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152・おっさん、エルフの村に辿り着く

 グーモースは緑豊かな場所であった。

 イノイックも木とか草とか花とかいたるところに生えているけど、グーモースはまた違う。

 なんというか……浮世離れしているのだ。


「ここが……エルフの村……」


 俺は村を眺めて、ぼそっと呟く。

 まるで精霊が飛び交っているような幻想的な街並みに、俺はあっという間に虜になってしまった。


「ふふふ。どうだい? 私達の村は!」


 ミレーヌが胸を張り、両手を広げた。


「素晴らしい村だよ」

「そうだろ、そうだろ!」

「なんというか、精霊とか飛び交ってそうな場所だな」

「弱い精霊だけど、何体かは本当に飛び交ってるからね」

「なんと。精霊と共生しているということか?」

「そうだね! 精霊達も住むところには困っているんだ!」


 精霊——それも、エルフと同じようにして人前にはなかなか現れない存在だと言われている。


 森の主であるミドリちゃんも精霊の一種だ。

 まあ、あの子は別だろう。

 ミドリちゃんみたいな精霊がグーモースにはいっぱい、いるということなのだろうか?

 それとも見た目はちょっと違ったりするのだろうか?


「久しぶりです……とても懐かしい匂いです」


 くんくん、とリネアが目を瞑って鼻を突き出した。

 心なしか、うきうきと心が弾んでいるようにも見える。


「さあ、リネアお姉ちゃん! 懐かしんでいる暇はないよ。早くお父さんとお母さんに挨拶しないと」

「そうですね。早くお父さんとお母さんに会いたいです」

「二人共心配してるよー。顔を見せないとっ!」


 とミレーヌはリネアの手を引っ張った。


 俺も二人に置いてかれないように、後に付いていった。


「それにしても……本当キレイだな」


 走っている最中、村の光景に目を奪われそうになってしまう。

 時々リネア達以外のエルフもいて、俺に怪訝そうな目は向けていたが、大した騒ぎにはならなかった。


 おかしいな。

 もっと騒がれると思ったのに。


 疑問に思ったが、今は二人に付いていくことに必至だったので、後で聞こうと思った。


 ◆ ◆


「お母さん!」


 感動のご対面だ。

 リネアは自分んに着くやいなや、そこにいた女性に抱きついた。


「リネア!」


 それに答える女性——多分、リネアのお母さんだろう。


「どこに行ってたんですか!」

「ごめんなさい……」

「どこかで悪い人達にさらわれてるかも……とか、もしかしたらもう死んでいるかもしれない……と考えて、夜も満足に眠れませんでした」

「…………」

「でもリネアが無事で本当に良かった。リネア、おかえりなさい」

「お母さん、お母さん!」


 リネアがお母さんの胸に顔をうずめ、今までの分を取り返すかのように甘えていた。

 そのリネアの頭を、お母さんが優しく撫でた。


「リネア。よく帰ってきたな」

「お父さん!」


 次は隣にいた男性に、リネアは抱きついた。


「俺はお前のことを信頼していたぞ。絶対に生きてるって」


 と言って、男性——リネアのお父さんだろう——はリネアの頭を撫でていた。


「うんうん、良かったね良かったね……」


 いつの間にかミレーヌがハンカチを取り出して、瞳から涙を拭いていた。

 俺もうるっときてしまいそうである。


 やっぱり家族っていいもんだよな……。


 それにしても——当たり前のことであるが、リネアのお父さんもお母さんもエルフだけあって、美男美女である。

 リネアのお父さんにいたっては、立派な口髭も金色で、眩しいを通り越して神々しかった。


「おや……そちらの人間は……?」


 リネアのお母さんが背後の俺に気付く。


「あっ、はじめまして。俺はブルーノと言います。三十路みそじのおっさんです」


 と頭をペコリと下げて自己紹介。


 こういうのが初めが肝心だ。

 でも……「どうして人間がエルフの村に来てるんだ!」と怒られやしないだろうか。


 内心ハラハラしていると、


「おやおや。どうぞいっらしゃいました」


 おや?


「歓迎するぞ。リネアのお友達だろう?」

「え、ええ……そうですが……」


 お父さんとお母さんにも歓迎ムードが漂ってるっ?


 どういうことだろう。

 それにしても、村に入ってから俺に対するエルフの反応が予想外というか。

 エルフは排他的というイメージは、俺だけが持っていたものであろうか。


「私はアドレイドと申します」

「俺はブラッドリーだ。よろしくな」


 と二人は手を差し出してきたので、戸惑いながらもそれを握る。


「あの、一つ聞いてもいいですか?」

「なんでしょうか?」


 リネアをより一層おしとやかにしたような女性——アドレイドが首をかしげる。

 こういうところは、リネアのお母さんだなあという印象を受けた。


「俺を見て、もっと驚かないんですか?」

「?」

「だって俺……人間ですよ? なんか、もう少し反応があってもいいんじゃないかな、と」

「ああ、そのことですか」


 アドレイドさんは柔らかな笑みを浮かべ、


「この村に入ってきてるということは、ミレーヌとリネアが認めた人なんでしょう? 人間ではここに入ることが出来ませんから。それにエルフはみんな人間を嫌っているわけではありません」

「そ、そうなんですか?」

「はい。昔のエルフはともかく、最近は人間との関係も良好ですから。あまり気にしていない方も多いんです」


 それを聞いて、俺はほっと胸を撫で下ろした。

 追い出されるとか洒落にならないからな……。


「それに……最近、人間の方とちょっとした出来事がありましたね」

「へえ? 差し障りがなければ、それはどういうことなんですか?」

「ええ。あなたと同じように、この村に人間がやって来たんですよ。その方はとても良い方で……そういうこともありましたから、あまりブルーノさんを警戒していないかもしれません」


 俺がやって来る前に、村に人間が訪れた?

 なんてタイムリーな。


 それにしても……。


「ということは——俺みたいに、誰か……ここのエルフが連れてきたんですか?」

「いえ、その人は一人で来ました」


 えっ?

 どういうことだろう。

 この結界を破るには、エルフの膨大な魔力が必要になってくるはずなのに……。


 まあ、そのことについてはあまり詮索しない方がいいかもしれない。

 エルフにとってはあまり知られたくない、秘密の裏道みたいなものがあるかもしれないし。


「それにしても……是非ともその方にお会いしてみたいですね」

「今、その方は村を出ているみたいですの。何日かしたら戻ってくると思いますが……その方もここの村を気に入ってくれたみたいですので」

「それは楽しみです。どんな方なんですか?」

「私達と同じ金髪で、とても可愛らしい()()()でしたよ」


 女の子か……。

 子どもなのに、この村を見つけ出すなんて……どんな子なんだろう。

 ますます興味が湧いてきた。


「うっし!」


 そんなことを話していると、リネアのお父さん——ブラッドリーさんが手をパンと叩いた。


「今日はリネアが無事だったパーティーだ! おーい! ご馳走をいっぱい作ってやれ」

「ふふふ。分かりましたよ」


 アドレイドさんは微笑み、台所の方へ向かっていった。


「待ってください。俺も手伝いますよ」

「客人に手伝いなんて、させてられませんよ」

「いいですから。俺、料理が趣味なんですよ」

「あらあら……そういうことでしたら、お願いしようかしら?」


 それに、折角村まで招待してもらったのに、なにもしないのはいたたまれない気持ちになるのだ。


「待ってください! 私も手伝いますー!」

「私も!」


 とリネアとミレーヌの二人も付いてきた。


 楽しいパーティーになりそうだ。

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