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46:レベルアップ

ユウイの誕生日を間近に控えたコウヤ達、虚無との戦いを続けるマサムネ達、今それぞれの胸にある想いとは……

46:レベルアップ



コウヤ、ユウリ、カナリの三人は、小学五年生。

三年生であるユウイの誕生会に出席するのは、本来ちょっとおかしい事なのだが、本人たっての願いでもあり、招きに応じる事にした。

マヤだけは流石に「兄の友達の姉の中学二年生」が同席する訳にはいかないだろうと辞退していたが、協力して一つのゲームをクリアした仲間達に祝って貰えるというのは、ユウイにとって二重に嬉しい事なのだ。

まあ、本当にユウイが来て欲しいのはコウヤ一人だけなのだが。


ユウイがコウヤに好意を寄せている事は周知の事実であり、彼女のクラスメイト達にも有名だ。

それが、子供らしく年上のお兄さんに憧れているだけなのか、それ以上の感情があるのかは、本人にもまだ分かっていない事だろう。

コウヤ自身も、慕われて悪い気はしていないが、それを恋愛であるとは思っていない。

一緒に「マジホリ」を遊ぶようになるまでは名前で呼ぶ事もせず、ただ「イモウト」と呼ぶばかりだった。


ユウリも、内心では憧れのマヤさんにも妹の誕生会に来てほしかったのだが、彼は妹と違って、自分の願いを口にするのが苦手だ。

「来なくてもいいのに」と思う相手にも、本音をぶつける事はできない。


カナリが招待に応じたのは、いささかユウリにとって予想外のことだった。

彼女にとってユウイは、「成績を争うライバルの妹」でしかなかったはずなのだが、ここの所マジホリのプレイを通じてすっかり「仲間」になってしまっている。

ユウリには、この急激な変化の理由も分かっている。

どうやら、今まで毛嫌いしていたコウヤに対して、カナリは本気で恋心を抱いているらしい。

妹とコウヤをくっつけたい兄としては、お邪魔虫でしかないのだが……


ゲームと言うのは不思議なものだ。

始めは厄介な闖入者としか思っていなかったのに、共に連携を組んで戦ううち、不思議と嫌悪は消えていた。

ぎこちない対応ばかりだったカナリも、よそよそしさのあったユウリも、今ではすっかり「友達」になっている。


本来こうでは無かった五人が、マジカルホーリーストレングスというゲームを通じて、繋がっている。

これは、前向きで遠慮のない、コウヤの明るさが生み出した結果なのだろう。


無論、マジホリがよく出来た名作オンラインRPGだった、という点も大きい。

楽しいゲームは、楽しい時間と、楽しい思い出を作る。

ゲームとは、決して時間を無駄にするだけの物ではないはずだ。





長年マジホリを愛好し、延々プレイし続けて来た熟練プレイヤー達。

そのトップクラスのプレイヤーが揃っても倒せない、謎の「隠しボス」が存在する。

発売から15年を越えた今になって、MODサーバー内に密かに実装されたと思われる、謎の存在、「虚無」。

あまりにも強力すぎ、倒せるかどうかも分からない理不尽な存在に、過疎り続けていたマジホリ界隈がにわかに活気付き始めていた。

と、言っても、200人程度だった現役プレイヤーが50人増えたかどうか、と言った所でしかなかったが……


それでも、すっかり寂れていた掲示板にも活気が戻り、引退していた者が改めてプレイを再開したり、完全新規のプレイヤーが参入してきたりもしている。

そういった者達の間では、盛り上がりが高まって来ているのだ。


だが……


肝心のトップクラスのプレイヤー達はそうも行かない。

「虚無」の存在そのものが、彼らのプレイ環境自体を破壊し続けていた。


全ての攻撃がダメージ0になる。

触れるだけでキャラデータが削除される。

地下から地上に向け、200階ダンジョンをゆっくりと進み、登って来る。

通った後の階段は削除され、そこから下のダンジョンには行けなくなる。


歴戦の猛者が集まって、たった一つ出せた成果と言えば、足止め方法の発見だけ。

次第に虚無に挑む者達の精神的疲労が溜まっていき、当初は謎に挑むべく高い士気で結束していた彼らの中に、嫌な空気が漂い始めていた。


こんな時、真面目で、馬鹿丁寧で、仲間思いで、ひたすら前向きだった、カベがいてくれたら……

現状トッププレイヤーであるムラマサは、「虚無」にキャラを削除されてから以降、ゲームに戻ってこない友人の心配をしていた。


キツネ、ブッチー、山田マン、と言ったトップランカーが顔を揃えてはいるものの、何の打開策を見い出せないでいる。

何か、何か一つでもいい。虚無を倒すための光明となる、何かが欲しい。

士気を高め、前向きになれる、何かが……


その日も、ムラマサ達は何の解決策も持たないまま、足止め工作だけを目的として淡々とダンジョンを降りていった。

ダンジョンの180階台。

ムラマサにとっては最早脅威ではない現場ではあったが、触れるだけでデータロストする恐怖が存在する以上、緊張を絶やす訳にはいかない。

張り詰めた精神状態のまま、ザコを狩り、ボスを倒し、仲間を守る。

淡々とやるべき事をこなしていた、その時


ムラマサ、レベルアップ。

レベル790となる。


一体何日ぶりの事だろうか。一ヶ月は経っているかもしれない。

ここまで来ると、レベルを一つ上げるだけでも途方もない時間が必要となるのだ。

パーティーの仲間達が口々に祝福の言葉を述べる。仲の悪いブッチーまでもが、だ。

それほどに、ここにいる誰もが皆、この+1の重みを知っている。


レベルアップで得たポーナスをどの能力値に割り振るか、皆が悩んで案を出し始める。


(久しぶりだな、この感覚……)


油断すればザコ相手でもやられかねない危険なダンジョンにいると言うのに、皆棒立ちで雑談に興じている。

たった一つ、レベルが上がっただけだと言うのに……


とっくにサービスが終了済みのこのゲームを、MODサーバーに来てまで続けている連中だ。

皆、ハクスラの、RPGの楽しさに魅入られたゲーム馬鹿ばかりだ。

みんな、このゲームが好きなんだ。


(だから、守らなきゃな…… このゲームを)


たった一つのレベルアップだが、効果はステータス以上に大きかった。

気合は、入れ直された。





章立て機能導入>第二章一回目、という事で総集編的に全体を振り返る構成にしてみました。

それと、重要なお知らせが一つ……


★★※※※※ ユウイの年齢設定が変更されました ※※※※★★

9歳から誕生日を経て10歳になる、となると、学年が三年生ではなくなってしまいます。

今さらコウヤと学年が一つしか変わらない四年生へと設定変更してしまうと、幼さというキャラの持ち味が変わってきてしまうため、過去分の描写を変更し、年齢を8歳に変更。

誕生日を経て9歳になる、という形になります。

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