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91・おっさん、膝枕をしてもらう

 復習になるが、ポイズンベアとはかなり凶悪なモンスターの部類に入り、その力はBランク冒険者アーロンさんの手をもってでも、倒すことは不可能だろう。

 一体で簡単に木をなぎ倒されるパワーもさることながら、厄介なのは触れるだけで相手を『猛毒』状態にしてしまうことである。

 猛毒状態となってしまった人は、見る見るうちに体力が減っていきやがて息を引き取る。


 そんなポイズンベアが現れたものだから、


「ど、どどどどどうしよう? アーロンさんはどこにいる?」

「バカ! アーロンさんでもポイズンベアなんかに勝てねえよっ」

「じゃあどうするっ? このまま、全滅するのを見ているだけか?」


 ああぁ。

 お手伝いさん達が慌てている。


「ぐぎゃ、ぐぎゃ?」


 あたふたと慌てふためいている人間(お手伝いさん)を見て、ポイズンは不思議そうに首を傾げた。


 さて……復習の続きだ。

 そんな凶悪なモンスターであるポイズンベアであるが、ひょんなことから『ポイズン(愛称)』として俺達の仲間になっている。


「ぐぎゃ、ぐぎゃ!」


 おっ、ポイズンが次から次へと伐採された木を持ち上げている。

 相変わらず凄いパワーだ。


「嬉しいのか……こいつ?」


 十本まとめて木を持ち上げたポイズンを見て、俺は微笑ましい気持ちになった。

 きっと、頑張って市壁を築いている俺達を見て、


『ボクも手伝わなきゃ!』


 と登場してくれたのだろう。


 手伝ってくれるのは有り難いことだ。

 ポイズンは間違いなく俺達の力となるのだから。


 一方、いつもより張り切って動いているものだから、


「わわわ、終わりだ! 明日、モンスターが襲撃する前に、イノイックは終わっちまう!」

「オレ……この戦いが終わったら結婚するんだ」


 ポイズンを見て腰を抜かしている者、死亡フラグをせっせと立てているものもいた。

 ……そろそろ安心させてやるか。


「おいっ、ポイズン」


 ポイズンを呼びかけると、顔をこちらに向けた。

 俺はゆっくりと「おかしら! 危ないっ!」うるさいな。ポイズンに近寄「いくらおかしらでも、ポイズンには勝てませんっ」勝つとか負けるとかじゃないから。改めて——近寄って、見上げてこう口を開いた。


「手伝ってくれるのは嬉しいことだ」

「ぐぎゃ?」

「だが、みんなが怖がっているじゃないか。それにコーヒーも飲んでないから、体が紫色のままだ」

「く、くぅん……」

「だから、な。取りあえず、みんなに自己紹介をしないとな」


 俺はお手伝いさんの方を振り返り、


「みんな! 安心してくれ。このポイズンベアは……えーっと、とにかく良いポイズンベアなんだ! 俺の仲間でもある。だから安心して一緒に作業をしよう!」


 と呼びかけた。


「ぐぎゃ、ぐぎゃ!」


 ポイズンも照れたようにして頭を下げた。

 すると——お手伝いさんは最初は戸惑いが大きかったものの、徐々に状況を理解し始めていった。


「良いポイズンベア? そんなのがいるのか?」

「バ、バカ! そういうことじゃねえよ。きっと、おかしらはモンスターを従わせる力もあるんだ」

「な、なんだと? だったら、最強じゃねえか。本来敵であるはずのモンスターを従わせるなんて……」

「無敵すぎる。やはり、おかしらはおかしらだったんだ」


 ……いや、正しくは理解してねえな。


「まあいっか……」


 頭を掻く。

 辺りで聞こえる声を拾うに、どうやら俺は『どんなモンスターをも従わせることが出来る力を持つ』と思われたみたいだが、今更誤解を解いても仕方ないので作業を再開する。


「じゃあポイズン。ガンガン木を切っていくから、ガンガン持っていってくれ」

「ぐぎゃ、ぐぎゃ!」


 ポイズンが嬉しそうに鳴き、そして胸を張った。


「ああ、そうそう。あっちの大きい石も持っていってくれないか?」

「ぐぎゃ、ぐぎゃ!」


 ミドリちゃんがいないと、なんて言ってるか分からないが「お任せください! ご主人様!」とか言ってるんだろう。

 ポイズンの嬉々とした表情を見れば、俺でも分かるのだ。


「お、おかしら! 明日の戦いが終わったら、あっしを弟子にしてくださいませぇ!」


 キラキラとした瞳を向けながら、お手伝いさんの一人が俺にこう言ってきた。


「いや、弟子は取ってないから」

「無理を承知です! お願いします!」「あっしも!」「オレも!」「お前だけずるいぞ!」


 お手伝いさんが俺を囲み、自分が自分がと声を出した。


「ちょ、ちょっと……」


 押されて、体がお手伝いさんを密着して息苦しささえも感じる。


 いや、これが美少女とかだったら嬉しいよ?

 おっさんが女の子に囲まれて、胸とか足とか柔らかい部分でむにゅむにゅされるのは至福の時間だろう。


 でも違うのだ。

 俺と体を密着させてくるのは、筋肉隆々でガタイの良い男達なのだ……。


「押すな押すな!」「師匠が困っているじゃないか!」「そんなこと言って自分だけ先駆けするつもりだな!」「許さねえぞ!」


 俺がかなーり嫌がっているのもお構いなし、お手伝いさん達はさらに体を密着させてくる。

 俺は我慢出来ずに、とうとうこう叫ぶのであった。


「だっぁぁあああああ! 暑苦しいぃぃいいいいい!」




「リネア……」

「ブ、ブルーノさんっ。どうしたんですかっ? すっごいやつれてるみたいですけど?」


 ポイズンの件も片付いて、俺はへとへとになってリネア達のところへ戻ってきた。

 どうやら、こっちはこっちで順調らしい。


「おので切りまくるのだー!」


 あっちの方では、ドラコが張り切って斧をブンブン振るっている。


「ドラコは……元気だな……」

「は、はいっ。そんなことより、ブルーノさん。今はあなたがやつれてるのを見て、私は心配なんですが?」

「とんでもないことが起こったんだ……男共にもふもふされるような事態がな……」

「男……もふもふ?」


 リネアが首を傾げる。

 ああ! そんなリネアの姿を見てたら、我慢出来なくなってきた!


「リネア。そこに正座してくれないか?」

「えっ? は、はいっ」


 下に草が生えていて、柔らかい地面の上でリネアを正座させる。


 今日のリネアは白のワンピース姿だ。

 白い生足、そして太ももが光り輝いているように見えた。


「リ、リネア……失礼するぞっ!」

「へ、へえぇ?」


 戸惑うリネアであったが、俺はもう我慢出来ないのだ。

 俺は寝転がって、そのままリネアの太ももに頭をダイブ。

 いわゆる『膝枕』というものを、リネアにしてもらった。


「ふう、極楽極楽……」


 リネアの柔らかい足の感覚が伝わってきて、まるで温泉に入っているかのような幸福感を味わう。


「は、はあ……でも、これでブルーノさんが元気になるなら私は良いですけど……」


 リネアが頬に手を当て、困り顔で言った。


 他からジロジロ見られてるような視線を感じるが、そんなのお構いなしだ!

 さっき、男共に密着されて負ったダメージをここで回復しなければ!


 ああ、こうしてたら眠くなってきたな……。

 その後、至福の膝枕を得た俺は十五分程昼寝をしてしまうのであった。

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