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59・おっさん、リネアとデートする(1)

題名に(1)をつけて、次と二部構成……という形にしたいと思います。

「リネア、どっか行きたいところでもあるか?」

「ブルーノさんの行くところならどこでも!」

「うーん、困ったな……こういうの決めるの苦手なんだよ……」


 この歳までろくに女性とデートなんかしたことがないしな。

 女性としては、こういう時は男の人に引っ張ってもらいたいらしいが、俺はそういうタイプでもない。


「だったら!」


 とリネアは手を叩き、


「私、服を見に行きたいです」

「おお、服か。良いじゃないか。なんか好きなもん買ってやるよ」

「え……それは悪いですよ」

「良いから。財布の中身はちょっと余裕があるんだ」


 ワインを売って得たお金は、ほとんどをディックに渡している。

 ディックは「マリーのために貯金する!」と言って、中身を見てないみたいだが、金額を知ってがっかりしないだろうか?


 だが——全部渡したわけではなく、少しばかり手元に残してあった。

 そうだな。ざっと百万ベリスくらいだ。


 ()()だが、これだけあれば服くらいなら買えるだろう。


 そんなことを考えながら、リネアとぶらぶら歩いていると。


「な、なんだあの可愛い子は!」

「どこかのお姫様じゃないか? それにしても、どうしてあんな冴えない風のおっさんと……」

「バカ。あれはイノイックの神おっさんじゃないか。おっさんなら、あれくらいの愛人の一人や二人抱えててもおかしくないぜ」

「くーっ! オレもあんな可愛い子といちゃいちゃしてーよー!」


 ……周りからジロジロと見られてるような気がする。

 まあただのおっさんの俺が、リネアみたいなキレイな子と歩いているのは不自然に見えるんだろう。


 ……それだけじゃない気もするが。

 まあそれは聞こえていないふりでもしよう。


 やがて、リネアはお洒落な外観の店の前で立ち止まり。


「ここに入りたいです!」


 と指差して、そう嬉々として声を弾ませた。


「おう」


 服のことはよく分からないので、リネアに言われるがまま店内に入る。


「わあ……みんなキレイな服ばかり!」


 店内に入るなり、リネアがクルクルと回りながらはしゃいだ。

 服ももちろんのことなのだが、外観だけではなく中もキラキラ輝いているようであった。


「いらっしゃいませ」


 ほら、店員の声もお淑やか。

 紳士服みたいなのを着て、丁寧にお辞儀をする。


 ……これってもしかして。


「結構な高級服屋じゃないのか?」


 うん、きっとそうだ。

 勇者パーティーにいる頃、ベラミとかがこういう店を好んでいたのを思い出す。

 まあ俺は買ったことがないが。


 そうです。荷物持ちです……。


「へぇ? す、すいません! こんなとこダメですよね。す、すぐに出ましょう!」


 リネアが俺の服を引っ張って、慌てて店から出ようとする。


「良いから」


 だが、俺はそこから一歩も動かずリネアにそう言う。


「で、でも……」

「まあ一着くらいなら、なんとか買えると思うから」


 いくら高級服屋といっても、所詮服である。

 これがモンスターを倒すための装備品、とかなら四桁万円を超えるのも珍しくないが、それほど高いものなんてないだろう。


 多分……。


 それにリネアの喜んでいる顔を見たい。


「好きなものを選びなよ。値段は気にしなくていいから」

「は、はい!」


 リネアは嬉しそうにスキップをして、店内を回り出した。

 やっぱりリネアも女の子なんだ。こういうお店に来るとテンションが上がるんだろう。


「やれやれ」


 俺は子どもを連れた親のような気分で、リネアの後を付いていった。


「ブルーノさん。これってなんでしょうか……」


 リネアがとある棚の前に立ち止まり、興味津々に商品を手に取る。


「そ、それは!」


 ——メイド服じゃないか!


 しかも穴が空き空きで無駄に露出が多い!

 ってかこれって本当にメイド服だよな?

 水着並みに布地が少ないぞ!


「ほっほほ。良いものに目を付けましたな」


 どこからともなく、白髭を蓄えたおじさんが俺達に近寄ってきて、


「それはメイド服。奴隷や召使いを雇う大商人や領主様が、よく好んで買われるような服でございますな」

「それにしては……えーっと、ちょっと寒くないか? 服にしては」

「ほっほほ。それもそのはず。どちらかというと、それは夜に効果を発揮する服なのでございます。一度ご試着してみますかな?」


 ——それって、完全に夜の格闘戦のためのものじゃないか!


 ああ、分かった。

 機能的な服じゃないのだ。


 変態領主とか、変態商人が召使いに着させて「ぐへへ」というような視線を送るためのものなんだろう。

 ヨダレを垂らしながらな。

 想像するだけで、気色悪い。


「可愛い……ブルーノさん! これ、試着してみていいですか!」

「リ、リネア? それ、ちょっと寒すぎないか?」

「ふふん。こういうの欲しかったんです……これでベラミさんと差を付けるのです」

「なんのっ?」


 まあリネアが積極的なのは嬉しいことだけどよ。

 しかしリネアにはいつまでも純真であって欲しい。

 こういう服みたいなのに興味を持って欲しくないのだ。


 だが……。


「リ、リネアがそう言うなら仕方ないよな。思う存分試着してみろよ」


 ——やっぱりメイド服って男のロマンだよな!


 許可すると、リネアは頬を緩ませ、


「はいっ!」


 と試着室の方へ消えていった。



「……長い」


 うーん、女の子のトイレとか試着って時間がかかるって言うしな。

 試着室の前で腕を組み、人差し指でトントンとしながら待つ。


「ブルーノさーん! 良いですよ。開けてください!」


 おっ、やっと終わったか。

 自分で開けろよ、と思うところもあるが反論せずにカーテンを開ける。


 そこには。


「お、おおぉ!」


 思わず変な声が漏れてしまう。

 そこには天使がいた。


 もう一度言おう。天使がいた。


「へへへ、似合いますか?」


 リネアが恥ずかしそうにスカートの端を持ち上げる。

 基本的にはメイド服だ。しかしお腹のところは丸出しだし、豊満な胸の谷間もバッチリ穴が空いている。スカートは短くて、ちょっと動くだけでパンツが見えてしまいそうだった。


「とても似合ってるよ、リネア」

「ホントですか! 嬉しい!」

「リネア。ちょっと今から言う台詞を言ってみてくれないか?」

「なんでしょうか?」


 リネアの耳元でごにょごにょとその『言葉』を伝える。


 嫌がられると思ったが、彼女は笑顔のままで、


「ご主人様。私を美味しく召し上がってくださいにゃ」


 そう片足の膝を曲げて言ってくれた。


 う、うぉぉおおおおお!

 今すぐ抱きしめたかったが、店員の目もあるので止めておこう。

 男は我慢!

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