乙子ルート 第7日目①
①
考えるまでもない。
最近、乙子のことが妙に気になってしまうオレはとてもそんな気分にはなれなかった。
オレは……乙子のことが好きなんだろうか?
そんなことを考えながら、歯を磨く。
乙子のことがちょっと気になるけど、明日になれば、いつものように何もなかったような顔でオレの前に現れることだろう。
そんなことを考えていると、雷が光った。
外は相変わらずすごい雨だ。
本当に明日には止むんだろうか。
少し心配になってきた。
歯磨きを済ませたオレはもう寝るだけだ。
期間内に童貞は切れなかったけど、みんなでこんなに楽しい旅行ができたからいいや。
そう思って、寝るために電気を消そうと立ち上がったら、不意にドアがノックされた。
こんな時間に来るってことは多分達人だろう。
そう思いながらドアを開けると、いきなり柔らかいものがオレの胸に押し付けられた。 この柔らかいものが達人のものだと仮定するなら、オレはアソコを押し付けられてるわけで。
うえっ、想像するとガチで気持ち悪いぞ。
男の体で柔らかい部分なんて限られてるし(あくまでも非戦闘時)。
しかし、オレの背中には腕が回されてるから、それは人体の構造上ありえない(とか書くとオレすごく頭良さそうだな)。
加えて、抱きついてきた腕はきゃしゃで男のものとは思えない。
あと、背もオレより低いから確実に達人じゃない。
ってことは乙子か末理さんの二択になるわけだが。
「オトコ?」
「さっきはごめん。ムキになっちゃって……」
「いや、それは別に……。オレは初めから怒ってなんていないし。オレの方こそごめんな? ちと大人気なかった」
オレの方にも非がなかったわけじゃないので、ここは素直に頭を下げる。
「雨、やまないわね……」
「まあ、台風だし……」
そんな会話をしつつも乙子がオレから離れる様子はない。
オレの手が乗ったままの肩は今もカタカタ(シャレじゃないぞ)震えている。
「オトコって雷、ダメだったっけ?
結構長い間幼なじみをやってるが、考えてみれば乙子と一緒の時に雷に出くわしたことはない。
「怪談とか大丈夫なくせにこんなものが怖いなんて、変わったヤツだな」
オレがそんな感想をもらすと、乙子はこう反論した。
「幽霊とかなんてあたし見たことないもん。でも、雷は実際に存在するのよ? 雷に打たれて死んじゃった人もたくさんいるのよ? どっちが怖いかなんて比べるまでもないじゃない!」
まあ、言いたいことはわかる。
でも、世の中には理屈じゃないことがいっぱいあるわけで。
オレの腕の中で震えている乙子はなんて言うか……かわいい。
これがいつもオレと達人に悪態をつきまくっている生き物と同じ生き物だとはまったく信じられない。
こいつ、こんなにかわいかったっけ?
普段は何とも思わない乙子のことを妙に異性だと意識してしまう。




