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87:素人の成長

第二層で虚無を倒すプランが進む一方、解析班も何もしていない訳ではなく……

87:素人の成長




『いやいやいや、俺だって、こうなると流石にムキになっちゃうし』


虚無との足止めで自キャラのニンジャを失ったつらぬき丸は、100万ダメージ法の発見以来、サブキャラのサムライの育成を進め、ここまで整えて来た。

自分こそが虚無を倒す切り札になるのだという自負と共に、レベル上げにも勤しんで来た。

ポッと出の新人に出番を奪われるなど、我慢出来ない話だ。


つらぬき丸改め、きりさき丸。

彼はBOT育成にも手を出し、確実にクラガを突き放しに掛かっていた。




一方、クラガの方はMisscodeチャットに入り浸っている訳でもなく、ライバルが本気になっている事に気付くまで時間が掛かってしまっていた。

虚無対策スレで話題に出てようやく気付いたクラガは、それを「ランカー勢の陰謀」などと曲解。


「そうかよ…… そんなに俺を英雄にしたくねぇか……

やってやんよ!!」


同じ速度でBOT育成をされては、レベル差を詰める事は出来ない。

こうなったら、やる事は一つしかない。


「ようやく、やっと、俺の出番なんだよ……

今度こそ、俺が!!」


何も出来なかった、何をやってもダメだった自分が、ようやく主役になれる場所を見つけられた。

ここでなら、ここでだけは、俺は……!!


勉強の甲斐あって、クラガも多少ならBOTの仕組みを理解し始めていた。

彼は自分で動作設定を書き換え、周回速度を上げる。






虚無対策は、100万ダメージの実現だけではない。

依然、山田マン達のソースコード解析は進んでおり、僅かずつではあるが進展もある。

元々のサイバラの担当作業と密接な部分……戦闘システムの解析は概ね完了。

後は計算式を書き換えるだけで虚無を倒す事が可能、ではあるのだが……

メンテに入れない今、システムファイルの更新は不可能だ。


強引に強制終了して再起動すれば、ファイルの差し替えも不可能ではないのだが、それでは「巻き戻し」が発生する。

巻き戻すセーブデータのバックアップが存在しない現状では、それは全プレイヤーデータの消滅を意味する。


やはり、根本の原因を解消し、メンテナンスを再開出来る状態まで持って行く必要がある。

そして、それにはまだまだ解析が足りない。


山田マン達が仕事の合間に必死に作業を続けてくれている一方、他のプレイヤー達もただ手をこまねいて見ているだけではなかった。


ムラマサ達は四層に残された151階を周回し、二層プレイヤーのための武器・防具のトレハン、素材集めを続けていたし、キツネやブッチーのような、多少なりとスクリプトやコードに理解のあるプレイヤーは、解析の手伝いも行っていた。

新たに解析作業に加わった者も数名おり、中でもキュウリ=ユウリはメキメキと持ち前の学才を以て知識を吸収し、データ収集に貢献していた。


そうして、少しずつ、確実にRSMODの全容が明らかにされて行くにつれ、キツネはその実態に驚嘆させられ続けていた。


その出来は、あまりに稚拙。


解析の最大の収穫は、RSMODの根幹となる部分になるほどデタラメな素人コードになっていくという事実が明らかになった点にあると言ってもいい。


つまりは、元々のMOD製作者、RSの神=カミさん=キタガミは、ド素人だ、という事だ。


そして、キツネはその事実にますます混乱の度を深める。


(キタガミって、プロよね?)


キタガミとカノザキは、RSを開発し、その実力でもってFrigate Games社に採用されたと言う。

最近は、バジリオン社の大作MMORPG「ファンブルヒーローズ」のメインスタッフの一人として活躍しているのが、同ゲームの公式フォーラムで確認出来る。


(こんなド素人が、なんでバジリオンみたいな大きな会社でビッグプロジェクトに携わってる訳?)


RSの開発終了から十年以上が経過している。

彼なりに修行し、成果を出し、最先端の大作ゲームに携われる程に成長した?


いや……


キツネは、感覚として、それは無いと見ていた。

つぎはぎにつぎはぎを繰り返し、こんなデタラメなスパゲッティ(読解不能)コードに育て上げてしまうのは、元来、素養の無い人間がやる事だ。


事実、彼はマジホリRSが更新を終えるまで、この惨憺たる有様を改善しようとはしなかった。

改善されていれば、今頃こんな事にはなっていなかったのだ。


キタガミがこちらの協力要請に、忙しいから無理だと言って手を貸さなかったのも、あるいは……


(彼に、そもそも問題を解決する能力が無いからではないのか?)




キツネは、解析作業からリアルの調査活動へと移行。


バジリオン社の情報なら、現在係争中の故・カノザキの遺族がたっぷりと抱え込んでいるはずだ。

真相に迫るため、カノザキの遺作を守るため、協力は得られるだろう。


自分の得意分野はこちらだと確信し、キツネはまたストーカー忍者の本領を発揮していく……






スパゲッティコード云々は自戒も込めて……

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