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10:帰り道

遠すぎる目標に挑むべきなのか、コウヤは悩んでいた。

10:帰り道


「で、200階ダンジョンなんだけどさ」


帰宅途上、話していたのは、やはりマジホリの話であった。

ユウリの方がRSに関しては遥かに詳しくなっているので、既にコウヤは先輩風を吹かせる事もなく、素直に教えを請う事にしていた。


「行けると思うか?俺達」


「時間さえ掛ければ誰でも。

 でも、僕達の場合、どうだろうね……」


「十年遊んでも999LVにならないって言うんだぜ?

 父ちゃん、200階で戦うには最低でも500LVは欲しいって言うし、そもそも目指すべきなのかどうかって事よ」


「僕だって、塾もあれば受験勉強もあります。そんなに人生掛けてまで時間を割く訳にはいかないですし……」


RS最大の醍醐味と言う、ディープホールインフェルノ・・トゥ・デスダンジョン、開始するための前提条件は、難易度インフェルノでのラスボス、大魔王ガラエルを倒し、ストーリークエストを終える事。

2日でアクト1をクリア出来たので、このままのペースで行くと、ノーマル、ハード、ベリーハード、インフェルノ、全7アクト×4の28アクトで、56日=二ヶ月もあれば辿り着ける計算だが、加速度的に次第に難易度が上がっていくこのゲームでは当然その計算は当てはまらない。

8才児という足枷の付いた四人パーティーで、一日一時間のプレイでこのまま続けると、いずれサクサク快適なペースで進むのも無理が出てくるはずだ。


ユウリは、幾つかの解決策を模索していた。


プランA:定時集合プレイの時間を増やす

プランB:定時集合以外でもプレイし、各自で鍛える

プランC:仲間を増やす

プランD:経験者から良い装備をプレゼントしてもらう

プランE:経験者に引率してもらう


プランAは、早く宿題を終わらせたり、週末にガッツリ遊んだりすれば、可能だろう。

Bは、コウヤが嫌がった。普段ゲームをあまり遊ばないユウイが確実に足手まとい化してしまうからだ。

Cは、そもそも友人達があの状況では実現が難しい。知らない他人と組むのも望ましくない。

DとEも、コウヤは嫌った。そういうズルをせず、冒険を楽しみたいと言う。

ユウリも、コウヤの意見に同意する。ゲームとは楽しいから遊ぶものであって、クリアするためだけに楽しさを捨てるのは本末転倒であり、「損」だとも考えていた。

結局、新たな仲間の勧誘を模索しながら、共に遊ぶ時間を増やしていこうという、今までどおりの方針に落ち着く。

いずれ限界が来たらバラバラにプレイして、集合時に一番ペースの遅いメンバーを手伝う形にすればいい、とも話し合った。


一方で、ユウリは内心、これ以上の仲間は必要ない、とも思っていた。

このまま四人で一緒にいる時間を増やしていけば、自分はマヤさんと仲良くなっていけるし、妹もコウヤのハートをゲットするチャンスがあろう。

ゲームを楽しみながら、明るい未来の人生も拓けていく。この上なくお得な展開ではないか。最高か、マジホリ。神ゲー。


常に冷静沈着な思考を持つ秀才も、こうなると悶々としてしばし現実に帰って来れなくなる。

妹をして「残念なイケメン」と言わしめる所以であった。


「まあ、基本仲間を大切にするのを第一にして、後はリンキオーヘンって事で。

 あと、人を増やすにしても、お前みたいに信頼できるヤツじゃないとダメだぜ。

 一緒にやってて楽しい仲間じゃないと、ゲームする意味ねーもんな!」


「ああ、そうだね」


こういうこっ恥ずかしい事を真顔でサラッと言ってのけるコウヤだから、惹かれてしまうのだ。

ユウリは、なんとかして妹と結婚させたいものだと、真剣に作戦を練りめていた。

そして、結局、インフェルノダンジョンを目指すのかどうか、という当初の話には何も結論が出ていないのだが、二人共その事には気づいていなかった。

むしろ、仲間を大切にするという方針はハードルを上げる結論でしかなかったのだが、彼らにとっては、これが正解なのだ。



「お兄ちゃーーん!」


後ろから、ユウイが走ってくる。


「こんにちわ、コウヤさん!」


「はいこんにちわ」


笑顔で頭を下げ、丁寧なお辞儀をするユウイに、コウヤもお辞儀を返す。

男友達同士で遊んでいる所にユウイが混じろうとすると、露骨に嫌な顔をするのが常だったが、コウヤにはこういう律儀な所がある。

ユウイがコウヤに敬意を持って行儀のいい態度で挨拶をしているのだから、年下のじゃれつきと馬鹿にしたりもせず、真面目に礼を返す。

これがコウヤの流儀だった。

それに、今ではユウイは掛け替えのない旅の仲間であり、表面上の事とは言え、「げっ、またイモウトか!」と嫌がるそぶりも無くなっている。


もう自宅が近かったので、ユウイは後ろの方に並んで手を振る同級生の友達に手を振って別れ、兄とコウヤの間に入って楽しげに二人を先導する。

このままユウリとユウリが家で鞄を下ろしたら、そのままノートパソコンを持ってコウヤの家に行く。

四人で早速マジホリ会第一部を敢行し、帰宅後素早く宿題を終わらせ、夜には第二部に突入するのだ。

明日は土曜、多少時間が遅くなっても問題は無いし、土日はガッツリとマジホリ三昧と洒落込む予定だ。

小学生にして、ハスクラ中毒の一歩手前。ユウリは、内心これを危険な兆候かもしれないと思ってはいたが、遊ぶゲームが変わっただけの事で、浪費する時間に変化は無いのも確かだ。

成績に影響が出ないよう、平日は気を付けなければと自分を戒め、素直に今を楽しむ事にする。

中学受験が終われば、きっとコウヤとは別々の学校になる。

だから、クリアに何年も掛けるつもりはない。タイムリミットは、小学校卒業までだ。












現実世界(恋愛) のタグを付けるべきだろうか?

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