしかない。だから剣技の子では心臓部分しか見つからなかったのだ。

 このゴーレムは自動治癒の付与がついているから一つ切り離してもなんとかしてくっつけてしまう。この方法はパーティーで臨むときの作戦だ。


 だから今回はゴーレムの核を破壊することが目的となる。しかしゴーレムの核の回りは作った本人も壊されて欲しくないので、他より強固に作られている。普通の剣じゃ傷をつけることもできないはずだ。

 ......一応やってみるか。これで倒せればそれで終われるけど。


 俺は走りだしてウルセルクを構え直す。

 そのまま大ジャンプして技を自分にかけて突きを放つ。


「[剣術技・十二支剣技 亥]」

 ガキンッ......


 亥は突き技に限り攻撃力、制度、速度、さらに剣自身の耐久力を大幅に引き上げてくれるもの。

 しかしこれは発動時間が1分な上に、使ってから20分のインターバルが必要とするため、使いどころを考えないといけない。

 そんな技を使ってもゴーレムにはかすり傷程度でしかない。


 やはりダメだったか。

 空中で隙だらけになった俺にゴーレムのパンチがとんでくる。


「[申]」


 咄嗟に続けて十二支剣技を発動し、5本目の手足でゴーレムの肩に掴まり、自分の身を引き寄せる。

 と同時に俺が元いた場所をゴーレムの拳が通り過ぎた。

 あぶね。またふっとばされるところだった。


 今使った技[申]は尾骶骨(びていこつ)から尻尾が生えてくるというものだ。

 この尻尾は5本目の手足と言えるぐらいに自由に操ることができ、何処までも伸ばすことができるという代物。

 ただ引く力は強いものの、押したり凪ぎ払ったりなどは全くと言ってもいいほど威力がない。


 欠点らしい欠点もないこの技だが一つだけ問題がある。

 顔が、というか体が、全体的に猿寄りに変化するのだ。

 猿な俺なんてあまり人様に見せたくないけど、今はそんなこと言ってられないからしょうがない。それとお尻らへんのズボンが破れるのも嫌かな。恥ずかしいし。


 申を解いてゴーレムの肩から飛び降りる。

 膝の屈伸と前転を活かして落下の衝撃を外に逃がす。


 これでもダメなら次の手だ。


「[十二支剣技・会局]」


 これはまだ発動準備段階。

 これを唱えてから集中しないといけない。

 多少時間はかかるが、神経をウルセルクに研ぎ澄ます。

 その間もゴーレムの攻撃は続くが、どれも確実によけていく。


 ............――できた。

 [十二支剣技・会局]とは俺ではなく、俺の持っている剣を強化する剣技。

 全部で4種類あり、普通の十二支剣技のうち決まった3つを消費することで使える。

 今から使うのは発動している間、巳酉丑を使えなくする代わりに使えるもの。


「[会局 秋]」


 発動した瞬間ウルセルクを落としてしまった。

 ゴトン......。とウルセルクは短剣が出すとは思えない音をだして地面に落ちた。


 思っていたよりも重くて手が滑ってしまった。


 会局・秋は剣の耐久力と切れ味を60倍にまで高める技だ。しかしその代わりに重量も60倍に増える。

 短剣は元が1キロぐらいだからだいたい60キロぐらいまで重くなる。

 いくら寅で筋力を上げていても、いきなりこんな重くなったら手を放しちゃうものさ。


 俺はウルセルクを拾い上げて構える。

 今の俺は丑を外しているから持久戦は辛い。この手で決めるならこの一発だ。


 俺は再び走って跳ぶ。

 重い剣を持った俺は、全力で足を振って全力でジャンプしたのに、さっきより遅くさっきより少し低い位置に跳んだ。

 それでもゴーレムの核に届きはした。

 すでに俺の体力は限界に達している。

 やるなら今だ!


 俺はウルセルクを全力で降りおろす。

 しかしその刃はあと一寸先でゴーレムには届かなかった。

 今度は速さが足りず、空中でろくに身動きがとれに俺はゴーレムのパンチのいい的となってしまった。


 しかし俺はもう舐めていない。

 無理だと判断した瞬間風魔法で後ろに下がり、かすっただけですんだ。


 そのまま風魔法でゴーレムから少し離れた地面に降りる。

 会局だけじゃダメなのか。あれだけはやりたく無かったんだけどな。

 しのごの言ってられないか。


「[十二支()剣技 鬼]」


 俺の中にある何かの蓋が開いたような感覚がする。

 知っているだろうか人間は自分の力を2割までしか出せないように脳が制御していると言われている。

 この鬼はそのリミッターを無理矢理外して、火事場の馬鹿力とやらを常時発揮させるというもの。

 ちなみに補足だが、リミッターを外している状態だから体内の魔力が駄々漏れで、これを使っている時は魔法が使えない。


 この技もいつまでもできる訳じゃない。

 今度こそ決着をつける。

 これで決まらないなら俺は完全に負けだ。これが最後の一撃。

 みんなの為にも本気で勝つ!


 俺は会局で重くなったままのウルセルクを正面に抱えて走りだす。

 ウルセルクがさっきより全然軽く感じる。

 途中、ゴーレムの右パンチが上から襲って来たが、余裕でよけることができた。


 そしてついにゴーレムの目の前に飛び上がる。

 同時にゴーレムの左パンチが向かってくる。

 それをウルセルクで防ぎ、弾く。もちろん俺も地面に戻らされるが、ゴーレムは強い力でパンチを弾かれたことでバランスを崩し、隙だらけになる。

 俺はその隙を見逃すことなく、地面に足が付くと同時に再びジャンプし、がら空きのゴーレムの胸にウルセルクを突き立てる。





 ゴーレムの胸にはウルセルクがしっかりと刺さり、中からパリンという音が聞こえた。

 動かなくなったゴーレムはぐらり......とよろめくと、地面に降りた俺のすぐ右側に倒れた。


「――ふぅ......」


 やっと終わったか。

 庭はぼろぼろだが屋敷に被害はないな。よかった。

 ボウラは......おお、立ったまま気絶するという芸当をこなしてる。


「ソルト様~!!」


 ラリアとクイキが走り寄ってきた。

 というか勢いそのままタックルかましてきた。


「うわっ!」

「無事でよかった~!」

「......お疲れ」


 ラリアはハグを、クイキは腕を擦ってくれた。

 ふと視線を感じてその方角をみると、他の使用人たちもここら辺に集まって来ていた。


「本当にあの子がたおしたの?」

「そんな......貧乏貴族だと思って冷たく当たっちゃったわよ!?」

「こんなに有能な貴族なら将来はほぼ安定確実だな。()び売っときゃよかった......」


 ざわざわしている。この人数を誤魔化すのはもう無理だな。潔く俺が倒したことにしておこう。

 あ、そろそろだ。


「あとはよろしく」

「え?」


「グフッ......!」


 何のことかわからないラリアは笑顔で俺の言葉に反応したが、次の瞬間にはその顔は真っ青になっていた。珍しくクイキも焦ったような顔をしている。


 体中のあちこちから血が噴き出す。鬼の副作用だ。

 悪いな。倒れた俺を抱えているラリアにも血がかかってしまった。


 リミッターはそれ以上が危ないから脳が自然にかけるものだ。それなのにそのリミッターを無理矢理こじ開けたら筋肉や細胞が耐えれなくなり、体の制御が聞かなくなる。

 鬼の副作用。それは使用後の大ダメージ。


 聞こえづらい耳には俺を心配してくれる声が聞こえてくる。

 俺の意識はそこで途絶えた。

読んでくださりありがとうございます。

本当、バトルシーンは書けないです。自分が伝えたいことがしっかり表せているかとても心配です。

なんだここと思うところがあったら是非言ってください。何とか修正してみます。


「面白い」「続きを読みたい」「バトルシーンって大変だよね」

と思ったら是非下の評価ボタンを押してください。

作者もそれを励みに頑張りますので、これからもこの作品をよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ