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 深呼吸し、まずは一言。

「名前を教えてくれる?」

「あら……くすくす。白羽しらはよ」

 下の名前だけだった。

 上の名前を聞き返すことは止めておこう。どうせ小夜が知っている。

「では白羽。貴方は敵ですか?」

「敵になれない敵よ。今はね」

 含みのある言い方だ。

 警戒は解かない。

 これでも。

「それでなに……僕の敵になるつもり?」

「なるかもね。くすくす……あと二分ちょっとで再起不能にする? さすがの私も今は対処できないわよ」

「……されないことをわかっているくせに」

「賢い子は好きよ」

 喰えない人物だ。

 だが、使える人物ではあるのだろう。

 この件にはノータッチでもわかることがあるのだろう。ならば傍観者という立場を精々利用させてもらおう。

「白羽は、この今の僕の状況に関して何かわかっていますか?」

「ええ、十中は。勿論、黒幕も」

「誰ですか? まさか教えて貰うのに条件があるなんて言わないですよね?」

「伽羅ちゃんです」

 まさかのノータイムで黒幕を教えてもらえるとは思っていなかった。

 もったいぶらない性格らしい。

 というか僕が混乱している。

 伽羅が?

 ありえない。

 身内も身内だ。

 僕から離れて、僕の元に戻ってこようとしているのに。

 裏千華やキミは誰の味方をしている。

 それに反転の概念は?

「…………」

 質問を考えていると、白羽はつまらなさそうにため息を吐いた。

「ごめんなさい。周ちゃん。貴方とのお喋りはどうやらここまでのようです。次に会うときは精々この劇を終わらせておきなさい」

 語尾は冷たく吐き捨てていた。

 まだ約束の時間ではないと思っていたが、次の瞬間体育準備室の扉がゆっくりと開いた。

 その開く前から行動している白羽。明らかに異常だ。

 先読みしているのか。

 だが歩みは遅い。

 小走りでなら追いつける。

 話を聞かなければ。

「周さん!」

 だが扉を越えた瞬間に小夜に身体で止められた。

「ちょっと!」

「……」

 ふるふると首を横に振られる。

 意味がわからない。

「今の周さんじゃ駄目……」

 到底納得できないが、小夜がいつにも増して力強く止めるため何も言えなかった。

 結局、白羽が体育館がいるまで動くことを禁止され、その後へたりと小夜は座り込んだ。

 息も少し乱れている。

「ストレス要因なの?」

「ば、白羽は気に入ったものを滅茶苦茶にしちゃうんですよ!? 十年前、私も都和もかなり傷つき、玖乃は刀を三本もへし折られているいるんですよ!!」

 剣幕がひどい。

 僕は何も言わず、小夜を撫でることにした。

「ああ! ん、もう……」

「落ち着いた? 特に何もされてないよ」

「本当ですか?」

 小夜は落ち着くと僕のボディーチェックをし始めた。

「なにもされてません? 殴られてませんよね? 折れてないですよね」

 そう言いつつ下半身に手を伸ばす小夜。

「ちょっ……」

 油断ならない。

 下を履いていないことによる敏感さがなければ触られていたかもしれない。

「ちっ」

 舌打ち下手勢め。

「とにかく、白羽に会ったら駄目です。玖乃よりも駄目です。駄目なものは駄目です!」

 子どもみたいだった。

 外見も。

 なんて今のことを言ったら怒られそうだ。

「わかったわかった。とりあえず、今日のところは僕は帰るよ。どうせ五限で終わりだし」

「あ、まっって!」

「うぁっ!?」

 僕は体育館を少し歩いただけで宙ずりにされた。

 足に引っ掛かった糸が僕をそのままゆっくりと浮かす。

 白羽と戦闘があったときように幾つか仕込んであった罠らしい。

 それはともかくこの体勢はやばい。

 必死で身体を起こしスカートでガードする僕。

「周さん、なんで下を履いてないんです?」

「いや、あの、その……」

 僕が悪いのか?

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