ぼうけんのしょがきえました
短編で書いてたやつです。
『* ぼうけんの書がきえました』
「…うわーコイツついにやったよ」「全くセーブする素振りなかったもんな」「もっかい旅出るこっちの身にもなれよ」「復活の呪文メモしないからじゃん」「しっ、お前らアイツが電源切るまで待て」
『* ゲームをしゅうりょうします。おつかれさまでした!』
「…行った?」「行った行った」「アイツ絶対キレてたよな」「分かる」「お前らマジでうるさいな…」
『* キャラクターの皆様、大変申し訳ございません。プレイヤーがデータを消滅させてしまいましたので、次の起動には各自の初期の持ち場で待機してください。それまではいつも通り、ご自由に行動していただいて結構です。何卒よろしくお願いします。』
「はーい」
ここは、「ドラゴンダンジョン」というRPGの世界。何やら、プレイヤーがデータを消してしまったようです。
「ねーレインー。一緒に教会行かなーい?」
「行かない。てかお前闇魔法使いだろ。教会行くの自殺と一緒じゃね?」
「そんなことないよ〜。レインが勇者のくせに教会行かないから誘ってるんだよー」
「はいはい有難い有難い」
「あーっ、どこ行くの!?…ああもう。次は故郷村で待機だからねー!?」
…相変わらず声のでかい奴め。教会とか余計なお世話だっての。
この世界では、ゲームの電源が切れた後、キャラクターは自由に生活することができる。きちんと教会へ行く闇魔法使いに、バニークラブへ行く僧侶、引きこもる戦士に、ボランティアが趣味の盗人。そして、魔王城へ遊びに行く勇者だっている。…俺のことだな。
プレイヤーに操られてる間は主人公だから喋れねえんだよなぁ。この時間が至福だ。
「あのー、魔王ルシファーに会いに来たんだけど」
見張りのスライムに声をかけると、普段の戦闘とは裏腹に、にこやかに対応してくれた。
「承知しました。お仲間が一緒でないということは、宅飲みでございますね。こちらの書類にハンコをお願いします。」
「はい。これで良い?」
「確かに受け取りました。楽しんでください。」
魔王城は相変わらずトラップだらけだった。道も迷路のようで分かりづらい。攻略本なけりゃ進めねえぞこれ。
「おーい、ルフー!!来たぞー!!いるかー?」
叫ぶと同時に、俺は魔王の間へワープした。
「よく来たレイン。久方ぶりだな」
「よぉー久しぶり。前言ってた度数97の酒持ってきたぞ」
「えっマジか。ちょ、飲みたいから人間態なるわ」
普段はしかめつらしい話し方をする魔王も、オフの時はめっちゃ普通に若者言葉を使う。威厳もクソもないな。
そういえばこいつの人間態って相当レアだった気ぃするんだが…。
「なあ思ったんだけどさ、その人間態ってよく考えたらレア形態じゃね?そんなホイホイ出してええのん?」
「え?竜の姿のままじゃ味感じんしとんでもない量の酒要るよ?デメリットしかねえじゃん」
た、確かに…。
「あ、てかどう?97度の酒」
「うーん。でもやっぱ薄いかなぁ。ギリ酔えるかどうかくらい」
「まじかよお前。俺こんなん飲んだら秒でぶっ倒れるぞ」
「いやーこう見えても魔王なもんで」
「伊達に最強としてプログラムされてないってか?引くわぁ」
お互い一旦黙って酒を仰ぐ。中々飲めない酒、うめぇー。
「なあ、てかさ、あのプレイヤー廃人すぎん?」
「思った。俺この前15時間連続で操られたで」
「ヤバすぎ」
「その割にレベル上がらんかったし」
「僕めっちゃ暇だったんよねー。だって全然僕のこと倒す気ないし城までたどり着いてくんないし」
「俺も地獄だったわぁ。何回ゴールデンスライム倒せば気が済むんだって話」
「……。」
「………。」
「なー次いつ起動されると思う?」
「えー、俺は明日だと思う。お前は?」
「いやデータ全ロスのショックはデカいと思うし1ヶ月は空くと思う」
「いやそれはないね」
「ないかぁ」
『* キャラクターの皆様。プレイヤーが機器の電源を入れました。各自、ゲームの起動までに持ち場へお戻りください。』
「はぁーアイツメンタル強すぎだろ。早すぎる」
「え、ちょお前早く故郷村戻りな?勇者in魔王城スタートはさすがにまずい」
「あぁうんそうする。お前も竜に戻れよ?」
「分かってるって」
「んじゃまた」
「はいはーい」
『* あたらしくぼうけんの書を作りますか?』
……。
『* 2ばんのファイルに、さくせいしました』
『* ぼうけんをはじめますか?』
……。
『* それでは、いってらっしゃい』
「ここは、かつて魔王が支配した…」
スキップ
「おお、勇者レインよ…」
スキップ
「気を付けて!私も着いて…」
スキップ
(コイツめっちゃスキップするじゃねえか。場面転換大変だからやめてくんねえかな)
「私はサナ。魔法使いよ。あなたの旅に同行できてうれしいわ!腕ならしにさっそく、あのスライムを倒してみない?」
A連打
「まあすごい!これならきっと、この先も大丈夫ね!」
(絶対コイツヤケクソでプレイしてんじゃねえか。腕痛いっての。てか闇魔法使いになるまえのこいつの演技、白々しすぎてもはや笑いこらえてるじゃねえか。頼むから最後まで耐えてくれよ)
『* …を倒した!』『* …を倒した!』『* …を倒した!』………。
『* レベルが25になった!』
「まあレイン!いつの間にかこんなに強くなって、私とっても心強いわ!…あっ、あんなところに、町があるわ!行ってみましょう!」
ZR長押し、B連打
(いやいやいやなんだコイツ、バグ技でダッシュすんじゃねえよ。ほら見ろよ、俺の体勢がヤバすぎてサナが笑いこらえてんじゃねえか。ほんでよくついてこれるな)
〜ファースの町〜
「もしやあなたは、伝説の勇者…様?……おっ、お待ちしておりました。よっ…よろしければ俺も、勇者パーティーに入れてはいただけませんでしょうか」
(おい戦士ィ!笑うんじゃねえよこっちだって真面目なんだよ。……ん?あぁ良かった。文字だから緊張してるだけみたいになってるわ)
「プッ」
(おいサナあからさまに笑うな)
『* 戦士 ライトをなかまにしますか?』
……。
『* ライトがなかまになった!』
「勇者に仲間が増え…」
スキップ
………。
「閃光斬り!」
「メラル!」
ZR長押し、Y連打
「覇王拳!」
(バグ技で必殺技出すんじゃねえよ。このレベルじゃこっちの身体が持たねえって)
『* キングゴールデンスライムをたおした!』
『* レベルが40になった!』
「おお、最強の勇者様とお見受け…」
スキップ
『* ぼうけんをおわりますか?』
……。
『ゲームをしゅうりょうします。おつかれさまでした!』
「…フッ」
「ハー!面白かったっ…マジで…バグ走りのレインマジで面白かった…」
「笑いすぎだろ」
「だっ、だって…」
「あー俺帰るわ」
「おう、お疲れ、ライト」
「うーっす」
こりゃ明日のプレイも不安だ。
次回もお楽しみに。




