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浴室から現れたのはちいろだった。
裸体だったために咄嗟に視線を外したがそれが間違いだと気付いたのはすぐだった。
「うぁっ!?」
都和が攻撃を受けたようだった。
確認すると膝をつき倒れかけていた。
まるでバケツでもかけられたかのように都和が立っている部分は濡れている。
「……やばい」
黒伽はちいろにやられていたのか。
だとすれば都和も触ってあげれば元に戻るであろう。
「うぉぉおっ!?」
あまり見たくはなかったが攻撃を避けるためにちいろの方を向くと僕に向かってボールが飛んできていた。
ボールの大きさはソフトボールくらい大きく、速さはあまりないが腕には黒伽がいるので避けるのにはかなり苦労する。
ボールはスーパーボールのようにかなり跳ねるが二回跳ねたあとは床に転がった。
「は、話を!」
するとこちらを見て、ぴしゃりと言う。
「綺麗にしてあげる」
ちいろの性格と天想代力の人格がかなりマッチしていた。
「そ、そんな無理やり……」
「一日分の汚れは許さない」
話は通じそうで通じない。
武力行使ではないため痛みはないであろう。
だが僕はちいろに身体を洗われたものとして思う。
なんとしてもこれは逃げなければと。
その後、話も聞かずボールを三個投げられた。
ボールは天想代力で作られているため間を置かず空中から飛んでくる。
勿論速くはない。
「ゃあっ!?」
しかし、跳ねたあとのボールにはさすがの僕でも反応出来ない。というか跳ねかたがランダムなのが悪い。
僕は倒れつつ、なんとかゆっくりと黒伽を床に置く。
黒伽は浅い呼吸をしつつ、虚ろな目でこちらを見ていた。
「……少しだけ待っててね」
僕は濡れたところを手で触り動くようにした。
そして、向かい合う。
きっと彼女に悪気はないのだろう。
それでも。
嫌なものは嫌だ。
「ふぅーっ……」
天想代力開始。
僕はちいろとの距離を詰める。
あまりよろしくはないだろうが、僕は天想代力を削るために掌打を放った。




