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09:部外者の目

四人は初めてゲーム内で「知らない人」と接するのだが……

09:部外者の目


『へぇ~ 今からインフェルノ目指すとか、物好きもいたもんだなぁ!

 俺、完全初心者とか、初めて見たかもしれん。今じゃ赤武器よりレアだよ!』


四人が初めて出会う、他のプレイヤー「SOUKO1」は、名前からして明らかにサブキャラであり、レベルは28と低いものの、明らかに熟練のプレイヤーだった。

少々初心者を馬鹿にするような口調ではあるが、親切な人物で、旅商人のスキルを使って武器の強化をしてくれた。

カルバーン(旅商人)♀のデザインは、超有名RPG、ダークエ3の女商人を真似て作られたRSオリジナルのプレイヤーキャラだが、その可愛い見た目に反し、明らかにオッサン口調。

そこが少々気持ち悪くもあったものの、親切心からの申し出ではあったし、四人はありがたく強化を受ける事にした。

強化には、今のコウヤ達では手に入れらない素材が必要となるのだが、彼にとっては余りすぎて困るような物であり、四人それぞれ武器の等級を三段階目の青まで上げてもらえるという、嬉しいハプニングとなった。


『素人さんには貴重品だろうが、黄色武器まではハナクソみたいなモンだから、気にしないでいいよ。

 貴重な新人さんの応援ボーナスだと思って』


マジホリの装備アイテムの等級は、灰色、白、緑、青、紫、黄、金(茶色にしか見えない)、に分かれていて、RSでは更にその上の赤武器も用意されている。

最終的には黄色レジェンド等級以上で無ければゴミ扱いとなるため、自慢でも何でもなく、熟練者にとってはこの程度のサービスは実際ハナクソ程度の出費なのである。

武器を渡して盗まれる可能性もあったのだが、当然、コウヤ達四人の武器には何の価値も無い。SOUKOさんからすれば、ハナクソ以下のゴミアイテムであり、そのような心配はあり得なかった。


『ありがとうございました!』


『このゲーム、本番はインフェルノクリアのその後、200階ダンジョンからだから。

 頑張ってそこまで来て欲しいぜ。がんばんなよ!』


四人は丁重に礼を言い、倉庫さんと別れた。

思わぬクリア報酬に大喜びする四人だったが、もう夜の九時を回っている。

親との約束の「一日一時間」を既に過ぎている。


『時間ぎれー』


『アクト2に入って終わるか』


『おけ』


船頭に話しかけ、OKボタンを押すと、デモムービーが始まる。

川を渡り、主人公が小舟の上で夜を明かすと、晴れ渡った空、陽光の輝きの下、大きな砂漠の町が現れる。

行き交う行商人が描かれ、エキゾチックな宮殿を見せた後、一転、砂漠の上に暗雲が立ち込める。

その暗雲によって砂漠は暗い影に包まれていき、オープニングで邪神ザンダルナを復活させた謎のローブの男が再び登場。

男はトカゲ人間の砦となっている古代遺跡の中へと消え、ムービーが終わる。


四人がアクト2の拠点、砂漠の町ガラインに集まったところで、本日のプレイを終了する。

コウヤはパソコンを閉じ、姉とあれこれ話し込み、冒険の余韻に浸る。

父にも冒険の土産話をして、アドバイスをもらったりしていると、夜もふけて来たので、母に風呂に入ってもう寝ろと言われる。

姉の長風呂が終わるまで、スマホゲームをポチポチと触って時間を潰していたのだが、今となってはこの単純さに退屈を感じてしまう。

こうして空き時間に触る分には、こういったシンプルなスマホゲームも良いのだが、今のコウヤは廃人向けのガチのハクスラの方が、断然輝いて見えるのであった。

コウヤは風呂に浸かりながら明日の冒険を夢想し、遠足の前日のような気分で布団に入った。




「なあなあ、ホントハマるんだって、マジホリ!

 古いパソコンでもサクサク動くからさ~~」


翌日、コウヤは仲間を増やそうと、懲りずにクラスメイトの勧誘を続けていた。


「やるヤツいなくて大変なのは分かるけど、ちょっとなぁ……」


パソコンを持っている事を確認済み相手に絞って勧誘をしていたのだが、それでもやはり友人達の反応は否定的だった。

今、クラスのゲーム事情は、スマホゲームとマンテンドースカッシュに占められていて、皆人気のタイトルで腕前とやりこみを自慢しあっていた。

パソコンでしか遊べない、しかも、時間をいくらでも吸い取ってしまいそうなガチのやり込み系RPGに手を出す余裕は無かった。

小学生は小学生で、忙しい日々を過ごしているのだ。


(どいつもこいつも、ゲームの話ばっかり……)


そんな男子を冷ややかな目で見つめる、一人の女子がいた。

クラス委員長、カナリ。

ユウリを上回る秀才で、習い事も手広くこなし、色々な表彰も受けている超ガリ勉タイプ。唯一の欠点は運動神経くらいのものだった。

真面目すぎて怒りっぽい所はあるが、ハッキリした物言いで人付き合いもよく、クラスで浮くようなタイプではない。


(ほんとガキだな、こいつら。くっだらない……)


だが、人付き合いが良い前向きな性格は、あくまでカナリの上辺でしかなく、その本性は、こちら。

優秀な自分を高みに置き、馬鹿で愚劣な者どもを見下して満足する性格こそ、彼女の本性であった。


「なあなあ、委員長ならパソコンも得意だし、俺達と…… って、ダメだよな。ゲーム嫌いみたいだし」


「っ!?」


コウヤは、一切遠慮しない態度で男女関係なく接するタイプだった。

普通は委員長に睨まれるのを嫌って、男子は気安く話しかけたりはしないのだが、コウヤは全く気にせず、明るく話しかけてくる。


「そ、その……私は習い事がありますし、やはりゲームをする時間などは取れませんから……

 仲間が集まらず、難儀しているコウヤ君を気の毒には思うのですけれども……」


カナリはそんなコウヤの無遠慮で図々しい性格が苦手で、いつもしどろもどろな返事しかできなくなる。

それでいて、コウヤはカナリが返事を言い終える前からさっさと目の前から姿を消し、ユウリの隣へと戻っていた。


自分から話しかけておいて、返事も聞かずに背中を向けるとは、なんという無礼……!!

カナリは、メラメラと負の感情を膨らませ、不快の念を表情に表していた。


(貴様などは、ユウリのオマケでしかない、成績・中の下のザコだろうが!)


クラスの、いや、学年の成績トップを争うライバルであるユウリの事は、好敵手として意識しているが、コウヤはユウリといつもつるんでいる付属品としか認識していない。

線の細いイケメンタイプのユウリとは対象的な、元気のいい悪ガキタイプで、黙っていれば可愛い男の子で通るだろうに、いつもクラスにデカい声を響かせているバカ共のうち一匹でしかない。


「でさぁ、次のトカゲ神殿なんだけど」


「勿論、事前調査はしておいたよ」


聞き耳を立てていると、コウヤとユウリはまたパソコンゲームの話をし始めていた。

随分と楽しそうだ。あの秀才のユウリが、なぜそのようなレトロゲームに今更時間を割いているのか、カナリには不思議でならなかった。

会話の端から聞こえる、「マジホリ」というタイトルを彼女はノートに書き留めていた。

こんなつまらない事が気になっているのは不愉快なので、後で検索して正体を確かめてやるのだ。


次の授業の準備をしながらも、その目線はユウリとコウヤの方を追っている。


(どっちが本命だと思う?)

(そりゃユウリ君でしょ)

(いやいや、さっきのキョドりっぷりからして、コウヤ君じゃない?)


クラスの女子達がヒソヒソ話で盛り上がる。

先程、カナリがクラスの中で浮いてはいないと言ったが、ここで訂正して置こう。

嫌われている訳ではないが、ある意味、浮いてはいた。


茶色にしか見えない。

茶色にしか見えなかったのだ。

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