第21話 遭遇!かわいいペットが仲間になりました
◇3日目ー朝
「むんにゃ...?」
「おぉ! 目が覚めたかデール!」
目を開けるとちょうど窓から差し込む太陽の光がデールの脳を活性化させていく。
(私は確か...オークに襲われて...あれ?折れたはずの腕が治ってる)
オークに握り潰されこれまで体験したことの無い激痛が走った腕。今はその腕がまるで何もなかったかの様にキレイな腕に変わっている。
(夢...では無いですよね)
「おじいさま、オークはどうなったのですか?」
「オークなら撃退したよ。あれからもう6時間もたったのだぞ? もうデールが起きなかったら儂どうしようかと...」
まだたった6時間しか経って無いのにそこまで心配してくれるのは嬉しいが、少し過保護な気もする。
そんな祖父にデールは苦笑いをしつつ今一番気になっていることを聞く。
「ソルト様はどうなりました?」
「ん?ソルトか?あいつはたぶん...殺し屋じゃなかったぞ?」
祖父は私が倒れてからあったことを話してくれた。
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「フッ!」
儂の両手剣で斜めに真っ二つにしたオークは群れの最後の1匹だった。
「「「うおぉぉぉ!!」」」
村の皆はそれぞれに喜びを分かち合っている。
「これを金に変えればこの村はあと10年間は安泰だ!」
「流石村長! あんたが村長になってから俺らの村はいいことばっかりだ!!」
そう言って貰えるのは嬉しいが、今回ばかりは儂なんかよりあの少年の方が活躍していた。皆は気が付いていないようだが、儂がオークを1匹倒すとその間にソルトは2~3匹倒していた。
ソルトのあの強さはなんなのだろうか。やはり小さい頃から殺し屋として育てられたからなのだろうか?
そのソルトは...
「あの...」
「うぉ!?」
探していたら後ろから出てきた。
「あまり老人を驚かせんでおくれ、もう長くは無い寿命がさらに縮んでしまうよ」
「はは...あんまり笑えない冗談ですね。ぼくはさっき話した通り急いでいるのでもう行きますね。ぼくがここで戦ったことは秘密で...それじゃ」
そういうとソルトは森の方に歩き出した。
だが儂はソルトの肩を掴み、振り向かせる。
「ちょ、ちょっと待て! このオークはどうするんだ!? ほとんどお前が倒したじゃないか!」
「要らないです。本当に急いでいるので。じゃ」
「あ、おい!」
こちらの止める声も聞かず、ソルトは軽く会釈すると森の中に入って行った。
「今森ではヌシが動き始めたから危険なんだが...」
周りに転がっているたくさんのオークの死体を見たら、心配する気もしなくなった。
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「そう、ソルト様は帰ったのね」
デールは森のある方角を遠くを見る様に眺める。
「そういえばお前らの面倒を任せてたのに、デールを危険な目に遭わせたあの男の処分はどうする? やはり家族ごと死刑にしてしまうか?」
「そんなことより――」
「そんなこと!?」
デールはベッドの上に飛び起きると右腕を掲げた。
「アルジニアはそんなにすぐに動いたら...!」とオロオロしている。傷はもうなくなっている。それは知ってるはずなのに、いつまでも過保護な祖父だ。
テンポを崩されたデールは右腕を掲げ直し、宣言した。
「私、やっぱり王都の貴族学校に行くことにする!」
「...!」
アルジニアはブワッとダムから溢れ出てくるように涙を吹き出した。
「そうか...! いってくれるのか!」
「ええ、明日にはここを出発して王都に戻りましょう!」
「ほぅぇ!? 明日!? 村長の後継者とか...」
突拍子もない発言にアルジニアは思わず老人とは思えない声を出す。さらに出発日を延ばしてくれることを願い、咄嗟に思いついた問題点を提示するが―
「そんなもの元村長から剥奪しただけのものじゃない。そうだ、その案内してくれた男性にさしあげて? あぁ、早速準備を始めなくちゃ!」
「ええ! そんな適当な...」
――見事にかわされた。
次の日、村長はある男性に受け継がれ、元村長となった老人とその孫は一緒に村にいた護衛と馬車で王都に向かった。祖父というのは孫には勝てないものである。
*
アルジニアがデールの発言に振り回さた少し後、アルジニアに呼び出され、今は帰っている男性がいた。
「ただいま...」
家に入るとすぐに妻が近寄ってきた。ずっと心配していたようで額には少し汗が滲んでいる。
「あなた! 処分はどうなったの?」
「それが...」
男性が困った様な顔をしているのを見て妻は息をのむ。
「村長をやれって言われて帰された...」
「......は?」
村の中では小さい方だと言える家には、小さな赤ちゃんが笑顔で安らかに眠っていた。
*
時間は遡り、オークの群れを倒し終えてから1時間たったぐらいのことだった。
ソルトは十二支剣技の卯と寅だけをとき、行きと同じ様に走っていたのだが...
「我の森に入るでない!」
ソルトは立てば2メートルにもなるであろう狐型の魔物と対面していた。その狐の魔物は尻尾が5本ある。
確か名前は...
「妖狐...」
「そうだ、我は妖狐だ」
「あなたとはトゥアベアと同じで喋れるんですね」
その言葉は妖狐にとって気にさわる言葉だったようで、怒ってしまった。
「あんなのと一緒にするでない! あんなの縄張り争いが起きないように少し知能があるだけだ! ...というかトゥアベアと喋れるのかお前」
「まあ一応」
「珍しいな...」
「そうですかね? あ、ぼく急いでるので失礼します」
また走りだそうと、妖狐の横を通り過ぎようとしたその時...1本の尻尾で止められた。
「待て、勝手に我の森に入ったのだ見逃す訳がなかろう」
(めんどくさいな)ボソッ「...どうすればいいですか?」
「おい、今の聞こえたぞ。まぁいい我は寛大だからな。そうだな、我に強さを認めさせたら見逃してやらんこともないぞ」
いや、勝手に入っただけで許さないから全然寛大じゃないけど...という言葉はまた長引きそうだったので心にしまっておく。
そうか、強さか...尻尾を1本だけにしてやることもできるが、流石に可哀想だな。
「ヒッ!? なんか悪寒が...? いや我に限ってそんな...」
妖狐はなんか独り言を呟いている。よく見るとこの妖狐、可愛いかもな。ペットにしたら癒されそう...。今俺を止めてるこの尻尾もモフモフしてる...。
よし決めた! 母さん!俺この子飼う!
俺は妖狐の頭の前まで戻る。
「ん?そろそろ諦める決心がついたのか?」
「...レアスキル[魔物支配]」
俺がそう言うと俺の体から妖狐に向かって白い半透明な鎖が伸びていった。
「いきなり!? いやだが、弱っても無い我がお前程度のちびっこにテイムされる訳が...」
「スキル[剣術] [剣術技・十二支剣技 寅]」
技で強化された腕力をふるって拳を妖狐の眉間の辺りにコツンと当てる。いや、ガツン?
「きゅう...」
「よし」
[魔物支配]は成功したようだ。鎖に錠前が掛かったかと思うと、鎖は光を放ち消えた。
筋力は強化したまま妖狐を上に担ぎ、ソルトはまた走り出す。
*
「ぅんにゃ?」
「あ、起きた?」
妖狐を仲間(強制)にしてから1時間経って、担がれた妖狐はようやく起きた。
ここから残り1時間で森を抜け、さらに数分走ればもうタイゼック家につく。間に合うかどうかギリギリってところだろう。
「俺はソルト、ソルト=ヨーベクマだ。これからよろしく...えーと、名前は何がいい?」
「我はなぜこの我より小さいお前に担がれている? 我はまさか...お前にテイムされたのか!? そんな...油断したにも程がある...!」
俺の召喚獣にされたことが余程ショックなのか俺の質問に答えてくれない。
そこら辺は後々でいいや。取り敢えずこの姿をタイゼック家の人達に見られたら困る。
[魔物支配]スキルでテイムした魔物は、別の場所にいても呼び出した時だけ主人の所に召喚する事ができる。ただこれには契約をしないといけない。
「なぁ、このまま妖狐をテイムしたって知られたら面倒だから俺と召喚の契約をしてくれないか?」
「...もうなってしまったことは仕方ない! たかが人間の寿命分の時間を無駄にするだけだからな! だったら長めの休憩と思えば良いさ!!」
涙目の妖狐はそう言うとボンッて煙を発て、2メートルほどあった妖狐は俺の腕に収まるぐらいで尻尾が1本の普通の狐に変わった。
ぽす。狐は俺の腕に抱えられる体制になるとキュウンとないて誇らしそうに見上げてきた。
「見ろ、凄いだろ? これからはこの姿でお前の側ずっとお前の側にいよう」
「そうか。わかった。じゃあ早速飛ばしていくぞ」
もう必要の無い十二支剣技の寅は解いて、またまた走り出す。
走ってる最中、我の方が速いとか文句言ってきたけどそろそろ森わ抜けるから止めさせた。
*
ざっ――!
今度は十二支剣技を解いても転けずに踏みとどまった。
今俺とそのペットはタイゼック家の屋敷の前についた。
まだ日は上がってない。セーフ!と思いながら屋敷の正門を開けようとするが...
ガチャ、ガチャガチャ! ガッチャンガッチャン
「開いてない...」
「ぷぷぷ...! 閉め出されてやんの!」
このうざい狐は基本的に無視しよう。
それよりもメイド長、俺が帰ってくるとは思って無いのだろうか。
正門や壁の高さはだいたい3メートル。よし跳べるな。幸い周りに人は居ない。
[亜空間収納箱無限]から卵の入った木箱を取りだし抱える。狐にはその上に乗って貰って、短剣は口にくわえる。(技は一応剣が肌に触れていれば発動する事ができるのだ!)
「スキル[剣術] [剣術技・十二支剣技 卯]」
軽く壁の高さを越え、屋敷の敷地内に入った。この技、一体何処まで跳べるのだろうか。
そんなことを考えながら地面に足を付いたとき、ビーーーと警報が鳴り出した。
ああ、この屋敷は侵入者対策がバッチリなんだった...。
音が鳴り止み少しして屋敷からぞろぞろと沢山の使用人が出てきた。その中で一番体格のいい男性が剣を構えたまま近寄って来た。
木箱を地面に置き、狐を抱っこする。短剣はその狐の影に隠して[亜空間収納箱無限]仕舞う。
「誰だ!!!」
「ぼくですよ。ソルトです」
「......誰だ?」
悲しい...。
いつもこの作品を読んでくださりありがとうございます。
*お知らせ*
ストーリーに関係する修正を行いました。
神様に消されるものを変えました。また、それに関係する部分も修正しました。
「地球にいたときの記憶...」→「地球で習った知識...」
その他細かい修正も活動報告に載せておきます。
これからもこの作品をお楽しみください。




