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乙子ルート 第3日目③

 ゲームセンター「あらし」。

 八月三日 午後十二時二一分。


 末理さんと別れた後、オレはゲーセンの前を通りかかった。


 そこで見慣れた顔を目にする。


 乙子がUFOキャッチャーなんぞやってるわけで。


「ユー、ナニしてるの?」


 もちろん、見ればわかるんだけど会話の取っ掛かりとしてオレは訊いた。


「さ、貞君。見ればわかるでしょ。UFOキャッチャーよ」


「まあ、それは見ればわかりますが……。珍しいな、こんな所で」


「まあ、たまにはね」


 オレの方を見ずに答える。


 どうやら姫はUFOキャッチャーにご執心のようだ。


 そんな姫に対して今のオレにできることといえば何があるだろう。


 ここは応援、そう今の姫に必要なのはオレの応援だろう。


 そういう答えを導き出したオレは心をこめて姫を応援した。


「ユー、取っちゃいなよ! ユー、ぬいぐるみ取っちゃいなよ!」


「な、なにっ!?」


 オレの声に集中を乱した乙子はあからさまに操作をミスった。


 無情にも乙子の狙っていたっぽいぬいぐるみはクレーンのアームをすり抜けていく。


「あ~あ……」


 オレは落胆の声を漏らした。


「もうっ! あんたのせいで取れなかったじゃない!!」


 乙子が失敗に声を荒げる。


 まあ、確かにオレのせいもあるのだろう。だがしかし。


「HAHAHA。自分の未熟さを人のせいにしちゃあいけない」


 オレはアメリカナイズされた乾いた笑い声をあげた。


 アメリカンコメディとかで観客がやってるアレな。


「じゃあ、あんたなら取れるって言うの?」


 オレの態度に怒り心頭っぽい乙子がかみついてくる。


「『取れるか?』だと。フッ、笑止な……」


 わざわざ答えることすら馬鹿馬鹿しい、といった態度でオレは洋画でよく見る、やれやれといった感じのポージングをしてみせた。


「このオレを『ぬいぐるみキャプター貞君』と知ってそんな口を利いてるのかな?」


「あんた、そのわけのわからない肩書きは一体どれだけあるわけ?」


「わしの通り名は百八つまであるぞ」


 作中ですべて紹介できないのが残念でしょうがないけど。


「で、乙子がほしいぬいぐるみはどれなんだよ?」


 気を取り直して尋ねる。


「あれ」


 指を指す乙子。


 その先にはお世辞にもかわいいとは言えない物体が存在していたわけで。

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