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37・おっさん、勝つ

少し長くなりましたので分けて、今日の夜に37.5話を投稿します。

「な、なななななな! どうしてだ! どうしてそんな簡単にウォーター・ウォールが破壊される!」


 俺が一歩歩くごとに、魔法使い共も同じだけ後退する。


「ああ、この剣のおかげだ」


 そう言って、聖剣を見せる。

 聖剣エクスカリバー、もの凄い威力だ。

 剣に関しては素人同然の俺であっても、魔法で作った壁を斬り裂くなんていう真似が可能となった。


 それなのに——魔法使いはわなわなと震え、


「う、嘘だっ! そんな地味な剣で我のウォーター・ウォールを破壊出来るわけがない!」

「そもそも例えSSランクの剣であっても、水の壁は斬り避けないはずだ!」


 と俺を指差した。


「うーん……SSとかじゃないんだけどな」


 正しくはSSS。

 こんな剣。果たして他にあるんだろうか。

 初めて聞くレア度だし。


「さて、リネアを返してもらおうか」

「リネア? この実験エルフのことかっ!」

「名前も覚えていないか——」


 良かった。


「お前等みたいな外道を聖剣で真っ二つにするのに、罪悪感がなくなるよ」


 聖剣を振りかぶりながら、ゆっくりと近付いていく。


「兄貴っ!」

「任せろ——はぁぁぁああああああああ!」


 逃げるかと思ったら、魔法使い共はそう言って魔法を展開し始めた。

 俺を阻むようにして現れたのは——。


「ガハハ! どうだ! イフリートを召喚してやったぞ!」



 ——全身が炎で構成されている獣であった。



「召喚魔法か」


 召喚魔法。

 それは魔界や神界から、モンスターや神を召喚すると言われる魔法である。

 全ての魔法の中でもとびっきり難しく、これを使いこなせるヤツはかっっっっなり珍しいはずだ。


「ククク……どうだ? 怖じ気づいたか?」


 イフリートの背中に隠れ、魔法使いが笑みを零す。


「えっ? 怖じ気づく?」

「召喚魔法など初めて見ただろう? イフリートを見て腰を抜かしたに違いない!」


 こいつ等はなにを言ってんだ?

 召喚魔法は珍しいものであることは間違いないが、勇者パーティーの魔法使いであるベラミはバンバン連発していたぞ。

 今更、こんなので驚くくらい伊達だてにおっさんしてないのだ。


「ゆけ! イフリート! 我々を邪魔する者を燃やし尽くすのだ!」


 魔法使いがそう声を出すと、のそっとイフリートの右手が上がり俺に向かって振り落とされる。


「ブルーノさん!」


 リネアの声。


 ——大丈夫。


 俺は聖剣を振りかぶり、イフリートに向かって下ろす。


「えい」


 たったの一振り。



 しかしそれは一発でイフリートを両断することになった。



「な、ななななんだとぉっ?」


 影も姿もなく消滅したイフリートを見て、目が飛び出そうなくらい驚愕している魔法使い共。


「はあ……もうなんもないよな」


 無駄なことをしてくれるもんだ。


 ——俺自体はメッチャ弱い。

 勇者パーティーで無能扱いされた男だ。

 しかし【スローライフ】で作ったこの聖剣が、俺を最強の勇者にまで押し上げてくれる。


「ちょ、ちょちょちょっと待て! わ、我々も上から命令されているのだ!」

「今回のところは引き下がる! だから見逃して——」

「問答無用」


 腰が抜けているのかどっちなのか。

 座り込んで動けないでいる魔法使い共の前に、聖剣を振り下ろす——。


「「ギャアアアアア!」」


 二人分の悲鳴が時計塔に響き渡った。



 ——とはいっても殺すつもりなんてない。

 殺してしまってはリネアを悲しませた罪を償わせることが出来ないからだ。

 だから二人の顔の前で、ピタリと——という技術は持ち合わせていないので失敗したが、皮一枚斬ったところくらいで寸止めする。


「これで解決かな」


 だが——それによって気絶してしまった二人を前に、俺は聖剣を鞘に収める。


「ブルーノさん!」

「おっさん!」


 リネアとアシュリーが駆け寄ってくるのが視界の端で見える。

 今回ばかりはちょっとだけスローライフじゃなかったな。


 やれやれ。


「もうこんなことはりだぜ……」


 明日からはまたいつものスローライフに戻るとしよう。

 

 ◆ ◆


 その後の話。

 リネアをさらおうとした二人組の男は、アシュリーによって王都に送還されることになった。


「私にあんな舐めたような口を利いてくれたんだ。王都での取り調べは覚悟出来ているんだろうな?」

「「ひぃいいいいいい!」」


 魔法使い共は怯え縮み上がっていたが、牢屋の中でしっかり反省してもらいたい。


「ブルーノさん! 本当にありがとうございます! これで私——安心してこの街で——ブルーノさんと、ひっ、一緒にうわぁぁあああん!」

「おいおい、リネアっ?」


 緊張の糸が切れたのか。

 解決した後、リネアは顔を涙で塗らしてお礼を言ってきた。


「お礼なんていらない。それに俺はリネアの喜ぶ顔が見たかったんだ。泣いてちゃ、なんのために頑張ったか分からないよ」

「——はいっ!」


 指で涙を拭って、リネアは花弁のような笑顔を咲かせた。

 うん、これで一件落着。


「おっさん! 街で噂になってるぜ! その魔法使いは魔王の手下だったみたいだな!」

「おっちゃんの武器カッコ良いの! マリーと交換してなの!」


 なんか話が盛られて、あの魔法使い共は魔王の手下ってことになっていた。


「とにかく今日は——事件も解決したし宴会だ!」

「おう!」

「やったなの!」

「はい!」


 ディック、マリーちゃん——そしてリネアが手を上げた。

 うーん、辺境の地も平和が保たれ、リネアもこれからより一層安心して暮らせるだろう。


 これぞまさにスローライフ! 


「さて……と。台所にはなにが残っていたかな……」


 俺は腕をまくって、台所へと向かうのであった。

今日の18時30分くらいに、余話として37.5話を上げるのでそれで二章終わりです!

ここまでポイント・評価ありがとうございますm(_ _)m

感想の返信は出来ていませんが、有り難く拝見させていただいております!

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