表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
65/166

64・おっさん、ベラミを助けに行く

今日は二回更新です!

 ずんっとリネアが間に割って入ってくる。


「事実を言ってなにが悪いのよ」

「事実がどうだろうか関係ありません! どうしてそんなこと言うんですか!」


 二人が顔を引っ付けるくらいの勢いで言い争っている。


「お、おい……二人共止め——」


 喧嘩を止めようと足を踏み出した瞬間、



「グスッ、グスッ。うわぁぁああああん!」



 ——モグラが大粒の涙を流して、泣き出したのだ。

 それがあまりにも大きな泣き声だったせいで、リネアとベラミの喧嘩も止まってしまう。


「おいおい……当たってないんだから痛くなかっただろ?」

「やっぱり人間は邪悪な存在だ! いきなり魔法を使ってくるなんて! お父様に言いつけてやる!」

「お、おい! どこに行くんだ!」


 手を伸ばすよりも早く、モグラは地中に潜ってどこかに行ってしまった。


「あいつ……サウザンドなんとかの真価とか言ってたくせに、泣き虫なんだな……」


 頭を掻く。


 それにしても「お父様に言いつけてやる」と言ってたが、大丈夫だろうか。

 怒鳴り込んできたら、こちらが悪いんだし謝らないとな。

 謝っても許してくれなかったら、どうしようか……。


 まあその時はその時で考えればいい。

 それよりも……。


「……とにかくディックの家に行って、ご飯でも食べようか」


 パンと手を叩いて、話を切り替える。


「良いわね。アタシ、まだなにも食べてないのよ」

「ベラミは朝ご飯兼昼ご飯といったところか」

「まだ私の話は終わってません! ベラミさん、ブルーノさんに謝ってください!」

「まあまあ」


 リネアの肩を持ってなだめる。


 とりあえずディックの家に持って行けるだけの野菜をまとめようか。

 収穫した野菜の山から厳選している途中でも、リネアはベラミの方に鋭い視線を送り続けている。

 一方、ベラミは意に介していないのか、近くの岩に腰掛けていた。



 そんな感じで、そろそろディック家に向かおうかなと思っていた矢先。


 ゴゴゴ……!


 ちょっと大きめに地面が揺れた。


「地震かっ!」

「ブルーノさん!」


 リネアが俺の腕を掴んでくる。

 その地震はだんだん大きくなっていき、やがて立ってられなくなる程であった。

 ベラミの方は魔法かなんか使っているのか、平然とした顔で立っている。


「ふふふ。こんなので慌てるなんて、やっぱりブルーノは大したことないわね」


 地面に屈んで、リネアと一緒に体を小さくしている俺を見て、ベラミはせせら笑ってくる。

 色々と反論したいが、そんなことしてる場合じゃない。


 それにしも収まらないな?

 そろそろ収まってもおかしくないと思うが——。



《我が子をイジめたのは、貴様等か》



 ——地面の下から低い声が聞こえてきた。


「えっ?」


 突然声が発せられたものだから、ついつい聞き返してしまう。


《我が子をイジめたのは、貴様等かと言っている。そうならば、サウザンド・アビス・エンペラーの主として、貴様等に制裁を加えなければならぬ》

『お父様! そいつ等だぜ!』


 おっ。

 後者の声は聞き覚えがある。

 さっき、ベラミがイジめて泣かせてしまったサウザン(略)だ。


 ……ってか。


「やっぱり親が怒鳴り込んできたじゃねぇかぁぁぁあああああ!」


 なんということだ。

 しかも行動が早い。


「す、すいませ……」

「あら、さっきの魔族ね。親が代わりに怒鳴り込んでくるって情けないと思わないのかしら」


 ベラミぃぃぃいいいいい!


 事を穏便に済まそうとしてるのに、わざわざ挑発するんじゃねえよ!


《やはり、貴様等か……》

『お父様! さっきの女の声です! そいつにイジめられました!』

《子の恨み——我が代わりに晴らそうではないか》

「ふふふ、どうやって晴らすつもりかしら——キャッ!」


 その時、起こった光景に目を丸くしてしまう。

 突如地面から大きな手のようものが生えてきて、ベラミの体を掴んだのだ。

 大きいために、ベラミの体がすっぽりと手の平に収まってしまう。


「な、なにするのよ——」


 逃げ出す余裕もなく。

 ベラミを掴んだ巨大な手は、そのまま地面の下へと潜っていってしまった。


「「…………」」


 あっという間の光景。

 やっと地震が収まった。

 ベラミがいなくなって、俺はリネアとぽかーんと口を開けていた。


「……って不味くないか? ベラミのヤツ、魔族にさらわれちまったぞ!」

「ホ、ホントですね! ベラミさん、魔族の怒りを買ってしまうなんて……」


 先ほど、手が生えてきた地面のところへ近寄ってみる。

 そこにはぽっかりと大きな穴が出来ていた。

 滑らかな通路みたいになっていて、なんとか入っていけそうだ。


「うーん、気は進まないが……」


 それにベラミだったら、魔族だろうが一人で対処出来そうでもある。

 しかし……さっきのベラミ、なんか気にかかるんだよな。

 いくら突然であっても、ベラミくらいなら魔法を乱発して逃げ出せそうだったし。

 そうは出来ない理由があったのだろうか?


「ブルーノさん、助けに行くんですか?」


 服の裾を掴んできて、リネアが心配そうに俺を見上げる。


「まあ放っておくわけにはいかないだろう」

「ベラミさん、さっきブルーノさんに酷いことを言ったのに? ブルーノさん傷ついたのに?」

「俺は傷ついちゃいないさ。それにベラミには今まで世話になったからな」


 助け合いの精神だ。


「……分かりました。でも絶対に戻ってきてくださいね」

「おうよ。リネアは先にディックん家のところまで行っといてくれ」

「はいっ!」


 リネアが敬礼をする。


「そして、戻ってきたらみんなでカレーパーティーをしよう」

「カレー、私大好きです!」


 きっと楽しいに違いない。


「じゃあ、ちょっくら行ってきます」


 と俺は言い残して、穴に入っていったのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
こちらもよかったらお願いします。
二周目チートの転生魔導士 〜最強が1000年後に転生したら、人生余裕すぎました〜

10/2にKラノベブックス様より2巻が発売中です!
よろしくお願いいたします!
jf7429wsf2yc81ondxzel964128q_5qw_1d0_1xp_voxh.jpg.580.jpg
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ