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73・おっさん、カンナで木を削る

 すぱっすぱっすぱっ。


 おっ、面白いように木が切れていくな。

 リネアも同じことを言っていたけど、まるでバターを切るかのような感触だ。


「わたしも切るのだー」

「はいはい。おかーさんと一緒に切りましょうねー」


 リネアがドラコの腕を持って、操るようにして木を切っていく。

 ドラコの手によっても、俺手製の斧を使えば簡単に木を切ることが出来る。


 すぱっすぱっすぱっ。


「それにしても、伐採した木はどうやって持っていくんだろう?」


 細切れにして持っていく方法もあるが、それでも時間はかかるだろう。


「建てるマン! 建てるマン!」


 そんなことを心配していると、どこからともなく家建てるマンが現れる。


「建てるマン!」


 家建てるマンは何人かで伐採した木をひょいと持ち上げ、そのまま小屋のある方へ向かっていった。


「……家建てるマンが持っていってくれる、ということなのか」


 あんな小さくて可愛らしい姿をしているのに、なかなかの力持ちらしい。


「建てるマン!」


 伐採していっている間に、休む間もなく家建てるマンが現れて、木を持って行ってくれている。

 これはなかなか楽だな。

 だが、ここで一つ疑問。


「最初から家建てるマンに木を切ってもらえばいいんじゃ?」

《それはダメよ。家を建てるための素材を手に入れることは、あんた達の仕事。あくまで家建てるマンは素材が出来たから、それを建てるところまで持って行くだけだから》


 融通がきかないらしい。

 まあそれはそれでいいだろう。

 木を伐採してもらうところまで家建てるマンにやってもらったら、DIYって感じがしないからだ。


 えっ、これって俺必要なくね?

 みたいな気分になるし、自分で作ってる気分にならない。


「気を取り直して……どんどん切っていくぞ!」


 すぱっすぱっすぱっ!



 一時間後……。



「こんなもんか」


 あらかた、ここら一帯の木は伐採出来た。


「いっぱい切れましたね」

「わたしも頑張ったのだー!」


 リネアとドラコがタオルで汗を拭いている。

 ちなみに……家建てるマンはあれだけ何本も大きい木を持って行ってるのに、疲れている様子はなかった。


「こうして見ると、まるで別の場所みたいだな」


 木がなくなっているのだ。

 根元部分は残っているのでちょっと違うかもしれないが、まるで原っぱのようになっていた。


「走り回れるのだ!」


 ドラコが両手を広げて、クルクルと回り始める。


「こらこら。そんな風に走り回ってたら、転けるぞ」

「ぎゃふんっ!」


 言わんこっちゃない!

 しかも顔から地面にダイブした。

 鼻が赤くなっていたので、すぐにハイポーションを湧かせて治療してあげた。


「それにしても……」


 リネアが不安そうな表情を作る。


「どうしたんだ?」

「い、いえなんでもありませんっ。私達の新居を造らないといけないですからね。神様も許してくれるでしょう」

「?」


 なにをそんなに不安がっているんだろう。

 それにしても……森に入って、ゆっくり木を切っていく……。


 これぞまさにスローライフ!

 伐採した木の量が多すぎるような気もするが……。


「とにかく、小屋のある方へ戻ろう」


 そう言って、森を後にしようとすると。



 ——森を荒らさないで。



「ん? リネア、なんか言ったか?」

「いや、私はなにも……」

「わたしもなにも言ってないよー?」


 おかしいな。

 さっき、確かに女の子の声が聞こえた気がしたんだが……。


「空耳か」


 そう思って、この時はあまり気にしなかった。

 



 小屋のある方へ行くと、家建てるマンの手によって、着々と家が造られていった。


「おお、凄い!」


 思わず声を上げてしまう。


「建てるマン! 建てるマン!」


 家建てるマンは、そんな声を上げながら、ぴょこんぴょこんと動き回り木材を運んでいる。

 一本の木をノコギリ(のように見える)で、切っていってるのだ。


「見事なものだな」


 木を切る部隊(家建てるマン)に近付き、その完成した角材を見て感嘆かんたんする。


 うん。家とか建てられる時にイメージにあった角材そのままになっている。

 家建てるマンがまさかここまでしてくれるとは。


「俺達も手伝わなきゃな。リネア、ドラコ。そこらへんの石を集めよう」

「任せるのだー!」


 ドラコがきゃっきゃっ言いながら、そこらへんの石を集めてくれる。

 俺はそれを使って、パパッとノコギリを使ってしまう。


「よしリネア、ドラコ。そっちの方を持っててくれよ」


 木の端の方をリネアとドラコが押さえてくれて、俺はノコギリでギコギコとやる。

 やっぱり切れ味がいいノコギリだ。

 普通、角材を作るのに力がいると思うが、まるで料理で包丁を使っているみたいにすぱっと切ることが出来る。

 大根を切るみたいにして、一本の木を細切れにすることが出来た。


 ただこのままでは凸凹でこぼこすぎて、家を造る材料としては不適切だろう。

 なので俺はそこらへんの石を使って、カンナを作った。


「わたし、やってみたいのだー!」

「おっ……そうだな。ドラコでもやれると思うし、やってみるか?」


 出来上がったカンナをドラコに持たせる。


「これでどうすればいいのだ?」

「凸凹な木を平坦にするんだ。ほら、カンナを走らせるようにして」


 カンナを木の上で走らせると、表面が削れまたたく間に平坦になった。


「楽しい!」


 ドラコがはしゃぎながら、カンナを使って木の面を平坦にしていく。

 普通ちょっとやるだけでは、ここまでキレイにならないと思うけど、これも【スローライフ】で作ったカンナだからだろう。


 やがてドラコの手によって、平坦な面が四つある角材が完成した。


「後はこれを家建てるマンに任せよう」

「建てるマン!」


 角材を家建てるマンに渡すと、持っていってくれて家を組み立てる素材として使ってくれた。


「うーん、見た感じだと……家建てるマンでも角材は作れるけど、ちょっとスピードが遅いみたいだな」


 これじゃあ、ドラコがやった方が早い。

 それにしても、木という素材は渡す必要があるのに、角材という素材に関しては家建てるマンでも作ることが出来るのだ。

 角材は木を加工するだけだからかな?

 つまり加工素材は作ってくれる、ということみたいだ。


 それは便利だ。

 今は木を削ったりして角材を作っているだけなのであるが、今後……例えばキッチンとか作る時には、もっと複雑な加工素材が必要になってきそうだし。


「とにかく、ドラコ。この調子で角材をどんどん作っていくぞ!」

「任せるのだー!」


 ギコギコ。

 しゅっしゅっ。


 そんな感じの心地良いリズムを奏でながら、次から次へと角材を仕上げていく。


「あんだけ伐採したのに、もう木がなくなりそうだな」

「そうですね。補充しに行く必要があるんじゃ?」

「よし。もう一回、森に行って木を切りに行こうか」


 今やってる作業の手を止め、森へ向かおうとすると。


「ん? あれは女の子?」


 ——森の方から、緑色の髪をした幼女がこちらに歩いてきた。


 この子、誰だろ?

 迷子かな?


 そんなことを考えていると、緑髪の幼女はおどおどとした口調で、


「……これ以上、木を切らないで」


 と俺達に言った。

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