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ヒーローはピンチのときに現れる! しかも全裸で! このパーティ、四人中二人が全裸(マイクロビキニの美魔女もいるよ)ってもうね……。

 次の瞬間に起こる最悪の事態が頭をよぎり恐怖に駆られた。


 勇魚から光が奪われる……!?

 そんなことあってはならない……!

 だが、今の俺にはどうしようもない……。


「やめろーーーーーッッッ!!!!!」


 恐怖にたまらず俺は絶叫した。


 そのときだった、


「<魔弾(マックスバレット)>!」


 どこからともなく聞こえてきたスキル詠唱。

 直後、一条の閃光がメスガキの振り上げた腕と額を貫いていた。


「ぐぇ……!?」


 踏まれたヒキガエルのような声を発して、勇魚の身体からメスガキがずるりと剥がれ落ちた。


「<瞬速剣(ソニックスラッシュ)>!」


 今度のそれは俺のすぐ近くから聞こえてきた。

 直後、俺を掴んでいた巨人の両手首が切断された。


 巨人の手に掴まれたまま落下が始まった。俺は空中で身体を一捻りし、力を失った手を振りほどいて脱出、それからもう一度空中で身体を捻って姿勢を整え、無事着地した。

 背後で巨人が音を立て仰向けに倒れた。


「よくやったな、マッチョくん」


「がんばりましたね、マッチョさん」


 いつの間にか俺と勇魚のちょうど中間点に師炉夫妻が立っていた。

 窮地を救ってくれたのはやはりこの二人だった。よかった、やっぱり生きていたんだ……ホッとしたら思わず涙が零れそうだった。


 よくぞご無事で、と言いたいところだが師炉極の姿はあんまりご無事とはいえない。無事なのは彼自身と彼の愛剣だけで他には何も残ってない。


 つまり裸だ。もうすっかりすっぽんぽんのばっちり全裸だ。


 これが映像作品なら画角でシンボルが映らないように誤魔化すか、開き直ってモザイクで処理するしかないくらい完璧な全裸だった。

 ま、俺も全裸だから他人のこと言えないんだけどね。


 つまり今この場には全裸男が二人とビキニの美魔女と普通の女の子がいる……なんだこの変態パーティは。


「お父様! お母様!」


 二人に駆け寄る勇魚。それを暖かく迎える夫妻。あぁ、美しき親子愛。

 全裸と半裸の親に子が縋り付く光景はちょっとアレだけど。ま、この際そこには目をつむろう。俺も裸だし。


「勇魚、まだ戦いは終わってないよ」


「そうよ、敵はまだ全然ピンピンしてるわ」


「はい、わかっています……!」


 夫妻の言葉通りだった。

 倒れていたメスガキは不意に空中へと飛び上がると巨人の首に着地、再び合体した。切断されていた腕も再生し、メスガキ悪魔巨人はゆっくりと立ち上がった。


「殺してやるゥ……皆殺しだァ……!!!」


 メスガキの顔は狂気と怒気に醜く歪みまくりで、実に悪魔的だ。


「能見くん、あの悪魔の弱点は巨人の右胸の奥にある(コア)よ! <デバイス>にデータを送るわ!」


 勇魚は<デバイス>を操作しつつ叫んだ。


「えっ、なんでそんなことがわかるんだ?」


「実はさっき捕まったときからこっそり<アナライズ>を使ってたの。もっと早く弱点がわかればよかったんだけど、時間がかかってごめんなさい」


 マジか……!

 人質になって命の危険すらある中で敵の弱点を密かに探っていたなんて!

 さすが勇魚。マジ半端ねぇっす!


 ちなみに<アナライズ>とはそのまんま対象を解析するスキルだ。解析速度とその正確さは使用者の魔力量と比例する。

 マンポ(草)には使用不可能なスキルというわけだ。マンポ(泣)がスキル不能なのはこれに限った話じゃないが。


「いや、謝る必要なんて全然ないよ! むしろ、こっちがお礼を言いたいくらいだ」


「ふっ……さすがは我が娘! さぁ、マッチョくん、後は君に任せた」


 師炉極がいつものイケメン特有の爽やかな微笑を浮かべた。でも、全裸のおっさんに微笑まれるのは気持ち悪いなぁ。


「あとは俺って……え?」


「え? じゃないよ。俺と小百合子ちゃんじゃあのメスガキにダメージを与えられないんだからさ。じゃ、必然的に君がやるしかないだろう?」


「……まぁ、たしかにそうなりますか」


「そ。だからあとは……おっと、マッチョくん、後ろ――」


「え――」


 瞬間、急に世界が暗くなった。変だなと思って上を見ると、メスガキ悪魔巨人の巨大な掌が頭上から落ちてきた。


 以前の俺ならここらでビビりまくりのモノローグが入るところだが、今はもう筋肉の真の力を理解しているので慌てふためくこともない。


「よっ、と」


 軽く片手を上げて、振ってきた掌を受け止めた。多少の衝撃があるだけで別に痛くもなんともない。

 ウルトラバリムキ激デカゴリマッチョのこの俺に、肉弾戦勝負を仕掛けてくるとはいい度胸だ。いや、ただのバカか。まぁ、どっちでもいい。なんであれ、物理勝負なら俺は負けない。


「うりゃっ」


 俺は巨人の指を丸太を抱えるようにがっしと掴み、捻ってやった。指が嫌な音を立てて本来曲がらない方向へと大胆に回転した。


「ぎゃあああああああああァァァァ!!!!!」


 獣じみたメスガキの絶叫。

 それはもはやどこにもメスガキの要素が見当たらなかった。スプラッタホラーにお誂え向けで、そういう意味ではしっかり悪魔らしくはあった。

面白いと思った方、ブクマ、評価お願いします! モチベに繋がりますので!

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