乙子ルート 第4日目④
④
会計を済ませ、食材の入ったビニール袋を持つ。
乙子のアパートが近いってことはオレのアパートも近いってことだ。
ともあれ、アパートにお邪魔することになった。
「お邪魔しま~す……」
心なしか部屋の中はいいにおいがする気がする。
ガキの頃は気にしなかったけど、やっぱ男と女じゃ全然違うよな。
「ジロジロ見ない!」
釘を刺される。
ちぇっ、ケチ。少しくらいいいじゃないかよう。
ところで、「ちぇっ」ってなんだろう。
「それじゃ、ちゃちゃっと作るからあんたはテレビでも見て待ってなさい」
そう言ってエプロンを装備する乙子。
しかも実用的なヤツじゃなく、フリルのついたかわいらしいタイプだ。
乙子とエプロン。
なんか意外な組み合わせだが、意外と似合っている。
「む。お前のエプロン姿なんかじゃ絶対萌えないと思ってたけど、これがなかなかどうして……」
「あっ、あんまりジロジロ見るんじゃないって言ってるでしょ……!」
ガラにもなく照れている。
こんな乙子を見られる機会なんてそうそうないだろう。
ここは可能な限り目に焼きつけておくしか。
「だが断る。全力で心のフィルムに激写」
「殴るわよ?」
「すみません。調子に乗りました……」
「素直でよろしい」
とか言いつつ、こっそり後ろ姿を眺めてるオレがいるわけで。
ふむ、やっぱり見た目は悪くないな。
いや、むしろイケてると言っていいだろう。
ただ、中の人は男だからなぁ……。
と、思った瞬間。
「中の人などいない!」
叫ぶ乙子。
オレの心の声に気づくなんていくら気心の知れた幼なじみとはいえ、あなどれないヤツだ。
って、この手の文章は何度目だろうか。
まあ、設定の段階で乙子の口癖が「中の人などいない」だからしょうがないんだけど。
オレがそんなことを考えている間にも乙子の手は休みなく動き、料理ができていく。
あの手際なら心配は要らないだろうか。
そして。
「さ、できたわよ」
オレの目の前には乙子によって作られた手料理が所狭しと並んでいる。
豚肉の生姜焼き、レバニラ炒め、ポテトサラダ、味噌汁。
実に家庭的な料理たちですね。
幼なじみ×手料理。
なんかフラグが立ちまくりな展開だ。相手が乙子じゃなかったらな。
オレは料理を観察た。
見るのではなく、観察る。
なんせ、命がかかってるからな。
見た目は……悪くない。
むしろうまそうだ。
においも……問題ない。
うまそうなにおいが空っぽになった腹を刺激する。
だがしかし。
トラウマ持ちの身としてはなかなか手が出しにくいわけで。
「どうしたの? 遠慮しないで食べなさいよ」
そんなオレの態度に業を煮やした乙子がオレに料理を勧める。
別に遠慮してるわけじゃないけどな。
「お、おう……。いただきます……」
ええい、ままよ!
オレは覚悟を決めた。




