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160・おっさん、久しぶりに昔の仲間に会う

 精霊達の後を追いかけていくと、いつの間にかエルフの村グーモースの外に出てしまっていた。


「どこにいくんだろう?」

「さあ?」


 隣を歩くリネアが首をかしげる。


 グーモースの外は森になっている。

 まるでその中を自分の庭かのように、すいすいと飛んでいく精霊。

 その様子を見るに、傷は完全に癒されたようだ。


「草が多いな……」

「虫に刺されそうだよー」


 草木をかきわけながら、俺達は精霊の後をひたすら追いかけていく。


「変な場所に連れて行く……つもりとかじゃないよな?」


 どんどん辺りが暗くなっていく。

 ここまで来ると心配になってきた。


「それは大丈夫ですよ」


 リネアが言った。


「どうして?」

「精霊さんには人間みたいに悪意はありません。もし嫌いな人間を見つけたら、近付かないだけです」

「人間みたいに嫌がらせ……みたいなこと考えないからねー。嫌らしいことも考えないしー」


 ミレーヌも補足してくれた。


 うむ……リネア達がそう言うなら大丈夫ということかな?

 というか精霊に聞くのが早いかもしれない。


「精霊よー。まだ着かないのかー?」

「……(ブンブン)」


 精霊は少し立ち止まって、俺の方を見て首を振った。

 このブンブンは横にだ。つまり精霊達の目指す場所は近いらしい。

 それにしても……そろそろ腰が痛くなってきた。おっさんにはこれだけ歩くのは厳しい。


 やがて……。


「うわあ!」

「キャッ!」


 暗かったり草木が生い茂るせいで足下が見えなかったが、どうやら道は坂になっていったらしい。

 俺とリネアはそのせいで、転んでしまった。


「ははは。なにしてんの、おっさんとリネアお姉ちゃん」


 ミレーヌがくすくすと笑っている。

 リネアはミレーヌは活発な印象を抱く子だ。

 どうやら足を踏み外さなかったらしい。


「いてて……え? ここは——」


 尻の痛みを抑えながら、前を向く。


 坂の下まで転んでいった俺達は——とある開けた場所に出ていた。

 さっきまで薄暗かったのが嘘みたいに、上から太陽の光が降り注いでいる。

 木の葉っぱに光が反射して、キラキラ輝いて見えた。


「精霊さん達がいっぱいです!」

「本当だねー。可愛い!」


 リネアとミレーヌがはしゃぐ。

 二人が言うように、ここには精霊がたくさんそこらへんを浮遊していた。


「ここは……精霊の村、とでも言ったところかな?」


 それを見て、俺はここまで連れてきてくれた精霊にそう尋ねてみる。


「……(ブンブン)」


 首を横に振っている。

 どうやら違ったらしい。


「じゃあここは——わっ!」


 精霊がいっぱいいる幻想的な風景。


 その奥からのっそりと——獣が現れたのである。


「モ、モンスターっ?」


 俺は声を上げて、身構える。


 モンスター……外見はキングベヒモスに似ているだろうか?

 四つ足を地面に着き、巨大な体をしている獣である。

 顔のところに斜めに入った傷が見えた。


「……(ブンブン)! ……(ブンブン)!」


 俺達が慌てていると、辺りの精霊が一斉に首を横に振った。

 ということは……モンスターじゃない?



《旅人よ。よくここまで足を運んでくれた。話は聞いておる。歓迎するぞ》



「えっ……?」


 頭に直接語りかけてくるような声。

 キョロキョロと見渡すが、誰もいない。


 精霊が話しかけてきたのか?


《こっちだ、こっち。儂がそなたに話しかけている》

「……も、もしかして……あなたが?」


 俺はそのモンスターのように見える獣に話しかけた。

 じっと獣の目を見ると、まるで笑っているかのように表情を柔らかくさせた……ように見えた。


《儂は精霊王。この辺りの精霊を束ねている長である》

「せ、精霊王っ?」


 驚いて頓狂とんきょうな声を出してしまった。

 それはリネアとミレーヌも同じようだ。目を見開いている。


 俺達が驚くのも無理はないだろう。

 精霊だけでも滅多めったに会えない、と言われているのだ。

 精霊王の存在は文献では見たことがある。


 しかし人間では未だ誰も見たことがなく、伝説上の存在とも言われているのだ。

 それなので姿形には諸説あり、精霊がただ大きくなっただけの姿……人間のような姿……そもそも姿なんて持っておらず、空気のように実体を持たない……と言われていたはずだ。


「あなたが精霊王? 仮にそうだとしたら、どうしてこんなところにいるのですか?」


 震える声で、俺は尋ねる。


《ふむ……》


 精霊王は少し考えたような素振りをしてから、こう話を続けた。


《本来、この辺りの精霊はグーモースに住んでおる》

「エルフと共存しているわけですね」

《そうだ。しかし……それだけでは精霊としての役目を果たしたとは言えないだろう。精霊は自然に宿り、守っていく使命を帯びた存在……でもあるのだ。そこで儂はグーモースだけではなく、この森全体を守っているのだ》

「この森の主……としての役目もあるということですか」

《うむ。そういったところだ》


 精霊王はその巨躯を僅かに揺らした。


 森の主……ミドリちゃんみたいな存在ということか。


《それで……そなたが儂の子でもある精霊を助けた、というのは聞いていた》

「いえいえ、助けたなんてそんな……」

《放置されてしまっては、木から降りられず死んでしまったかもしれない……と聞いておるぞ。つまりそなたは精霊の命の恩人なのだ》


 精霊王の近くを、グルグルと回っている精霊達。


《精霊の王でもある儂が、そなたに礼を言わないのはおかしなことだ。改めて言う。ありがとう。そなたは儂に会った二人目の人間であるが、歓迎するぞ》

「そんな……俺は大したことありませんから」


 ついついしどろもどろになってしまう。


 そりゃそうだ。


 精霊王だぞ? 勇者パーティーの一員として、世界を飛び回っている頃にも出会ったことがない。

 しかもただ出会うだけではなく、なんか感謝もされちゃっている。

 冷静にいられるか、ってんだ。


「精霊王……私、初めて見ました」

「お母さん達は『精霊の王様は、グーモース近くの森を守ってくれてるんですよー』って言ってたけど……まさか本当にいるなんて……」


 リネアとミレーヌも同じようにして、ぽかーんと口を開けていた。


 ……ん?


()()()?」


 俺達が初めて……というわけではないのか?

 つまり俺達がここに来る前に、辿り着いた人間がもう一人いる。


 それは一体……。



「野苺、取ってきてあげたわよ」



 と——考えていると、()()()()のある声が聞こえた。


「本当に……ここは色々生えているのね。野苺以外にも面白そうな木の実もあったから、取ってきたわよ。一緒に食べましょう——あっ」


 突如現れたそいつは、俺の前に立ち止まり口を開いた。


 黒を基調とした服。

 金色のキレイな髪をした小さい女性。

 昔特徴的だったツインテールはまだ止めてるみたいだった。


 俺達は指を向け合って、こう相手の名前を口にした。


「ベラミ!」

「ブルーノ!」


 そうである。

 元仲間でもある——勇者パーティーの魔法使いベラミであった。

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