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「にゃ……あ?」

 かなり下手な鳴き真似だった。

 これなら僕や楔が演劇でしていたときのが格段に上手いのではないだろうか。

「漫才ならずっこけるレベルだよ全く……」

 それにしても猫を見ると楔の特訓を思い出す。

 猫のことを学ぶために野良猫を捕まえさせられたことがある。

 その際に猫の鳴き声を学んだと言っても過言ではない。

 さてと。

「抵抗したら痛いことするから」

「うぇっ!?」

 僕は脅しながら猫を捕まえた。

 抵抗がなかったおかげか幾分か楽に捕まえられた。

「いや、別に危害を加えようとは思っていないからね」

「……」

 猫の表情は読み取りにくいがばつの悪い顔をしているように見える。

 僕は午後の授業を諦めようかと思っていると、準備倉庫の扉がゆっくりと開いた。

 重たそうに。

 確かに重いだろう。

 僕や楔といった鍛えていないだろう女のに子には重いだろう。

「んぎぎぎ……」

 だからといってこんなに時間がかかるのだろうか。

 頭の中で五秒。

 ようやく猫が通れるくらいの隙間が出来た。

 猫を逃がさないように腕に細心の注意をしていた。

 だが、隙間から見えた顔に驚いたせいでするりと逃げられた。

「……っあ!!」

「はあはあ、お久しぶりです」

 顔を覚えていない。名前も出ない。

 だが、自分の中では警鐘が鳴りやまない。

 彼女の綺麗な顔が歪んで見えた。

「ありがとう。ところで開けて貰える? いや、首を振られても裸になりたくないくらいでそんな我儘は通用しません。それとも貴方の着る服を燃やしてあげましょうか? ……結構」

 先程と違う速度で開く扉。

 咄嗟の判断で僕は後ろに下がった。

 その半歩のせいで彼女の侵入を許してしまう。

「ふう、ようやく二人っきりですねぇ?」

 扉は閉まった。

 よくよく思うとあの猫は囮だったのかもしれない。

 僕は再現する。

「くっ!」

 ナイフを空中に数十本。

 手元に五本。

 構えを取ったところで。

「怪我をするわ」

 彼女が挑発してきた。

「誰が……?」

 強がりだ。

 僕は逃げる算段をする。

 攻撃をしかけてすぐに瞬間移動しようとしたところで。

「私が怪我をしてしまいます」

 ずっこけてしまった。

「私が怖いのはわかりますが、今日は用事だけ。証拠は見せられませんが、これでも概念は持ってきていないんです。そもそも、あれ以来概念は持っていませんが」

 くすくす笑う。

 美人だからこそ怖い。

 外見は人形のような綺麗さというよりは機械的な綺麗さを感じる。機械のように寸分違わぬ芸術作だ。

 まるでここの学園にあつらえたかのような長くふわりとした巻いた金髪に優しい目元。

 僕の感覚が鈍っていたらそれこそ優しく可愛い女学生だと勘違いさせる威力を持っている外見をしている。

「まあ、落ち着きなさい。敵意はないのだから。本当なら喫茶店に行って優雅に飲みながら話をしたかったわ。それもあの玖乃のせいなんだけれども」

「なぜ玖乃が……?」

「あら、ふうん。本当に伽羅ちゃんってばぜーんぶ消しちゃったんだ」

 くすくす笑う。

 混乱していると彼女は言う。

「この学園は貴方にとって程良い檻なんですね。なるほどなるほど。あの子もそういう芝居をしているのね。少しピースが足りないけれどわかったわ」

「……何がわかっているの?」

「監視されていたのはわかる? 伽羅ちゃんに玖乃に私。まあ各々理由は違うのだけれども」

「……なぜ?」

「くすくす、あまり答える必要は感じないわ」

 謎を投げるられただけだった。

「本題に入りましょう。わざわざ人脈とタイミングと天想代力も使ってもらって二人にしてもらっているのだから」

 そういって、僕は軽く押されて倒れた。

 彼女のスキルだろう。僕が力を入れられていないときを見計らって押してきたのだ。

 無様に尻もちをついてしまった僕に彼女が覆いかぶさる。

「十年前の約束を果たしましょう」

 そういって僕の唇に唇を合わしてきた。

 容易く堕ちる僕。位置も悪く、抵抗しようもない。

 まるで劇薬。

 毒のように体中に回り、僕の力を奪っていった。

「そんなに気持ちよさそうにされると燃えてきてしまうわ」

 くすくす笑う彼女の指が僕の素肌を撫でる。

「……んんんんっ!?」

 スパッツが脱がされてしまったところで僕はようやく抵抗出来た。

「最後までしても良いのに。貴方が男でも女でも」

 挑発的な笑顔だった。

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