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乙子ルート 第1日目①

この場合、男が百人いたらまず間違いなく百人がメイド喫茶を選ぶことだろう。


 だが、オレは違いのわかる男。あえて執事喫茶を選ぶさ。そう、あえてね(本田△風)。


 べ、別に執事が見たいわけじゃないんだからねっ! のどが渇いてるから行くだけなんだからっ!カン違いしないでよっ!


なんてツンデレなことを考えながらオレは扉を開けた。



 八月一日 午後四時二三分。

 執事喫茶「主はキミだ執事はボクだ」



「おかえりなさいませ、旦那様」


 そこにはオレが普段生きているリアル・ワールドとは違った世界が広がっていた。


 なんて言うか、異空間?


 だって、執事服を着たかっこいい(と言えないのも中にはいるけど)男の人がいっぱいいるんですよ?


 思わずお持ち帰りしたくなるぜ(ウソ)。オレはノンケだし。


 大体オレがノンケじゃなかったら、このノベル自体成り立たなくなるぜ。


 そんなことを考えながら店の膣内、もとい中を見渡してみる。


 なんつーか、執事目当てに来てるのはやっぱり女の人ばっかなわけで……。


 客の中で男はオレだけですよ。


 そんな風にキョドっていたら、ふと女の人と目が合った。


 いかにも「キレイな年上のお姉さん」って感じの美人だ。


 長い髪を一つに束ね、ノースリーブのニット素材のサマーセーターを身にまとい、下はエレガントな感じのロングスカートを穿いてグリーン系統の色でさわやかに統一している。


「あなた一人?」


「そうですけど……」


「男の子一人でこんな所に何をしに来たのかしら? 男の子が来てもあまり楽しい所だとは思えないけど?」


「べ、別に執事が見たかったわけじゃないんだからねっ! のどが渇いたから来ただけなんだからっ! カン違いしないでよっ!」


「ふ~ん、執事さんを見に来たんだ? あ、気を悪くしないでね。ただ、こんな所に男の子が一人でいるからつい声を掛けちゃったの。私も一人で暇を持て余していたところ。せっかくだからお話しない?」


 「せっかくだから」。


その言葉を聞いてオレはこのセリフを口にせずにはいられなかった。


「せっかくだから、オレはあなたとお話しすることを選ぶぜ」


「じゃあ、そこの席へどうぞ」


「んじゃ、失礼します」


 オレは促されるままに腰かけた。


「あなた……」


 そこまで言ってお姉さんが一瞬考えるような素振りを見せた。


 なんだろうか?


「そう言えば、まだ名前も聞いてなかったわね。簡単に自己紹介をお願いできる?」


「オレは立里貞君。十九歳の大学生です。『貞君きゅん』て呼んで下さい」


「十九歳……。若いのねぇ……」


 とりあえず、オレの提案はスルーされたようだ。


「若いって……。お姉さんだって二十代前半でしょ?」


「ふふっ、どうかしら?」


 そう言って彼女はかすかに笑った。


 その表情がとても優雅で色っぽい。


「それから?」


「ここら辺に住んでます。要するに地元民です。趣味は人生と愛について考えることです。特技はスイカ割り、とか色々。たぶん、全地球人類の中でオレよりスイカ割りが上手い人間はいないような気がします。あくまでもいないような気がするだけですが。自己紹介はこんなところです」


 そこまで話したところで、執事さんが注文を取りに来た。オレはコーヒーを頼むと、話を再開した。


「じゃあ今度は私の番ね。私は武留たけとめ末理まつり。歳は……な・い・しょ」


 女の人に歳を訊くほど無粋なオレではないので、そこにはつっこまないことにした。


「地元の人じゃないですよね」


 直感でオレはそう言った。彼女からはなんと言うか、洗練された都会臭を感じたからだ。


「よくわかったわね」


「なんかおしゃれですもん、雰囲気とかが」


「ふふっ、ありがとう」


 ふいんき、と言わないところがオレがゆとりじゃない証明だ。それがオレのジャスティス。


「一人旅の真っ最中よ」


「そう言えば、末理さんはなんでこの街に?」


 オレの住んでいる間述市は中途半端な都会で観光名所でも何でもない。


 それなのにわざわざホテルに泊まってるってことは何か用事があるからだろう。


 そう思い、オレは尋ねた。

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