芸術爆発! 最強剣は『太陽の刀』!
しかし、由来はなんであれ、ダサいもんはダサい。
けど、それを言っても火に油を注ぐだけ、師炉極の場合は面白さに拍車をかけるだけになりそうなので、それは心にしまっておく。
「はいはい、かっこいいですね。メスガキには刃が立ちませんでしたけど。もっと使えるモノはないんですか?」
「はいはいって君ねぇ……むぅ、まぁいい。もっと使えるモノか……あるにはあるが、果たして君に使えるか……いや、君ならば使いこなせるかもしれないな……!」
「なんでもいいからさっさとください! できればあんな剣より今度こそちゃんと役に立つのを!」
「俺の愛剣をあんな剣って……なんだか急に俺に対する口の利き方が酷くぞんざいになってないか?」
「そんなこと言ってる場合じゃないでしょう!? 今は戦闘中なんですから!」
「う、たしかに君の言う通りだな。よしわかった! 俺のとっておきをくれてやる。が、こいつは実体化させて渡すことができない。というのもこの剣は装備するのにステータス制限があってな、俺じゃ装備すらできない曰く付きのブツなのさ」
あの世界有数のS級冒険者の師炉極でさえ装備すらできない武器!? そんなのがあるなんて……一体どんな武器なんだ?
「師炉極が装備できない武器って、俺も装備できないんじゃないですか?」
「さぁね? とりあえず<デバイス>に転送するから、隙を見て<デバイス>を開いてトレード取引許可しろ」
「りょーかい!」
<デバイス>を確認する時間を作るのはそう難しいことじゃない。俺はメスガキ悪魔巨人を支えたまま一旦しゃがみこんだ。
しゃがみこんだ状態から縮んだバネが勢いよく跳ねるように、全力で立ち上がると同時に両腕を使ってメスガキ悪魔巨人を投げ飛ばした。
「そらよっと」
ぴゅーんと吹っ飛ぶメスガキ悪魔巨人。
この隙に<デバイス>を開く。アイテムトレード申請が来てる。
<<師炉極からのトレード申請があります
内容を確認し、可否を選択してください>>
アイテム名と条件、免責事項等々、パソコンやらスマホでアプリをインストール際に出てくるやたらと長い使用許諾的激クソ長文が表示された。
あの手の文章一字一句徹頭徹尾ちゃんと読んでるやついる!? いねえーよなぁ!?
こんなもん読まずにテキトーに読み飛ばすだろう? 誰だってそーする。おれもそーする。
あえて断言する。こんなもんちゃんと読んでる人類はいない。
特に今みたいな緊急事態にそんなことしてる余裕あるわけない。
よって、俺はいつものごとく読まずに同意ボタンをぽちっとした。なぜか拇印とサインを求められたので、それもパパッと済ます。拇印は<デバイス>の指をかざすだけで済むし、サインも画面に指で書くだけ。簡単だね。
<<契約が完了しました>>
その一文とともに、<デバイス>のインベントリにアイテムが送られてきた。
<未知装備>と表示されている。つまりギルド未登録の激レア装備だ。一体どんな装備なんだろう? ドキドキしつつアイテムを選択し、装備ボタンをタップした。
<<物理攻撃力値のステータス制限をクリア。装備します>>
音声とともに<デバイス>の装備欄にアイテムが反映された。俺の右腕にそれは出現した。
「うおっ……!?」
それはめちゃくちゃデカかった。十メートルはあるかと思われる巨大なブツだった。武器として異常な大きさだが、そんなことよりもその特異で特徴的かつ既視感のあるデザインの方が目を引いた。
それはまぁ、ひっじょ~に見覚えのある形状をしていた。
一言で言うなら『芸術が爆発したような形状』だ。
端的に言えば十字形。円錐に腕と頭を付けたような形状をしている。
そして三つの顔が付いている。突端に金色のひよこみたいな円盤状の顔が付いていて、腹部には怒ってるのか悩んでいるのか仏頂面的微妙な表情のデカい顔が掘られ、背部に澄まし顔が黒一色で描かれている。
全体は白く、正面に赤い波模様の縦ラインが腹部の顔の両側に二本、黒い波模様が背中の顔から放射状に何本も伸びている。
こいつを見ていると三波春夫が「こんにちは」と連呼する声が聞こえてきそうだ。武器と言うにはあまりにも歪な形状。一応武器種は『刀』になってるがどちからというと見た目は『塔』だ。まさに『巨大なパワーを秘めたそびえ立ったタワー』のような、そんな感じのの武器だった……。
濁してまくったけど、これってアレだよなぁ……ほら、昭和を象徴するアレ。本物よりかは幾分小さいと思うけど、サイズ以外はもうまんまそれだもんなぁ……。
「『太陽の刀』と名付けよう……!」
師炉極が言った。
「ま、まんまやないかーい……!」
「違う! 字が違う! とうは刀だ! だからセーフだ! セーフに決まってる! それに……色々と今更だろうッ!」
「……!」
メタい……! が、たしかに色々と今更ではあった。
本作はパロディをふんだんに節操なく雑多に取り入れたコメディ作品。濁すこと無くあらゆる著作物がそのまま登場している。
しかしそのほとんどは名称だけだ。今回の『太陽の刀』はある意味そのまんま登場してしまっているのだが、それはいいのだろうか……?
いやいや、あくまでもこれは『太陽の刀』。デザインに関しても本作に文字以外の情報はないので、なにかに似ているという指摘を受けることもないはず……!
もし万が一問題があった場合もそこはウェブ小説だからすぐに修正も可能だ!
よし、何も問題はない。
つーことで、俺は遠慮なくこの巨大武器『太陽の刀』を使わせてもらう……!
俺は『太陽の刀』を構えながら、メスガキ悪魔巨人に向かって疾駆した。
俺が投げ飛ばしたメスガキ悪魔巨人は既に立ち上がり、俺に向けて再び先程の光弾を連射してきた。
一つ、こいつの実力を試してみるか。俺は『太陽の刀』を一閃し、光弾を弾き返した。
さすがは師炉極さえ装備できなかったほどの武器、無数の光弾を受けてもびくともしない。しかもおそらくは筋肉のおかげだと思うけど、デカさのわりに全然扱いやすい。
見た目はパクりというかパロディでコメディだが、ちゃんと使える武器じゃないか!
見た目がかっこよくても使えない武器より、見た目が武器っぽくなくても使えた方が断然にイイ!
そのままメスガキ悪魔巨人に向かって光弾の中を突き進み、
「今度こそホントのマジでガチの終わりだ……!!」
『太陽の刀』を振り上げ跳躍、メスガキ悪魔巨人の頭上高く舞い上がり、
「終わらせる……!!」
俺はメスガキ悪魔巨人の弱点めがけて袈裟懸けに『太陽の刀』を振り下ろした。
「芸術爆発の一太刀!!」
太くたくましく白い刀身、というよりも塔身が、いとも簡単にメスガキ悪魔巨人の巨体を引き裂き、弱点部分を破壊した。パキンッとガラス細工が壊れるような微かな音と手応えがあった。多分、それが『核』だ。
「グッガアアアアアアアァァァァァァッッッッ………………………!!!!!!」
断末魔の大絶叫が世界に響き渡った。両断されたメスガキ悪魔巨人は地面に沈み、やがて光の粒子を放ちはじめた。
や……やった……!
今度こそ間違いなく、あの師炉夫妻でも歯が立たなかったSSS級のモンスターを倒すことができた……!
ってか俺、めちゃくちゃ凄くない!?
SSS級とかわけわからんインフレ級のモンスターをいきなり倒しちゃうとか俺ガチで凄すぎない!?
やっべー、感動と興奮で身体が震えてきた。
マジか、マジなのか、マジですか!
初めてのダンジョンでこんなミラクルがあるなんて!
ミラクルといえば、やっぱりこのミラクルな筋肉のおかげだよなぁ。幾度となくピンチを乗り越えられたのも、この激デカゴリムキスーパーギャラクティックなマッスルボディの賜物だ。
やはり筋肉か、筋肉こそ全てを制する最高にして最大のファクターなのか……!
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