90:拡散
ホームルームの結果、マジホリの話題は保護者の間にも伝わるのだが……
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「と、言う訳でして、過労死された方の遺作をなんとか守ろうという子供達の熱意がですね……」
「あらあら、そんな事になってたんですか?」
「上手く行かなければ、あと二ヶ月もすればゲームが遊べなくなるそうですし、どちらにしても長くは続かないので心配は無いのではないかと……」
「そういう事でしたら、まあ、ねぇ?」
「そうですわねぇ」
担任教師は、ホームルームの後、マジホリの騒動を「感動する良い話」としてPTAに持ち帰った。
こう言われては反対も言い辛く、ゲームに厳しい父母も禁止を言い出せなくなっていった。
見事な、コウヤ達の……いや、カナリの作戦勝ちである。
「って事になってねぇ あなた、どう思います?」
「はぁ~ サービス終了したプロのゲームをアマチュアが引き継ぐとか、面白い事もあるもんだねぇ」
会議の結果は、各家庭で話題に登る。
「なあキミ、マジホリってゲームを知ってるかね?」
「へ? いや、俺知らないっすね」
その話を聞いた父親は、職場で部下に教えて聞かせる。
「先輩、確かゲームのライターやってんすよね?」
「ああ」
「面白い話聞いたんすけど、これ記事になりませんかねー」
その部下もまた、飲み友達の先輩に話を聞かせる。
「編集長、面白いネタ拾って来ましたよ! マジホリが今面白い事になってんすよ!」
「マジホリ? 訴訟のネタならもう片付いただろ?」
「いやいやいや、とにかくwiki見てみてくださいよ!」
「ふむ…… そこまで言うなら、まあ……」
「あー! 違う違う! そっちじゃなくて! MODの!」
「なんだよ!」
そして、PCゲーム情報サイトの代名詞とも言える「To Gamers」、通称「2亀」の編集部にも話は伝わった。
とっくに終わったゲームの、そのまたMODサーバーの小さな出来事……
本来なら、扱うべきかどうかも微妙な事件だったが……
彼らは、「世代」なのだ。
ハクスラブームの直撃を受けて育った、生粋のPCゲーマーなのだ。
あのマジホリが、今こんな事になっているのだと聞いて、血が騒がないはずがなかった。
「よっし! こうなりゃ俺達も参戦だ! 特集組むぞ! 連載だ!」
「そうこなくっちゃ!!」
下調べの後、編集部は第一報を放つ。
その記事は、多くの元ゲーマーや、現役ハクスラゲーマーの胸を打ち、たちまちにQuitterのリツイートで拡散されていく。
一晩で数千件のリツイートを受け、数日後には4万件にも達していた。
<撃破不能&触れればロスト! 悪魔のようなボス発生!>
<名作ハクスラRPGの驚くべき今!>
<マジホリの伝説は今作られている!>
<開発者遺族の願いを受けて…… 奮闘するプレイヤー達>
「2亀」だけでなく、他のゲームニュースサイトにも取り上げられ始め、事件はたちまち日本のゲーマー達の間に広がり始める。
完全に、「バズった」状態だった。
『おっ! また新人さんだらけじゃん。すげぇな』
『ルーム2でこれですからねぇ』
コウヤ達は、やめると言い出したカナリを引き止めてから、一気に攻略が進み、既に難易度インフェルノを完走。
今はインフェルノダンジョンの第一層に挑んでいる。
レベルも119に到達し、レベル帯によって四つに別れたロビーの二番目に配置されるようになっていた。
にも関わらず、ロビーMAPの街中で、連日のように見慣れないプレイヤーとすれ違う。
それほどまでに新規プレイヤーが増え、ルーム1が満員になっているという事だ。
『どうなる事かと思ったけど…… これなら、ポーションも集まるんじゃないか?
ホント、良かった……』
『コウヤ君、まだ気に病んでいたんですか? 誰も君のせいだとか思ってないですよ』
『それでも、なんか、な』
ただきっかけになっただけだと言うのは理解している。
それでも、ずっとコウヤは心のどこかで負い目を感じていた。
自分がきっかけであるにも関わらず、我を通して「いつものプレイ」を貫き続けたのも、無責任な振る舞いではないのかと気にしていた。
そんな自分の心の重荷も……
『コウヤさーん! こんばんわっ』
『お待たせしましたわね、コウヤくん』
明るさを取り戻した二人の笑顔で、解消されていた。
これでいいんだと、許された気がしていた。
『よっし、じゃあ、今日は目指せ15階って事で、行こうぜ!』
『おー!』
今や、以心伝心のチームプレイを駆使するようになった七人パーティーは、今日も快進撃を続けていく。
ニュースサイトでも「編集長」の表記でいいのかな……?




