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161・おっさん、ベラミと話す

久しぶりの登場……!

 魔法使いベラミ。


 勇者パーティーの元仲間でもあり、昔からの幼馴染みでもあった。

 俺が【スローライフ】というスキルを授かったのに対し、ベラミは【魔導の達人】。

 魔力の保有量が段違いで、あらゆる魔法を使えるようになる……まさにチートスキルである。


 チートスキル【スローライフ】ほどじゃないかもしれないが。


「お前……どうしてここにいるんだ?」


 目を丸くしているベラミを指差す。


「それはこっちの台詞よ。あんたはあの田舎村でエルフの子と平和に暮らしてるんじゃなかったの?」


 ベラミが俺に詰め寄ってきた。

 その両手には山ほどの木の実や野苺のいちごが抱えられていた。


「お前だって……旅に出るとか言ってたが、ここに辿り着いていたのか?」


 そうなのだ。

 ベラミは元々俺を勇者パーティーから連れ戻すために、辺境の地イノイックに来ていた。


 しかしそこで色々ないざこざがあり、ベラミは俺を連れ戻すことを諦めて——彼女いわく『世界を見る』旅を始めた。


「そうよ……いけない?」


 とベラミはぷいっと視線を逸らして、すねたようにして言った。


「いや……久しぶりにお前の顔を見れたもんでな。嬉しかったんだ」

「えっ——」


 ベラミがはっとした顔になった。


「それってどういう——」

「ベラミさん、久しぶりですっ」

「あら、エルフの子も来てたのね」

「はい! ベラミさんに会えて、私も嬉しいです!」


 きゃっきゃっとはしゃぎながら、ベラミに近付くリネア。


「なによ。あんた、あたしのこと嫌いじゃなかったの?」

「私がですか? 私……色々誤解してたかもしれませんが、ベラミさんのこと好きですよ」

「……ふうん」


 どうでもよさそうに返事をするベラミ。


 しかし俺は見逃さなかった。

 ベラミが少しにやけていて、頬が薄いピンク色になってたのを。


 ……こいつ、嬉しい時はこういう恥ずかしそうな顔をするんだよな。


「それで私のことは良いでしょう。たまたま立ち寄ったエルフの村が良くってね。ここでしばらく滞在することにしたの」

「そうだったのか。でもどうやって立ち寄ったんだ? 確か結界かなにかで普通の人間は入れなかったはずだが……」

「適当にぶらぶら歩き回ってたら、いつの間にか着いたのよ」

「なんと適当な……」


 まあベラミだったら、あり得る話かもしれない。


 間違いなく世界で最強の魔法使い……と俺は思っている。

 色々出鱈目でたらめなことがあるベラミならあるいは……と思ってしまう。



《……話の途中ですまんが、今日はここで泊まっていったらどうだ?》



 と話の間に精霊王が割って入った。


「ここに?」


 俺は尋ねる。


《うむ。エルフの村に帰ることもいいかもしれんが、ここも案外居心地いいものだぞ? 私も話し相手が欲しいのだ。それにベラミとも積もる話があるのだろう。どうだ》


 断る理由もない。


「だったらお言葉に甘えさせてもらいますよ。リネア、ミレーヌはどうする?」

「私もブルーノさんと一緒にいます!」

「精霊王なんてエルフの私でもなかなか会えないからねー。こういう機会を逃がすわけないよー!」


 どうやらリネアとミレーヌもノリ気らしい。


「ベラミ……も精霊王と知り合いなのか?」

「ええ。精霊王なんて滅多に会えるもんじゃないからね。折角だから、精霊王の生態を知ろう……と思ってね」

《……なにを言っているのだ。ベラミよ。そなたは私をもふもふしたいから、ここにいるのではないか?」

「な、なに言ってんのよ、キングちゃん!」

《寝る時に『このもふもふが癖になるわ』と言って、ひらすらもふもふしているではないか》


 ベラミが反論せずに、顔を真っ赤にする。


 ……というかベラミ、精霊王のことを『キングちゃん』って呼ぶんだな。

 こいつが実は可愛いもの好きだとかいうところも、俺は昔から知っていた。


「ベラミ。馴染んじゃってるじゃないか。それにどうやら精霊もお前のことを好いているみたいだぞ」


 その証拠にベラミの周りを精霊達がふわふわと浮いている。

 それはベラミに懐いているように見えた。

 もしかしたら俺達以上に……だ。


「あ、当たり前じゃないの! 魔法使いとして超超超一流のあたしなのよ? 精霊を魔力で従わせることくらい、屁じゃないわよ!」

「女の子が『屁』とか言うなよ……あっ、女の子っていうのは少し変か?」

「あんた、それ言ったら爆発魔法で吹っ飛ばすわよ?」

「はいはい」


 相変わらず素直じゃないんだから。


 こいつは魔力で精霊を従わせている、と言っている。

 でも精霊達の表情を見るに、とてもそうは思えなかった。


「とにかく……今からあたしはこの子達に野苺を与えるわ。た、たまには餌をやらないとね! 今から馬車馬のごとく働いてもらうんだから! 女王の施しよ!」


 恥ずかしくなったのか、ベラミは顔を真っ赤にしたままで俺達に背を向けた。

 俺から離れていくベラミに、精霊達はふわふわ付いていった。


「精霊は魔力なんかで従わせること出来ないよ」


 そんな光景を微笑ましく見ていると、ミレーヌが横から補足してくれた。


「そうなのか?」

「うん。モンスターとかドラゴンなら、そういうこともあるかもね。でも精霊は尊い存在だからね。神に最も近い存在とも言われている。そんな精霊を従わせるなんて……恐れ多いし、出来るなんて聞いたこともないよ」


 やっぱり俺の思っているみたいだった。

 ベラミも成長しているのだ。

 勇者パーティーにいる頃のギラギラしているベラミだったら、エルフにも精霊にも受け入れられなかっただろう。


 表情が柔らかくなっているベラミを見て、俺はそう思うのであった。


「おーい、ベラミ。俺にも野苺くれよ」


 地面に座り込んで、精霊に野苺をやっているベラミに話しかけた。


「嫌よ。これは精霊の分なんだからね」

「俺が食べるんじゃないよ。精霊達にやるんだ」

「ふうん……まあ勝手にしなさいよ」

「ありがとう」


 ベラミにいくつか野苺をもらって、手の平に広げる。


 すると——その周りに精霊達が寄ってきた。

 限られた野苺を喧嘩することなく、仲良く食べている精霊を見てたら癒された。


「ブルーノさん、私も私も!」

「私もちょうだーい!」

「はい。リネアとミレーヌにも」


 こうしてみんなで精霊に野苺をあげていった。

 その途中、ミレーヌが野苺を自分の口の中に放り込んでいるのを発見した。


「おい。なに自分で食べてるんだ?」


 指摘すると、ミレーヌの体が「ビクンッ」と小さく震えた。


「えっ、えっ? なんのことかなー?」

「誤魔化すな。食べてたのを見たぞ」

「だ、だって! 甘くて美味しかったんだもん!」

「お仕置きね。凍結魔法で凍らせてあげるわ」

「べ、ベラミさんもっ!」


 ミレーヌが慌てたように手足をばたつかせる。


 するとベラミの顔が「ふっ」と少し笑ったように見えた。


 やっぱり……ベラミは変わっている。


「お前、今の方がいいよ」

「なんのことかしら?」


 俺の言葉に、ベラミは小首をかしげるのであった。

「転生最強の無双魔法 〜1000年後の衰退した世界では本気を出せない〜」

という新作はじめさせていただきました。

作者ページから作品一覧で見ること出来るので、ご覧いただけると嬉しいです。

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二周目チートの転生魔導士 〜最強が1000年後に転生したら、人生余裕すぎました〜

10/2にKラノベブックス様より2巻が発売中です!
よろしくお願いいたします!
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