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77・おっさん、台所を夢見る

 家造り二日目。


「おお! 大体の形が出来てきたな!」


 家建てるマンによって、着々と木材が組み立てられていく。

 正直、細かいところは俺にもよく分からない。


 ただ……俺は木を切って、角材にして家建てるマンに渡しているだけ。

 たまに角材を持って、家建てるマンの指示で組み立てたりしているわけだが。

 昔から手先は器用であったが——さすがに、家ともなると大きすぎて知識が追いつかないのが事実だ。


「中に入ってみよう」

「とうとう家が完成するのだな。感慨深いのだー!」

「おいおい、まだ完成までは遠いぞ」


 後三日くらいかかるだろうか?


 俺は二人を連れて、中に入ってみる。

 まだ木材がむき出しであったり、所々床が張られていなかったり……完成までには程遠い印象であったが、大体の形はしっかり出来ていた。


「建てるマン! 建てるマン!」


 家建てるマンの一人が、俺達は案内してくれる。

 そして俺達が辿り着いたのは、リビングになる——であろう場所であった。


「広いです! ここだったら、ソファーとか可愛い家具とか置けますね」

「走り回れるのだー!」


 リネアが目をキラキラさせ、ドラコが走り回る。


「ドラコ。危険だから走るのを止めろ」


 首根っこを掴んで、ドラコを制止させる。


「むむむ……」

「まだ家は完成していないんだ。床が抜けちまうかもしれないだろ」

「分かったのだ……」


 しょぼーんとドラコは肩を落としていたが、分かってくれたみたいだ。

 うん。聞き分けの良い子に育ってくれそうだ。


 ドラゴン育てもまだ二日目だけどな!


「俺はキッチンが気になるな」


 見るに、まだキッチンらしきものは影も形もないみたいだが……。


「建てるマン!」


 そう思っていたら、とことこと家建てるマンが近寄ってきた。


「ん?」


 紙を広げて、両手で持っている。

 そこには、どうやら部屋の見取り図が書かれているらしい。

 こんなもんまで作ってしまうとは……さすが、家建てるマン!


「建てるマン! 建てるマン!」


 家建てるマンはそのままぴょんぴょんと飛び跳ねるが、「建てるマン」としか言わないのでよく分からない。


《キッチンはどういう配置にするのか、って言ってるのよ》

「おっ、そうだったのか!」


 女神が翻訳してくれたおかげで、家建てるマンの言いたいことが分かった。

 そういや、まだ細かいところは伝えていなかったな。


「そうだな……料理を作っている間にも、みんなの姿が見られるような——そんなキッチンにしたいな」


 リネアとドラコがはしゃいでいる姿を見ながら、俺はフライパンで肉を炒めたり、野菜を切ったりする。

 想像するだけで、のほほんとしていかにもスローライフらしい。

 対面キッチン……っていうんだろうか。


「建てるマン!」


 そう伝えると、家建てるマンはぴょんぴょんと跳ねながらどこかに行ってしまった。


「完成が楽しみだな……」

「私も楽しみです。ブルーノさんとの愛の巣——じゃなくて、広いお家には憧れてましたからね」

「わたしも早く走り回りたいのだー!」

「ドラコよ。完成しても、家の中で走り回るのは禁止だ」

「がーん」

「お外で走りなさい!」


 ドラコはドジなところがあるから、転けて壁に穴を空けてしまいそうだ。

 今のうちからドラゴンの保護者として、しっかりしつけていかなければ!




 外に出ると、森の主——じゃなくて、ミドリちゃんが遊びに来ていた。


「……こんにちは」


 ぺこりと頭を下げる。


「おお、ミドリちゃん。様子を見に来てくれたのか?」

「そう……気になるから」

「だったら歓迎するよ。どうだ? 家の形が出来てきただろ」

「ビックリ」

「ん?」

「昨日から作り始めたんだよね?」

「そうだな」

「なのに、これだけ出来ているなんて……こんなに早く完成しそうになっているのは、私の経験では初めて見る……」


 工事は急ピッチで進められているのだ。

 確かに、俺の常識と照らし合わせてもちょっと早いと思うが、これくらいなら許容範囲内だろう。


「でも……とっても良い感じ。素敵なお家。自然と溶け込み合っている」

「そう言ってもらえたら、嬉しいよ……それでミドリちゃん。木を切りに行こうと思っているんだけど……」


 家建てるマンが働き者のおかげで、いくら角材を作ったとしてもすぐになくなってしまうのだ。

 すぐに補充しなければ。

 もちろん、伐採した後は苗木を植えて育てることも忘れてはいけない。


「うん……それはいいんだけど……」


 ミドリちゃんがもじもじと、なにか言いにくそうにする。


「ん? もしかして、ダメだったのかな?」

「違う……ただ、ちょっと困ったことがあって」


 そう言うミドリちゃんの表情は少し暗かった。


「困ったこと? よかったら、俺に話してくれないかな」


 ミドリちゃんが困っているなら、解決してあげたい。

 自然を破壊してしまった——という負い目もあるしな。


「木が倒れているの」

「え? どういうことだ?」

「朝起きたら、無理矢理木がなぎ倒されているようなところがあって……小鳥や動物達には怪我はないんだけど、悲しんでいる……」

「それは一大事じゃないか」

「うん。多分、モンスターかなにかのせいだと思うけど……」


 どちらにせよ、木をなぎ倒せるくらいのパワーを持ったモンスターだ。

 ミドリちゃんだけでは、危険だろう。


「分かった。俺に任せな」


 ポン、と胸を叩く。


 するとミドリちゃんは、ぱあっと顔を明るくさせて、


「ありがとう……」


 と声を弾ませた。


「じゃあ早速その木がなぎ倒されている場所に行こう」


 不穏な空気を感じながら、俺達はミドリちゃんお後を付いていった。



「……というか森の主も寝るんだな」

「うん。十二時間睡眠は必要」

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