伝説の英雄、師炉極の愛剣の名前がかなりダサい件について。あ、ダジャレじゃないよ。
痛みに指を押さえるメスガキ悪魔巨人。弱点の胸元が露わになった。今がチャンスだ。俺は胸元めがけて跳躍しつつ、<デバイス>を開いた。<デバイス>の戦闘データ共有機能で、勇魚が解析したメスガキ悪魔巨人の弱点部位をチェックする。よし、大体わかった。
「この辺かな?」
弱点部位に到達した。俺はそこに向けて、全裸にさせられた恨みも込めて思いっきり蹴りを入れてやった。くらえ、全裸マッチョキック。相手は死ぬ。
「グァッッ……!!!!」
派手にぶっ飛び、ゴロゴロと転がるメスガキ悪魔巨人。が、倒せていない。
あら?
なんで?
ピンポイントに弱点を蹴ってやったと思ったけどな?
ヤツはむくりと起き上がり、怒り狂える瞳でこっちを睨みつけてきた。おーこえー。
「能見くん、核はもっと奥にあるみたい!」
勇魚が叫んだ。
もっと奥って言われてもな……残念ながら俺はケンシロウ並のマッチョだが北斗柔破斬は使えないし南斗聖拳ももちろん無理。俺ができるのは単純な打撃技だけ。それが通らないんじゃどうしようもなくね?
「グゥゥゥオオオオォォ!!!!!」
叫びに反応したのか、メスガキ悪魔巨人は咆哮を上げ勇魚と師炉夫妻の方へと駆け出す。さすがにデカいだけあって速いが、それでも俺のほうが速い。
ダッシュし、俺はヤツのくるぶしのあたりにダッシュの勢いのままタックルしてやった。まるで足を狙撃されたように弾かれたメスガキ悪魔巨人は地面にぶっ倒れた。
「お前の相手は俺だって」
倒れているところへ跳躍、俺はメスガキ悪魔巨人の胸にパンチをお見舞いした。
全裸マッチョパンチ、相手は……死ななかった。喚きながら吹っ飛ぶだけで倒せない。これでも届かないのか……えぇ~っ……これでダメだとちょっとどうしたらいいのかわからない。せっかく弱点がわかってもその肝心の弱点を突けないんじゃ意味ないじゃん。
「マッチョくん、こいつを使え!」
師炉極が愛剣を投げて寄越した。矢のように飛んできたそれを空中でキャッチする。
ゾクゾクするほど眩しく輝く大振りな白銀の刀身。絢爛豪華な装飾。グリップも素晴らしく手に馴染む。さすがはS級冒険者の愛剣、かっこよくていかにも斬れそうだ。
そうそうこれこれ! こういういかにもRPGに出てきそうなかっちょいい剣に憧れて俺はダンジョン冒険者を目指してたんだ! しかもあの師炉極の愛剣だ! 感無量です!
軽く振ってみる。ビュッと風を斬る。うぅ~~~ん、とってもイイ感じ! ムキムキ筋肉のおかげで重さも感じないから、自由自在に操れそうだ。
イケる……こいつならヤツの弱点にぶっ刺さる!
「ありがとうございます! これならやれそうです!」
「礼なら倒したあとに言ってくれ」
爽やかに微笑む師炉極。
さすがは勇者、かっこいい……と言いたいところだけど、彼に残された唯一の装備だった剣を失った今の姿はただの全裸イケメン中年なんだよなぁ……。
ああ、憧れの勇者、師炉極のイメージが短期間でどんどん崩れてゆく。
それはさておき、得物は手に入った。俺はメスガキ悪魔巨人に正対し剣を構えた。
「さて、そろそろ終わらせようか」
「チョーシに乗るなよこのアホ筋肉がァァァァ!!!!」
メスガキ悪魔巨人の二対の腕、四つの手に怪しい光が点る、その直後、
「死ぃぃぃぃねェェェェいいいィィィィ!!!!」
その手から無数の光弾が放たれた。まるでショットガンを高速連射したような四方八方やたらめったらの大盤振る舞いだが、そんなもんがこの筋肉に通用すると思ってもらっちゃ困る。
俺は全身のバネの瞬発力を活かし、あえて前方にダッシュした。光弾が俺の頭上を通り過ぎてゆく。
残念だったな、俺は弾より疾いんでね。これからは俺のことをエイトマンと呼んでもらいたい。
一瞬にして俺はメスガキ悪魔巨人の股下に到達した。股下、そこがヤツの死角だ。そんな狙いのつかない攻撃を足元に撃とうもんなら、自分の足を吹っ飛ばすもんな?
思った通りヤツは撃ってこなかった。動揺を顔に露わし、たたらを踏んで後ずさろうとしたところに俺はヤツの足の踵に向かって肘打ちを食らわした。
「ギィッッ……!」
怪鳥のような呻きをあげ、仰向けに倒れそうになるのをヤツはなんとか前のめりになって耐える。
だが、それが命取りだ。
前のめりになり、ヤツの重心が前を向いたその瞬間に、今度はヤツのつま先に全力マッチョパンチを食らわせる。
ヤツの体重を支えていた足が弾かれたように後ろに跳ね跳んだ。柔道でいうところの足払いだ。足の支えを失ったヤツはそのままうつ伏せに俺の頭上に倒れてくる。
後は簡単だ。俺はヤツの胸部、弱点が落ちてくる地点に先回りし、師炉極から授かった剣を天に向かって突き上げた。
「これで本当に終わりだ……!」
メスガキ悪魔巨人の胸に剣が触れた。切っ先が鋭くヤツの胸に深々と突き刺さ……ることなく触れたその瞬間に、
ポキンッ。
と、ポッキーが折れたような軽い音とともに剣の方が簡単に折れててしまった。カッターナイフの刃みたいにきれいに真っ二つにポッキリと。
は……?
え……?
折れた……?
S級冒険者の剣が……?
それも仮面ライダー龍騎第一話の敵怪人、ディスパイダーに斬り掛かったときの龍騎ブランク体のソードベントみたくあっさり……?
うわっ、ひょっとして私の剣、弱すぎ……?
慌てて俺は折れた剣を放り出し、倒れてきたメスガキを両手で支えた。
「あーっ!! 俺の『ぶっ刺し丸』がぁッ!?」
エネル顔で悲鳴をあげる師炉極。
え、そんな名前の剣だったの?
なんて壊滅的なネーミングセンスなんだ。もうちょっとなんとかならなかったんだろうか。
「だ、ダセー……」
思わず、正直な感想が口を衝いて出てしまった。
「なッ……!! だ、ダサいとはなんだ!!! かの大作ファンタジー『指輪物語』の『つらぬき丸』にあやかって付けたんだぞ! かっこいいだろうが!!!」
師炉極は顔どころか全裸の全てを余すこと無く真っ赤にしてプンスカプンと地団駄踏んでこれでもかってくらい全身全霊で怒りを愉快に表現していた。
怒ってても所作がいちいち面白い。やっぱりこの人は生粋の三枚目なんだろうな。つくづく残念なイケメンだ。
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