71・おっさん、家を建てる
「どんな家にしたい?」
二人に希望を聞く。
「走り回れるお家ー!」
「私は広いお風呂がある家がいいです!」
「俺もキッチンが広い方が良いな」
決まった。
とにかく広い自宅を造ろうとしよう。
そうなると、俺が元々住んでいる小屋の隣に建てるとするか。
小屋のあるところは、農園が作れるくらいには広いからな。
スペース的には十分のはずだ。
小屋を建て壊すことも考えたが、それは保留にすることにした。
短い間であるが、ここに住んでいて愛着が生まれたのだ。
新しい家が建ったら来ることは少なくなると思うが、倉庫にでも使えば十分だろう。
「とはいっても、家ってどうやって造ればいいんだろう……」
頭を悩ます。
困った時は……。
「(おい、女神)」
《なによ》
女神を呼びかけると、すぐに返事が返ってきた。
「(スキルで家を造ることって出来ないのかな?)」
《相変わらず、スキルを無駄遣いしているわね……まあでも、そういう手作りでなにかを造るっていうのもスローライフの醍醐味だからね。出来るわよ》
【スローライフ】様々だ。
いつものパターンでは……。
「(家が建って欲しい、と願ったら勝手に家が完成しているとか?)」
《それじゃあ、スローライフにならないでしょ。それはまた建築スキルとか、また別の能力が必要になってくるから》
確かに。
DIYをしようとしているのに、なにもせずに家が完成したら本末転倒だ。
やっぱり自分で造りたい。
農業の時といい、今更な気もするが……。
「(じゃあどうすれば?)」
《とりあえず『家を建てたい』と願いなさい》
建てたい……建てたい……。
そう頭の中で、フレーズを反芻すると。
「おっ?」
ポンッ。
そんな、なにかが小爆発を起こしたような音が聞こえて、そこに小人が出現した。
「建てるマン! 建てるマン!」
そいつは、そんなことを声にして小さく飛び跳ねている。
大きさ的には三十センチくらいだろうか。
大きな卵に手足が生えているような外見で、顔にあたる部分につぶらな瞳が二つ開かれている。
「わあ! なんですか、これ! 可愛すぎなんですけど!」
リネアが興奮したように屈み、その小人を抱え上げる。
「建てるマン! 建てるマン!」
リネアの腕の中で、小人はただそうやって連呼している。
「(これは?)」
《その小人があなたの手となり足となり働くわ。そんな体だけど、重いものを持つことも出来るし、家を建てるためにせっせと働くわ》
「(成る程。ヘルパーみたいなものか)」
《そうよ。素材さえ、そいつに与えておけば勝手に家を建てるために働いてくれるわ……名付けて家建てるマン!》
かなりそのままのネーミングだな。
小人……家建てるマンに対し、ドラコも近付いてはしゃいでいる。
「(一人しか出せないってことないよな)」
《もちろんよ》
「(……よし!)」
家を建てたい!
ポンッ! ポンッ! ポンッ!
続けて家建てるマンが九人現れた。
「(人数の制限みたいなものは?)」
《うーん、そういう細かいこと考えたことないから、多分ないと思うわ》
かなり適当だな、おい!
だが、家建てるマンはこれからすることの心強い相棒となってくれるだろう。
「家建てるマン。家を建てるためには、まずはなにをすればいい?」
家建てるマンの一人にそう質問する。
「建てるマン! 建てるマン!」
すると、家建てるマンは近くの木に近付いて、その幹をポンポンと叩いた。
「木材が必要になる、ってことなのか?」
「建てるマン!」
家建てるマンが何度も頷く。
「よし……リネア、ドラコ。木を切りに行くから、手伝ってくれ」
「「はい!」」




