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World_Raid  作者: Hart-mann
第一章「魔王の目覚め」
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第一話「魔眷属『マドラ・ゼネス』」

生まれながらにして、人類を滅ぼすべく活動を開始したナルガ・マドラ。彼の前に、彼と類似した個性的で異質な見た目を持つ、眷属を名乗る9つの生命体が現れる……。


 突如として世界に飛来した謎の存在、ナルガ・マドラ。


 それを人間と言うにはあまりにも禍々しく、魔物と言うにしても明らかに異質であった。

人間から見たら岩と捉えられた『卵』から孵ったナルガ・マドラは、生まれながらにして既に三人殺している。

 人類を滅ぼすと宣告した恐ろしき生物は今………


道を、歩いていた。


 それは、無知ゆえではなかった。より効率的に、より確実に人類を滅ぼす手段を獲得するため、活動していたのだ。


 道中の人間を殺しつつ、最適解を示して確実に滅亡という

裁きを下す。機械のように冷徹で、合理的な判断だった。


キィィィィィイン!!!


 突如空に鳴り響く甲高い音とともに、9つの生物が、彼の前に飛来した。


未知なるものとの遭遇。戦闘態勢を取る理由には十分だった。


「お待ちを、主殿。」


どうしたことだ。思惑とは裏腹に、その9つの生命体は、彼の前に跪いたのだ。


「我々はあなた様にお仕えする存在。あなた様の眷属でございます。ナルガ・マドラ様。」


何を、言っている。


突如現れ、「私はあなたの眷属」だと。


普通なら、耳を疑う話だ。しかし、続く話を聞いて、

彼は目の色を変えた。


「我々は『マドラ・ゼネス』。我らが創造主の命により、

貴方様の目的遂行の補助をせよと仰せつかっております。

 私のことは、『傲慢(キギェズ)』とお呼びください。」


……ナルガ・マドラは、その存在を知らないはずだが、なぜか知っていた。それらは敵ではなく、味方なのだと。


 記憶をたどる。生まれて間もないゆえに、彼が生きた記憶には、眷属と名乗る者たちの存在を示す領域はない。

 ならば、それを指す領域はただ一つ。


()()()()()()()()


 生まれる前日のこと。主に言われたこと。なぜ覚えていたかは分からない。

 主は悲しげな声でこう告げていた。

「最後のお願いだ、ナルガ・マドラよ。」


「我らが故郷に移り住んだ『人間』は、我らが教義における9つの大罪を犯した限りでなく、我が同胞たちにさえ牙を剥き、虐殺し、悪逆の限りを尽くした。


 この先の人類の未来のために、世界の未来のためにも、

君に授ける9人の仲間と共に、我らのかわりに人間へ|

     正しき裁きを与えてくれ……!」


創造主が定めた、この世界の罪は主に9つ。


 1つ、傲慢に振る舞い、感謝を忘れること。


 2つ、慈愛の心を絶やすこと。 


 3つ、他者を騙し、己に嘘をつき続けること。 


 4つ、強欲のままに全てを奪うこと。 


 5つ、己の力を過信すること。


 6つ、仲間との絆を断つこと。


 7つ、色欲に溺れ信念を見失うこと。


 8つ、戒めず、怠惰に生きること。


 9つ、過去の己を顧みぬこと。


 罪認めず省みざるもの、天より罪の代弁者降り立ち、

裁きの槍を突き立てん。


 9つの裁き、それすなわち、『神』の怒りに触れること。


 神の怒りに逃げ場なし。


 ただ裁きを享受すべし。


 抗いは、世界を破滅を呼ぶものゆえに。

 

………これが、造物主の大罪教義。


 確かに記憶のなかにある。ナルガ・マドラは、彼らの存在を理解し、問いかけた。


「お前たちが我の眷属と言うならば、己の持つ

 大罪の名を、ここに示せ。」


ゼネスたちは、口々にそれを示した。


傲慢(キギェズ)です。」


「……無慈(ペルオール)。」


欺瞞(ダガマガ)です。」


強欲(バザンドーム)よ。」


「私は自惚(ジルァコイ)。」


裏切(ロンドレヴィ)。」


色欲(ハーネー)よ。」


怠惰(スァラク)だな。」


無省(ルートレット)だ。」


 皆、ナルガ・マドラの知る大罪の名に合致している。

間違いない。その者たちは味方だ。


「如何でしょうか?繰り返しますが、我らは皆貴方様に付き従う存在。貴方様に仕えることが我らの存在意義であります。」


ナルガ・マドラという主を守るための9つの使徒(ゼネス)。その忠誠を、嘘ではないと、彼は捉え始めていた。


「ギギィ゙〜〜〜ッ!!」


「待てぇッ!!このクソゴブルめがッ!!」


 突如、声が聞こえた。声のした方向をみると、そこには人間の男が二人。

 

 追われているのは、体毛のない緑色の肌にとがった牙、そして四足歩行が特徴の魔物。

 ゴブルという種族の魔物だった。人間はその3匹の群れを追いかけ回している。

 

 この街は元々ゴブルが先に住み着いていたところに人間が入り込み、制圧して奪い取った土地であった。

 わずかな生き残りのゴブルは群れをなし、人間から食料を盗むことでその日を生きながらえる生活を送っていたがゆえに、人間に害ある魔物として、狙われる身となっていた。


 人間からしたら、ゴブルは下等で害ある生き物。報奨金を払ってでも、駆除する必要のあるものだった。


 「愚かな…共存の道もあり得たかもしれんというのに。やはり人間は……」


殺すべき敵が、目の前にいる。ならば、やることはただ一つだった。


「ギ……ギギ………」


「いかがしましたか?マドラ様。よろしければ、

 私があの者たちの始末のほうを務めましょうか?」


キギェズが始末を申し出た。


「…お前の出るまでもないことだ。」


「かしこまりました。」


 瞬間、ナルガ・マドラは、己の体から黒き魔力を展開。かつてアルベルト氏を貫き殺したあの槍を2つ形成し、二人の男を突き殺した。


 転がった男の死体を前に、ゴブルたちは恐れをなしていた。すぐにでも逃げ出したかった。次は自分が殺される番だと思ったからだ。


「あら、3匹生き残りましたわ。マドラ様。

 あのゴブルたちも始末しておきます?」


「ギィ゙ィ゙ッ!?」 


「やめておけ強欲(バザンドーム)。目的はあくまでも人類を滅ぼすこと。それ以外の魔物など、傷つけるだけ時間の無駄だ。」


そう冷淡に告げる。その目は冷徹だったが、それゆえに、ゴブルたちは救われた。


「ギッ………二…ニゲ……」


「逃ゲろ………ッ!!」


「危険だ…!!!」


 勢いよく走り出して逃げ出した。だが、もしそこに人間がいたならば、驚愕していたことだろう。

 

 それまでのゴブルに、『言葉を話す』ことなどできはしなかったからだ。


 逃げ去るゴブルを放っておき、ナルガ・マドラは先へ進む。道中に人間の街があれば、自身の力で一つ、また一つと滅ぼしていくだけだった。


 だが、眷属たちは勿論、ナルガ・マドラ自身でさえ、彼のもつ『聖魔法』が、どのような力なのかを理解していなかった。


 逃げ出したゴブルたちに、突如異変が走る。


 四足で走るのに、違和感を感じ始めてきた。


 生まれてから今日までずっとしてきた、歩行という至極単純な行為。

 

 ただそれだけなのに、生まれて初めて妙だと思った。


追ってくる者の気配はない。


恐る恐る、重心を後ろに反らした。


後ろ足に、力がはいる。


前足が、大地から離れた。


おかしい。普段ならすでにひっくり返っているはず。


……転ばない。


……立てる。


……立って、歩ける。


 ゴブルたちは、自身に起きた『進化』を理解した。


その瞬間より、もうゴブルは魔物ではなくなった。


()()()()()()()


後世に語り継がれる存在、『魔族』の一人となったのだ。


 ゴブル改め『ゴブリン』たちは、その身に与えられたさらなる『知恵』と『生命』を実感した。

 

どうして、こうなったんだろう。


ゴブリンたちは考えた。


考え続けて、一つの結論にたどり着いた。

 

 あれだ。自分たちより数倍以上大きいあの魔物、いや、魔族と会ったときに。人間から救われた、あのときに。


 何かを与えられたのだ。


 きっと、自分たちを進化させた『何か』を与えてくれたのだ、と。


 ゴブリンは、初めて『会話』をした。


 言語に慣れていない彼らにとってそれはどこかぎこちないものだったが、そこからの進歩は著しいものとなった。


「ギギ…あの大キな魔物二、命を、救ワレた!!」


「シかし、ドうシテ、俺達ヲ…?」


「分ラナイ!だが、恩人ダ!!」


「受けタ恩ヲ…返したくナイカ?」


「返スべきダと、オレは思う。」


「俺も賛成、だが…ドウやって彼らに近ヅく…?」


「近寄り難イ、恐ろシい殺気だぞ…!」


脳裏に、ある魔物の姿がよぎる。

 『悪魔』と呼ばれる種族だ。あの、コウモリのような翼を生やし、鋭利な尻尾をもつ、あの魔物。知性を有し、人間と『契約』を試みる生物。

 姿形や行動原理はまったく違えども、その心の奥底にある『負の感情』を、悪魔たちとは比べものにならない底知れなさを感じとっていた。


「まサに、悪魔……!!」

 

「いや、マるでそレスら束ネる悪魔の『王』…!」


「「「『魔王』!!」」


……これが、初めてナルガ・マドラが魔王と呼ばれた瞬間であった。




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