乙子ルート 第6日目⑭
⑭
「ま、トランプじゃほとんどお前の独壇場だったからな。このくらいは花持たせてもらわねーとオレも立場ねーし」
そんなことを言われる。
熱戦を終え、のどが渇いたオレはジュースを買いに行くことにした。
ついでに達人の分も買ってきてやろう。
「達人、ジュース買いに行くけど、お前は何飲む?」
「コーヒー」
達人が「コーヒー」と言ったら、砂糖の入ってないヤツだ。
「わかった」
缶を両手に達人の下へ戻る途中、末理さんに会った。
「今夜部屋で待ってるわ。気が向いたら来てね」
末理さんの部屋に行くということの意味はもちろん一つだ。
それがわからないほど、オレはバカじゃない。
どうしようか思案しつつ、ウーロン茶とコーヒーを持って達人の所へ帰還した。
「わりーな、いくらだ?」
「いいって、んなもん」
「けど、こういうことはキッチリしとかねーと」
「敗者から勝者への貢物だとでも思ってくれ。それにお前にはいつも世話になりっぱなしだし。ささやかなお礼だ」
「そういうことなら、ありがたくもらっとく。サンキュな」
コーヒーを飲みながら、達人がチラチラオレの方を見ている。なんだろうか?
「……オトコのことが気になってたんだろ?」
さすがオレの親友。
オレの心の中なんてとっくにお見通しだ。
「イマイチだったからな、いつもより反応が。いつものお前ならもっと速い」
「やっぱ、わかっちゃうか」
八才より前のことはあんまりおぼえてないけど、物心がついてからはずっといっしょだ。
何故か達人はオレにものすごく良くしてくれたし、オレの方もそんな達人によくなついた。
性格とかは全然違うのに妙にウマが合った。
一番の親友だということは疑いようもない。
「ま、お前ら似た者同士だし、結構お似合いなんじゃねーの?」
「達人はオトコのことどう思ってんだよ?」
それは前から一度は訊いてみたかったことだった。
「さっきも言ったろ。友達としか思ってねーって。少なくともオレは性的な目でオトコを見たことは一度もねーぞ? ま、かわいくも凶暴な妹ってところだな」
「そっか……」
達人が乙子を恋愛対象として見ていないと知って、どこかほっとしているオレがいる。
「お前らがくっついたところでオレとお前らの関係は変わらねーし、むしろ好ましいことだとさえ思ってんだけどな。ま、そこはお前の判断に任せる」
「達人……」
「軽く汗もかいたことだし、そろそろ寝るわ」
そんなことを言って達人は去っていった。
時計を見ると、もうすぐ日付が変わりそうだ。
一人になったオレは自分の部屋に戻ることにした。
そういえば、末理さんから「気が向いたら部屋に来て」って言われてたな。
どうしようか?




