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48:難易度・ハード

キツネは真相に迫るため、危うい情報のやり取りを始めていた。

48:難易度・ハード




「ありゃりゃ、見つかっちゃったか~ 新人チーム」


日課の全ログチェックをしていると、相変わらず虚無対策で盛り上がっている中、新規勢応援の話題も散見される。

自分だけの密かな楽しみだった新人観察も、そろそろ潮目が変わる頃、という事だろうか。

幸い、好奇の目に晒される事は織り込み済みなのか、はたまた自分のようなストーカー忍者対策なのか、ある時期からボイスチャットでのプレイに切り替えているのは確認済みだ。

注目の的になったとしても、今の彼らなら問題あるまい。お父さんに注意しておく必要も無さそうだ。


(それより、今はこっちを優先)


キツネは、コウヤの父から情報を受け取る手段として、「直接会う」を選んでいた。

いつどこでバッタリ出会えばいいのか、入念な下調べを行い、今日この時、この場所を選んだ。

監視カメラに映らない場所も確認済み。念の為マスクもしている。


指定の時刻、指定の場所、昔なじみの知り合いが街角でバッタリ会って、「多すぎたからどうぞ」と何やら紙袋を手渡す。

少しは自然な会話を織り交ぜ、そのまま別れる。

そういうプランだ。

実際、二人は昔なじみの知り合いなのだから、自然とそれが出来るはずだ。

手渡した包みの中には、次の受け渡しの予定と、ここまでの痕跡の消し方、その他諸注意が記されている。

くれぐれも浮気などと勘違いされないよう、不自然な立ち居振る舞いはしないように書いておいた。


やりすぎ、演出過剰、映画の見すぎ…… 果たして、そうだろうか?


捨てアカでメールのやり取りをしてすぐ消す。

局留めで手紙を出す。

こっそりと電話で直接話す。

アプリを変える。

携帯を変える。


全て、どこかの誰かに知られないようにする、そのための工夫でしかない。

知られた後で痕跡を辿られないようにする、その方が重要だ。


「あの件には続きがある」と、そう知っているのは、彼の他には私だけ。

もしもの時の備えは、例え滑稽であろうとも、出来得る限りしておく。


なぜそうまでして、危険を冒してまでこんな事を続けるのか……

そう自問する事もある。


答えは簡単だ。


マジホリを終わらせたくないから、だ。


ほら、アイツが歩いてきた。

行くぞ!





五人が火曜日のマジホリ会で集まると、五人それぞれ、思いの他レベルアップして戻ってきているのに各々で驚いていた。

難易度ハードでのスキル振り直しは、レベル-1のペナルティが発生するが、全員が元の数字より高いレベルになっていた。

コウヤが一番高い38レベルで、ユウイとマヤが37、ユウリとカナリが36。

難易度が上昇したと言っても今の所は大した変化は無く、サクサクとプレイは進み、その日のうちにザンダルナ(1ボス)を倒してアクト1が終了する。


難易度よりも、一番大きな変化はユウイのやる気の上昇ぶりだった。


『ユイちゃんちょっとテンション高すぎない?』


『昨日が余程嬉しかったようですので……』


マヤが心配して尋ね、ユウリが応じる。


コウヤのための努力としてマジホリに励みだし、夜更かしして親に怒られている。

ちょっと入れ込みすぎではないかとユウリも心配になっていたが、「自称デート」が大成功だったのだから、察して余りあるところではある。


『アクト2、どうしますの?』


そんな幸せ一杯なユウイに対して、意外と普段と変わらないカナリ。

ユウリは、これだけ妹がベタベタしているのだから、カナリの方も焦りだすのではないかと思っていたのだが、特に動揺している様子もない。

たかが三年生相手、本気でライバルと考えていないのか、あるいは、彼女自身コウヤに対してそこまでの想いを持っていないのか……


『時間ならまだ少しあるし、行けるトコまで行っちまおーぜ!』


一番変わってないのはコウヤだ。相変わらずのマイペース。

そもそもが、コウヤのマジホリ熱のために集まってるようなもの。

こうなるのが当たり前なのかもしれない。


『目指せインフェルノ、ですからね。付き合いますよ。

お姉さんは大丈夫ですか? 試験が近いと言っていましたが』


『いいのいいの。大丈夫。あのバカと違って、やることはやってるから』


『聞こえてるぞー!』


マヤとの距離も確実に縮まっている。

いい感じじゃないか。


ユウリもユウリで、コウヤに振り回されつつ、ゲームを満喫している。

少なくとも、今の所はハッピーなマジホリライフが続いていた。





「うっわ、何これ、めっちゃ伸びてる」


マヤは、以前立てて失敗したとばかり思っていた新人募集スレッドが予想外の盛り上がりを見せている事にようやく気付いていた。

めぼしい動きが無い「虚無」事件の方にコウヤ達の関心も薄れ始め、あまり掲示板の話も出てこなくなっていたため、すっかり気付くのが遅れてしまっていた。


自分たち以外にも新たにマジホリを始めた者もいれば、サブキャラを育て始めた者の仲間募集も行なわれていて、新人育成情報が色々と載せられている。


(でも…… これは……)


いかにもコウヤが嫌いそうな裏技的なテクニックが数多く、これは見せない方がいいな、とマヤは判断。

このスレッドの事はこのまま黙っている事にする。


それに、こういう所で女子とバレるとオッサン達が目の色を変えて寄ってくるのも分かっている。

ボイチャプレイを始めた今、新たに仲間を募集する事は無い。せっかく楽しいマジホリ会が続いているのだから、今の関係は極力壊したくない。

掲示板で下手なことを書き込む危険を冒す事もないだろう。ああ見えてお嬢様も迂闊な所が多いし、お子様のユウイの方は尚更だ。

可愛い女子二人に悪い虫が寄ってこないようにしなければ。


と、マヤは気付いて自嘲する。

女子は三人だよな、と。


他人の心配ばかりしていないで、自分も何か前に進めるべきなのだろうか?

いや、別にそんな事は大して望んじゃいない。

今は、このままがいい。

このままが心地良いのだ。









「好き好きレベル」は、一位ユウイ、二位カナリ、三位ユウリ、四位マヤ、五位コウヤ、と言った具合です。

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