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【コミカライズ連載中】魔王城の絶品社食、作っているのは生贄です!  作者: 秋色mai @魔王城コミカライズ連載中!
一章

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62/124

62. 魔王城の絶品社食


「……っじ、自由って魔王あんたそれ解雇ってことじゃない! 私、今この瞬間から無職ってことになるんだけど!?」


 思わず叫ぶと、目を見開いた魔王。勢い余って呼び捨てしたのは後で謝るけど。驚きたいのはこっちよ。立て直す約束云々どころか、まさかこんな恐ろしいことを。

 この世の何よりも無職の方が怖いのよ。前世は就職先が燃えたショックで死んだほどの就職難民としては。

 たとえ失業手当もらえたって嫌だ。無理。


「無しょっ……だが、お前は人間で生贄は必要なくな」

「知ったこっちゃないわよ!」


 人間だとか魔族だとかどうでもいい。

 食堂だって、完全には立て直せてない。まだまだやりたいことがたくさんある。


「私は、私のごはんをおいしく食べてくれる人たちと一緒にいたいの! その中には魔王も含まれてるんだからね!」


 私の料理を一番最初に食べたくせに。おいしいって言ったくせに。ただ死ぬのが怖かっただけの私に、生きる目標を与えちゃったくせに。責任取りなさいよ。


「帰って契約し直してちょうだい!」


 ギロリと睨む私と、たじろぐ魔王。あの頃と立場が逆転した気分だ。

 魔王は数回瞬きをして、


「ふっ。あっはははは」


 笑い出した。少年のように、お腹を抱えて。

 何笑ってんのよ、こちとら食われるのと同じくらいの危機に遭ってるのに。墓石の下かお空の上にいらっしゃる魔王のご両親見てます? 人に死刑宣告しといて笑ってますよ、息子さん。


「自分から契約しろと迫る人間なんていないと思うんだが。……そうだな、お前はそういう奴だ」


 魔王はひとしきり笑った後、眉と目じりを下げて、手を差し出す。すまなかったとかなんとか言って。


「魔王城に帰ろう、エリザベス」

「ええ、もちろん」


 すぐに手を取って、魔法陣の上に乗った。


         *


 ボーン、ボーンと壁掛け時計が十二時を教えてくれれば、戦いの始まり。

 配膳室には朝から頑張って作った料理が並び、それぞれの武器……私の場合はトングを持ってお客さんを待ち構える。

 今日も一番乗りは竜のおじいさんだ。今日は日替わりの怪鳥の唐揚げ定食らしい。


「この間は、ルシウスが世話になったようだな」


 配膳カウンターにトレーを置いてそう言うおじいさん。

 ルシウスって誰? でも聞き覚えがあるような気も……。


「先代魔王として礼を言う。おかげで早く治ったようだ」


 魔王。そうそう確か魔王がそんな名前で……。

 ん? 先代?


「え、えええぇ!?」


 竜の、おじいさんが? あのマチルダさんの対応の違いはそれ??

 割と長く、ほぼ毎日のように配膳してきたけど、全然気づかなかった。驚きながらも唐揚げと千切りキャベツを載せる。


「誰も教えてくれなかった……」

「私は隠居中だから、皆気を遣ったんだろう」


 それだけ言うと、おじいさんは唐揚げ定食と一緒にさっさと定位置についてしまった。まさかそんな……。いや、思い返してみれば全然おかしくないかも。


「エリザベス様ー! オイラも! オイラも唐揚げ定食!」

「えっ。あーはいはい」


 けど、ゆっくり驚いている暇もなく二番手のジョンやゴーレム君、午前の訓練終わりのオーガのお兄さんたちマッチョ集団がやってくる。しばらくすると、お弁当派じゃない研究員さん達もやってきて。


「エリザベス、日替わりBセットの生姜焼き定食を頼む」

「オレは大盛りで頼むゼェ!」


 ダァンと食券を叩きつけるオルトロス。今日も尻尾がモッフモッフと揺れていて、隣のスライムが毛だらけになっている。


「オルトロスちゃん達は今日も元気ねぇ。私は今日は親子丼なのよぉ」


 一方優雅に現れたバジリスクは最近よくガッツリ系を頼んでは親の仇かのようにかっこんでいたり。吹っ切れたのかはよくわかんないけど。


「ほら、唐揚げ追加、揚がったわよん♡」


 ジュリエットの野太くも語尾にハートのついた声と共に、ランチタイムは佳境に入る。


「Aの日替わり麺を、頼ム。まだあるのなら、大盛デ」


 どうにか乗り越えた頃にはギガンテスがやってきた。今日はラーメンの日じゃないけど、怪鳥の卵のカルボナーラがある。パスタは調整が効くからありがたい。ギガンテスは嬉しそうに、私の上半身くらいある大きさのトレーを席に持って行った。

 今日はグリフォンに何を持って行ってあげようかしら。昨日、


『牢屋で食べる食事にパスタは難しいでしょうね。特に明日の日替わりBの冥界牛のボロネーゼなど……』


 なんて言っていたからパスタが食べたいのかも。聖女のその後やら魔王が何をしているのかばっかり聞いてきた頃に比べれば、可愛げがある。


「ついでに魔王にも持って行ってあげようかしら」


 大きなお鍋に大きなお皿。たくさん食べてくれる魔族たち。私は食べられる側じゃなく、食べさせる側として厨房に立つ。そんな最高な職場。



「っエリザベス様ー!!」

「なによジョン。あんた持ち場に戻ったんじゃ……」

「オイラのつまみ食いセカンドライフが大変なんだよ!! さ、さっき財務部の前で聞いたんだけど、食堂の予算? ってやつが減らされるかもって!」

「え?」


 ……一難去ってまた一難。まだまだ問題は解決しない。

 魔王城の絶品社食、作っているのは”元“生贄です。


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― 新着の感想 ―
一章お疲れ様でした。 (じつは感想で一章終了を知りましたw) とてもテンポが良く、サクッと読めて爽快でした。 2章も頑張って下さい。
とても面白かった 斬新な悪役令嬢
第一章完結、お疲れ様でした! コミカライズや第二章の予定があるとのこと。 楽しみにお待ちしていますね。 エリザベスと魔王、それから個性豊かな面々に、会える日を楽しみにしています!
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