第20話 殲滅!オークの群れvs村人達+α
それはは2人の子供を連れてオークの群れから逃げているときだった。
「あ、あの! あそこで誰か倒れてます!」
名の知らぬ少年の指す方向を見てみると確かに誰かが倒れている。
少し急ぎ気味で近づいてみると、倒れているのは俺の最愛の妻だとわかった。
「...! ゼリス!」
「はぁ...はぁ...あな...た...!もう...頭が...出てる!」
ゼリスは汗をびっしりかいて、とても辛そうだ。なんと、逃げている最中に赤ちゃんの出産が始まってしまったらしい。
「な!? 来週のはずだったじゃないか!」
「そんなこと...言ったって...あぁあ!!」
「よりによってこんな時にっ...くそ! デール様と坊主! そこで待っててくれ!」
子供2人を少し離れた所に誘導すると、俺は近くを通りかかった義母親を見つけてゼリスが出産を始めたことを伝え、手伝ってもらう。
出産は親子共々無事に終了し、元気な女の子が誕生した。
予定より大分早い出産だったからか時間もそんなにかからなかった。
娘が泣き止んでから義母親が聞いてきた。
「かわいい女の子だねぇ...この子の名前は何にするんだい?」
「この子は勿論レ...」ピキュン
なんだろう何故か全く思っていなかった名前が出てきた。
「......アイリ...この子はアイリだ」
「あれ? いいのかい前から決めてた...レイニー?じゃなくて」
「私もそれがいいって浮かんできました...」
「そうかい、2人がいいならいいんだよ。さぁ行くよ!男共がどこまでもつかわからないからね」
よし、急いでみんなで逃げよう。
「デール様!お待たせしました! 坊主もいく...ぞ......」
おかしい...。さっき誘導した所に2人ともいない。
こんなこと言ったらなんだが、最悪坊主はもうしょうがない。
だが、デール様だけは...デール様の身にもしものことがあったら俺は...殺される。いや、俺だけじゃなく目を放す原因になったとも言える妻のゼリスと娘のアイリも殺されてしまうかも知れない...!
ゼリスたちには理由を説明し、先に行っててもらう。
ゼリスは心配そうな顔をしていたが「大丈夫だ」と言って別れを惜しむ様にいつもより長いキスをした。
ゼリスが見えなくなるまで見送ったあと、俺はとりあえず近くの家から調べ始めた。
*
村を出てから少し走った所にオークの群れと村人が戦っているのが見えた。アルジニアもその中心となって戦っている。元騎士団っていうのは伊達じゃないのか他の村人よりも活躍している様だ。
だが、それでも戦力はオークの方が高いようで、村人たちはだんだん後退してきている。
「死んじまったやつはいるか!?」
「死人はまだ出てません! ですがこのままじゃいずれでてしまいます!」
「ぬぅ、そろそろ退き時か...?みんなはちゃんと逃げただろうか...。もう少しだ! もう少し耐えろ! そしたら急いで退くぞ!」
「「「はい!」」」
すごいな、この状況で死人がでてないのか。
急いでるけどアルジニアには恩があるし、少し手伝うかな。
俺は[亜空間収納箱無限]からフード付きの赤黒い外套を取り出して羽織り、フードを深く被る。(ちなみに木箱はもうこの中に入っている)
「スキル[剣術] [剣術技・十二支剣技 午、丑、寅、卯]」
[剣技]スキルの技を4つ重ねがけすると戦場に向かった。
ちなみに、十二支剣技の寅の効果は本人の力を、卯は跳躍力を大幅に引き上げる。スキルレベル11と8で使えるようになる技だ。
戦場に着くやいなやアルジニアに危機が訪れていた。
本人は気付いてないようだが少しずつ囲まれている。周りの村人たちも自分のことでいっぱいいっぱいなのか、村長を信じきっているのか全くアルジニアの方を見ていない。
しょうがない...と俺はアルジニアに一番近いオークを倒しに地面を蹴った。
「おじいさま! 逃げて! 殺し屋よ!」
「「!?」」
声が聞こえた瞬間アルジニアは攻撃対象をオークから俺に切り替えてきた。
ガキンッ!
アルジニアの両手剣を俺は兄さんからもらった短剣で受け止める。...この短剣にもそろそろ名前を付けてやらないとな。
「随分小さな殺し屋だな」
「だから...殺し屋じゃないです...って!!」
少しずつ力の強くなっていった両手剣を弾き返す。
「! ...その声はソルトか!?」
「誰にも言わないでくださいね」
「そうだな、儂も何も聞かないでおこう。その幼さで殺し屋とは...」
「だーかーらー! ハァ...今はそれよりオークに集中しないと死にますよ?」
アルジニアの真後ろで棍棒を振り上げているオークの頭まで跳び、横一線。オークの首を一瞬ではねる。オークは棍棒を持ち上げた姿のまま後ろに倒れた。
「む? ソルトは儂を殺すつもりではないのか? なのに何故助ける」
「.........」
このじいさん...。もうめんどいからいいや。
俺は周りのオークを一匹、また一匹と倒していく。
その時だった。
「きゃああぁぁ!!!」
叫び声のした方を見ると、やはりデールが3匹のオークに迫られていた。
デールは恐怖で力が抜けたのかふにゃふにゃと崩れ落ち、地面に黄色い水溜まりを作る。
まったくこの子は...何でついて来たんだか...。
「デール!!!!」
アルジニアは急いで孫の所に向かおうとするが、オークが邪魔でなかなか進めていない。
そんな中デールはオークに腕を捕まれてぶら下げられている。見たところ恐怖による気絶と、腕を掴まれている痛さによる覚醒を繰り返しているようで、覚醒するたびにビクッ!となっている。
「デールゥゥぅぅ!!!!!!!!」
アルジニアはもう泣きながらオークを倒して少しずつ進んでいる。それでもこのペースじゃ間に合わないだろう。
しょうがないな...助けてやるか。俺が助けなかったから死んだってのも目覚め悪いしな。
............というか、こんなかわいい子を亡くすなんて絶対にあり得ない!
俺はそこから瞬時に加速し、デールの下へ駆けつけ、デールを持っているオークの腕を切り離した。
「ブッフォォォ!!!」
あれ? トゥアベアとは違って喋った声に聞こえない...。もしかして、オークは意思疏通をしないのかな?今度ちゃんと調べてみよう。
とりあえず今は落ちて来たデールをお姫様抱っこで受け止める。その際ちゃんと膝を少し曲げ、衝撃を吸収してあげる。俺ってばやさし。
「ソルト...様」
デールは俺の顔を見るなり意識を手放した。
よく見るとオークに握られた方の腕が折れている。見ているこっちが痛そうなので治してあげる。
「光魔法 [中級回復]」
デールの体に光が集まる。それがおさまるとデールの体は何処にも傷がなくなった。汚れは...まぁ、我慢してもらおう。
デールを近くの岩影に降ろすと俺は振り返って剣を構え直す。3匹のオークはもう俺の目の前まで近づいていた。
俺は技で底上げした力に任せて1匹の膝を切りつけると、反動そのままに跳躍し、バランスを崩したオークの首を切り裂く。
さらに、倒れていくオークを踏み台にしもう一度ジャンプすると、その勢いを利用してすれ違う2匹のオークの頭を真っ二つにし、絶命させる。
「...フゥ」
近くにオークもいないので一旦落ち着き辺りを見回す。
未だ、こちら側の死者はおらず、オークの数は俺とがむしゃらに頑張ったアルジニアのお陰もあって残り20匹程度にまで減っていた。
「さてもう一踏ん張りだ」
俺はポツリと独り言をこぼしてからまたオークの群れに向かって行った。
そこからはたいして時間もかからずオークの群れを殲滅させることができた。




