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68・おっさん、元の生活に戻る

「本当に行くのか?」


 巨大モグラ騒動を終えて、しばらくしてから。

 突然ベラミが、



『あなたをパーティーに戻すことは諦めたわ。アタシは一人旅に出るから』



 と言って、荷物をまとめ出したのだ。


「そんなに慌てなくて出て行かなくてもいいんじゃないか?」


 止めても、ベラミは聞きやしない。

 分かっていたことだ。

 ベラミは自分の決めたことは貫くのだから。


 というわけで。

 俺とリネア、ディックとマリーちゃんはベラミを見送るために街の出口まで足を運んでいた。


「こんなに来てくれなくてもいいのに」


 ベラミがいつもの調子で言う。


「それにしても、どうして一人旅に出るって言い出したんだ?」

「それは……あなたには関係ないでしょ!」


 とげとげしい言い方。


「ベ、ベラミさん! 最後までそういう態度はいけないと思いますっ」


 リネアが怒って前に出たが「まあまあ」となだめる。


「ジェイクのところには戻らないのか」

「うーん、気が向いたら戻るかもね。あなたが戻らなかったら、また不味い飯食べることになると思うから……」

「また帰ってきたくなったら、いつでも帰ってこい。俺はいつでもここにいるから」

「……そう」


 とベラミは背を向ける。


「最後に一つだけ良いか?」

「なによ」

「どうしてツインテール止めたんだ?」


 ベラミは特徴的なツインテールを解いていた。

 元々キレイな子であるが、そうすることによって浮世うきよ離れした美しさが際立っている。


「……あなたには関係ないでしょ」


 ……はあ。

 最後までこういう感じだ。


「またー!」

「リネア、良いから」


 だってベラミは——。


「最後に一つだけ忠告しといてあげるわ。この街で……なにか良からぬことが起こっているわ」

「良からぬこと?」

「ええ。邪悪な魔力が感じ取れる。アタシが分かるのはここまで」


 良からぬこと……。

 巨大モグラの件といい、強力なモンスターが多く出現しているとか言ってたな。

 大事だいじに至らなかったら良いのだが。


「じゃあね」


 そう言って、ベラミは手を振って街から離れていった。


「ベラミのお姉ちゃん! いきなりバイバイなんて寂しいの!」

「あんまり話していなかったが……オレはあんまり悪いヤツだとは思えないな」

「私は超超超悪いヤツだと思っています!」


 ぷんすかリネアが怒っている。

 最後までリネアの気分を悪くしたまま、ベラミは去っていってしまったか……。


 そんなことを思っていると。


「ブルーノ!」


 街から離れていくベラミがくるっとこちらを振り返って、なにかを投げてきた。


「おっとと。いきなりなんだ? これは……魔石?」


 どうして魔石なんて放り投げてきたんだ。


「それを——夜にでも家の天井に照らしてみなさい!」


 ベラミが背を向けたまま、そう声を張り上げた。

 そして歩みを再開する。

 一体あいつはなんのつもりなんだろうか……。


「ベラミのお姉ちゃん。なんか恥ずかしそうだった」

「ああ、俺もそう思った」

「え?」


 リネアが声を漏らす。


「リネア。夜にでも一緒に魔石を使ってみようぜ」

「は、はいっ」


 ——どんどん小さくなっていくベラミを、俺達は最後まで見送っていた。


 ◆ ◆


 ——そして夜になった。


「ベラミさん……一体、なんの魔石を置いていったんでしょうか?」


 訝しむような視線でリネアが魔石を見ている。

 まあリネアのベラミに対する印象はあまり良くないみたいだからな。

 警戒するのも無理はない。


「いや……攻撃魔法とか防御魔法とか……そういう魔石じゃないと思う」

「どうしてそう思うんですか?」

「分かるんだよ。幼馴染みだからな」


 俺は部屋の中央に魔石を置いた。

 そして右手を置いて、魔力を込める。

 すると——。


「文字?」


 部屋の天井に光の文字が浮かび上がった。

 そこにはこう書かれている。



『ブルーノへ。

 迷惑かけてごめんなさい。

 初心を思い出したわ。ブルーノはアタシが困っていたら、いつも助けてくれるもんね。

 アタシはもっと世界を見てくる。

 今回の件で、アタシがいかにまだ『子ども』だったのか分かったわ。

 もっともっと女を磨いて、素敵なレディーになってあなたの前に戻ってくるからね。

 この後にはアタシ達が生まれ育った村の映像が、光のアートとなって流れる。

 今日くらいはそのエルフの子とロマンティックな雰囲気にでもなってなさい。

 あなたの幼馴染みベラミより』



「ベラミさん……こんなので謝らないで、直に謝ればいいのに」


 リネアがぼそっと呟く。


「まあ、あいつの性格上それは無理だろうな」

「どうしてですか?」

「分かるんだよ」


 幼馴染みだからな。

 スキルを授かってから、徐々に力の差が付いてきてベラミ——を含む勇者パーティーのヤツ等とは、ずれていってしまったのかもしれない。

 それでも良いと思っていた。

 仕方ないと思っていた。


 しかし——また昔のようにあいつ等と笑い合えたらな。

 まあもうそんなことはないか。

 道はたがえたのだから。


「私……ベラミさんのことよく分かってなかったかもしれません。もっと知る努力をするべきでした」

「どうだろな」

「ベラミさんってどんな人なんですか? わざわざどうしてこんなことを——」


 俺が昔いた村の映像が天井に映し出される。

 それと同時にリネアからの質問に、俺はこう即答するのであった。


「あいつ、素直じゃないんだ」

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