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「練君、どういうこと?なんで、レスティアと一緒にいるの?」
「いや、今日はシュハイツが休みにしてくれて、暇だったから、レスティアと来たんだ。」
「なんで、私じゃないの?」
「凛はいなかったじゃないか。」
「そうだけど…」
「凛さんはその時にいなかったのですから、仕方がないです。それに凛さんは一人で遊びに行ってしまったので、練様と一緒にいる資格がありません。練様は毎日、仕事をして休みもないのにもかかわらず、あなたは一人で遊びに行ってしまっています。それに比べて、私は練様が仕事をしてる時は必ずしてるので、今日は私が練様と遊びます。」
「うっ…」
「私たちは一旦、家に戻りましょう。」
「あ、ああ…」
レスティアは凛のことを置いていくらしい。これはおそらくは正妻を狙っているからこその行動だろう。側室から正妻に繰り上がるのは果てし無く難しいため、いろいろと頑張らなけばならない。と、以前にレスティアは言っていた。
「レスティア、やりすぎじゃないのか?」
「大丈夫です。凛さんとの関係を悪くしようとは思っていませんから。」
「それにしては、キツく言い過ぎだろ。」
「いえ、これは半分は八つ当たりみたいなものですから…」
「八つ当たり?」
「はい。私は自分のことしか、考えていませんでした。私は隊長になり、一つの部隊をまとめ、それから、練様の副官をしています。ですが、これは全部、仕事のことです。私は仕事のことで頭がいっぱいでした。私は練様の妻になったのですから、練様のことを一番に考えなければ、なりません。それなのに、妻ということを疎かにしてしまいました。そのことに対して、自分に腹が立っているのです。そのせいで、練様は体のことを全く、考えずに仕事をしていたのですから。」
「今までのレスティアもがんばっていたと思うけどな。」
「それは違いますよ。私は練様に頼ってばかりでした。私は教会という牢獄から救ってもらい、それなのに、私の中ではあなたに何も恩返しができていません。」
「そうか?」
「はい。」
「俺はレスティアが側にいてくれるだけで、嬉しいけどな。」
「うっ…あ、あなたはなぜ、そういうことを普通に言えるのですか?恥ずかしいじゃないですか…だから、フラグ製造機なんていう称号をもらうんですよ…」
「そんな称号、いつもらったんだ?知らないぞ。そんなこと…」
「知りません。」
レスティアは少し、歩く速度を上げた。後ろから見ると、耳まで真っ赤にしているのがわかった。おそらくは照れ隠しだろう。
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「練君、少しいいかな?」
「ああ…どうした?」
部屋でくつろいでいると、凛が訪ねて来た。
「私、練君のことを全然考えてなかった。ごめんなさい!」
「大丈夫だ。気にするな。」
「練君は大丈夫かもしれないけど、私が大丈夫じゃないの。私は練君が仕事をしてる時に一人で遊びに行ったりもしてたし、すぐに練君に甘えてばかりだった…私は妻として、失格だね。」
「凛がそう思うなら、そうなんじゃないのか?」
「ううっ…」
「だが、結婚生活なんて、失敗の連続だろ。凛が妻として、ダメだったように、俺も夫として至らないところがあっただろうし。」
「そんなことない!」
「そ、そうか…要するに、これから二人ともステップアップをして行けば、問題がない。」
「そうかな…」
「ああ…結婚なんて、初めてだろうし、仕方がないだろ。人生初なんなだから、失敗して当然だ。逆に失敗がない方が怖いくらいだ。」
「うん。」
凛の顔に少しづつだが、笑顔が戻ってきた。相当、落ち込んでいたみたいだ。
「これからもよろしく。」
「うん…こちらこそ。」
二人で見つめあってキスをしようとしたら、近くで見ていたレスティアが割り込んで来た。初めは何が何だか、わからなかった。目の前に金色の髪が見えたことくらいしか、わからなかった。
「な、何をしてるの⁉︎今、良いところだったのに!」
「良いところだからこそ、邪魔をするのですよ。」
「この女狐…」
「ふふふ…ごめんなさい。私の目の前でイチャイチャさせても嫌ですからね。早めに乱入させてもらいました。」
そう言いながら、膝の上に座り、首に腕を回して来た。
「ちょっと、そこをどきなさい。」
「嫌です。ここは私の場所です。」
「嫌とか、そういう問題じゃないの。どきなさい。」
「嫌です。それに練様が嫌がってないのですから、良いじゃないですか。前にも言いましたよね。」
「うっ…」
「それに、練様と一緒にいた時間が私よりも長いのに気がつかなかった罰ですね。」
「くっ…」
凛は事実だから言い返せないのだろう。
「これからは副官としても、妻としても、練様の体調は私がしっかりと管理させてもらいますので、安心してください。」
「どこが安心できるのよ!」
「練君の体調です。」
「そっちじゃないわよ!なら、私もこうする!」
すると、凛は隣に座って、腕に絡めて来た。
「凛さん、それでは練様が両手を使えなくなってしまいますので、そこをどいてあげてください。」
今の状況はレスティアの腰に手を回していて、もう片方の腕は凛に抱きつかれている。他の男が見たら、羨ましくて殺意を抱くだろう。両手に花だからな。
「レスティアが言ったことだけど、練君が嫌がってないんだから、いいもん。」
「うっ…」
「お前ら、俺のことをもう少し考えてくれ。」
「練様は嫌ですか?」
レスティアが下から目を潤ませて見上げて来た。さらに手を前に組んで、乙女の祈りになっている。
「うっ…嫌じゃないぞ。」
「そうですか?ありがとうございます。」
そう言うと、レスティアは更にスキンシップが激しくなった。レスティアは嬉々して、胸に頭を擦り付けてくる。
「レスティア、ズルイ…」
凛が羨ましそうに呟いた。
「早い者勝ちですから。」
レスティアは少しだけ、優越感に浸っている。早い早くないとか、以前に膝の上はレスティアの特等席だから、関係がない。前に凛が座っているのを見られたら、力づくで引き剥がしていた。
「そこを代わってよ。」
「嫌です。」
「なんでよ。」
「凛さんは私よりも重いですから、練様が辛くなります。それと私はこの場所が好きなんです。」
「初めの方は言う必要なくない⁉︎」
「ついでです。」
「ついでって…」
「それに私の方が全体的に柔らかいですから。凛さんはその残念な胸を押し付けていてください。」
「それは関係がないでしょ⁉︎それにそんなに小さくないし…」
最後の方はゴニョゴニョと話していたが、距離が近いので、完全に聞こえている。
「レスティア、そろそろふざけるのはやめろ。」
「はい。わかりました。」
レスティアは凛のことをからかっていただけだ。本当にそれだけかは本人だけが知ってることだが…
「せっかく休みなんだから、早く寝るぞ。」
「はい。」「うん。」
そのあとすぐに、三人で仲良く寝た。




