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NTR人間、自身の末路を知る  作者: オーメル


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冒険者46 真偽は如何に

『会談は現在そちらに移動しているダンジョンの内の一つ。 主に草原と森が広がるエリアです。 この話を信じてくださるなら、メッセージを受け取った一週間後に我々は向かいましょう。 勿論、来るも来ないも貴方の自由です。 どうか賢明な判断をお願い致します、神の眼よ』


 メッセージはそこで終わった。


 数あるシステム画面の中でも最も文字数が多く、そして最も理解するのに時間が掛かる内容に、どう咀嚼すれば良いのか分からない。


 黄金国家? エル=ラクム? 異世界の姫? ――――なんだそれは、まったく未来で見た覚えがないぞ。


 俺が見ていた遥か先の光景に、こんな連中の登場は予定されていない。ダンジョンはあくまでもダンジョンであり、そこに異世界の人物と呼ばれる概念はそもそもありはしなかった。


 政府が隠した?


 ギルドと協力してこの事態を表に出さないようにしていたとすれば、一応の筋は通る。


 ダンジョンがどこから発生していたのかは、未来でも議題の一つではあった。様々な学者が科学的にダンジョンの発生地点を調査し、その果てに複数の建物を発見したのは今から十年以上も後だ。


 未知の言語も発見され、文明の痕跡もそこかしこにあった。あそこが異世界から出現していると考えるのは、説としては非常に強い。


 だとしても、決定打となる物は見つかっていなかった。説は説止まりであり、そも結局は異世界人が此方に接触をしなかったので大した問題にはならなかったのだ。


 その接触が実は秘密裏に行われていたとしたら、このメッセージには重要な価値がある。


 だが、これをそのまま信じるのは俺には難しかった。自身は今現実にはおらず、言ってしまえば夢のような空間に居る。


 自意識は確りしているものの、それでもダンジョンや現実とは違う。何かしらの認識の歪みがこのメッセージを生み出していると思うのは当然だろう。


 単純な解決法としては、先ず起きてメッセージを再度確認すること。


 しかし、そもそも俺の知るシステム画面にはメッセージの欄が無い。表示をしっぱなしにして起きた時、この文章が目の前に現れていなければ確認するのも難しくなる。


「一先ず覚えるしかないか」


 重要箇所を頭に叩き込み、起き抜け直後に携帯のメモで書く。


 五分くらい睨めっこを続け、目を閉じて必要な単語を何度も呟き、そして忘れないために意識を一気に浮上させた。


 瞼が開く。微睡みの無い完全覚醒はこの未来を見ていて良いことの一つだ。


 時間は朝の六時。時間の流れはあの能力を使っていると常に分からなくなるが、いつもこの時間に起きる。


 飛び起きて枕元の携帯を起動させ、メモに覚えたばかりの文面を急いで入力した。


 箇条書きにはなってしまったものの、これでもう忘れることはない。それから青い画面を出現させてメッセージがそのままかを確認してみたが、やはり画面は最初のステータスが現れただけ。


 メッセージの欄は存在せず、どこまでいっても個人のスペックを確認する以上の機能は搭載されていないみたいだった。


 なら、あれは夢だったのか? 自分の無意識は、あんなものを出したくなるくらいに諸悪の根源を求めていたのか?


 己への問い掛けに答えは出ない。


 夢か現実かも定かではない空間で起きた出来事だけに、こればかりは見過ごすことは出来ないだろう。


 だが、あの空間は俺だけが知るもの。教えるのは俺の予言の流れを説明しなければならなくなる。


 だとすると、曖昧な部分だけは除いて説明するのが吉か。


 採用通知書が届くまで三週間も掛かる。その間は新人がダンジョンに入る機会は無い。


 老人としても問題を解決にするには余計な邪魔は居ない方が良いだろう。自衛隊にも恩がある現状、間引きに俺を紛れ込ませるのも不可能ではないはずだ。


 一難去ってまた一難。一つの目的が終わっても次が絶対に待ち受けているのは俺にとって苦行でしかない。


 というか、あのメッセージの最後にあった神の眼ってなんだ。俺にそんな特別な技能なんて――――文字化けしている部分か?


「一体どうなっているんだ。 単なるやり直しじゃないのか?」


 ステータス画面を見る。技能欄にあるまったく読めない単語は、現在まで一回も発動していない。


 付与師としての通常能力は動いてくれているが、特殊技能は変化の兆しが微塵も無かった。


 そして現在も動いていないとなると、予言の部分は関係が無いように思える。されど、じゃあ予言がどうして俺に使えるのかが分からない。


 分からない尽くしだ。降ってわいたような情報に頭痛を覚えるが、何もしないは俺の選択に無い。


 頭を整理するために服を着替え、走りに出る。


 スポーツウェアは現在も健在だ。冒険者になってからは走る距離も伸びに伸び、二駅分くらいを往復しても息は上がらない。


 物足りない部分はあるが、過度に長距離を進んでは時間が掛かり過ぎる。朝食に遅れてしまわないように走り、足りない分は筋トレの量を増やして対処していた。


 家族には普段通りに振舞い、昼の時間に公園のベンチに座る。


 老人の番号を確認して着信を送り、相手はワンコールで電話に出た。


『一体どうしたのかね。 こちらは今大忙しなのだが』


「悪いな。 ……残念な話がある。 聞くか?」


『――少し待て。 今やっている書類を直ぐに終わらせる』


 突然の電話だったが、老人は軽く文句を口にするだけ。


 俺が電話をすること自体が珍しいのに、さらに真剣な声音で良くない話があると語ったのだ。老人としては過去のダンジョンの件がある以上、無視をするのは最悪な道に繋がると考えたに違いない。


 その後、暫くの間は老人が書類に何かを書き込む音が電話先から聞こえていた。終わった瞬間に息を吐く音が聞こえ、椅子の背もたれに体重を預けた軋む音が鳴っている。


 終われば直ぐに始めるかと思いきや、少しの間老人は何も言いはしなかった。間違いなく俺の話を受け止める心の準備をしているのだろう。


『よし、話してくれ。 君の残念な話とやらを』


「ああ――」


 俺の予言の過程を伏せ、老人にはメッセージの内容を伝える。


 言葉の数々が現実味を喪失し、全てが全て中学生が妄想したような話ばかり。老人は最後まで口を挟まずに話を聞いてくれていたが、その間でどのような感情を持ったかは簡単に想像出来る。


 語っていて、自分もなんだか馬鹿げた話だと思った。ダンジョンも大分荒唐無稽な話ではあるも、この話と比べればまだ現実的だ。


 なんだ異世界の姫って。なんだ会談をしたいって。なんだ神の眼って。最近の中二病患者でももっと良い話を作ってくれるぞ。


「以上が、先日の夜に見た内容だ。 どう判断するかはそちらに任せたい」


『……すまないが、私は出版社の者ではないぞ?』


「俺も小説家じゃないんだが」


『もしかして我々はファンタジー作品の中にいつの間にか入ってしまったのか?』


「安心しろ、現実だ」


 老人の現実逃避が、逆に俺に安心を与えた。


 そうだよなぁと二人で何度も確認し合い、徐に自身の頬をつねる。夢か現実かを確かめる簡単な方法だが、残念なことに此処は現実だった。


 どうするか。その場で俺たちの間に流れたのは、そんな微妙な雰囲気だった。


 未来では隠蔽されていたかもしれないメッセージが、今俺に来てしまっている。しかも一週間後に日本のダンジョンに来るとも言われてしまい、簡単に無視するのも難しくなっていた。


『一先ず、その一週間後に自衛隊の中に君を潜り込めるように手配はしよう。 榊原君たちと一緒に間引きに参加してもらう』


「……了解した。 変装のチェックは止めてくれよ」


『カードがあればいけるようにしておくとも。 では、当日の朝に集合だ』

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