12・おっさん、夜這いを受ける
「んー! 美味しいです!」
リネアがほっぺに手を当て、俺が作った魚料理を堪能している。
「いつもいつも作ってもらってばっかで悪いな」
「おっちゃん、どんどん料理の腕が上達していってるの!」
ディックとマリーちゃんも、次々と魚を口に放り込んでいく。
今日も釣りが終わった後の、お食事会。
しかし——今日はただの食事会ではない。
リネアの歓迎会も含まれているのだ。
「ふう……久しぶりに酒を飲んだな」
俺は葡萄酒が入ったグラスをテーブルに置く。
今まで、お酒はなんとなく控えていたが、湖の主事件によって臨時収入も得たことにより、久しぶりに葡萄酒を味わっているのである。
やはり酒はいい。
テーブルに所狭しと並べられた魚料理もあり、どんどん酒が進んでいく。
「マリーも飲むの!」
「おいおい、マリーちゃんにはまだ早いだろう……」
そんなことを口にして、ふと視線をリネアの方にやる。
するとリネアは羨ましそうに葡萄酒の方を見ていた。
「ん? どうした、リネア。リネアも飲むか?」
「!」
言うと、リネアの肩がビクンッと跳ねる。
「い、いえいえ! 私なんかがお酒なんて飲めないですよ! 居候の身ですし……なんにもしてないですし……」
「なにかしこまってるんだ」
「そんなこと気にしなくてもいいぜ! ってか気にされると、オレ達の方もやりにくいし!」
ディックの言葉に、マリーちゃんも「うんうん」と頷く。
「で、でも……」
足をもじもじとさせるリネア。
しかしそうは言うものの、お酒を飲みたそうにしているのはバレバレだ。
「リネア——俺はリネアにスローライフというものを教えてやっただろ」
「スローライフ……釣りをすることですよね?」
「そうだ。だが、スローライフというのは釣りだけではない。ゆっくりと流れていく時間を大切にする。こうやってご飯を食べながら、お酒を堪能するのもスローライフの一つだ」
そう言いながら、コップに葡萄酒を注いでいく。
「ほら」
そしてコップをリネアの前に置いた。
「飲んでいいから」
「で、でも……わ、私!」
「いいからいいから」
と言うと、当初リネアはそれでも拒もうとしていたが、恐る恐るコップを手に取って一気に口へと流し込んだ。
「美味しいです!」
「おっ、良い飲みっぷりじゃないか」
「私……エルフの里にいる頃から、お酒が大好きでしてぇ」
リネアの頬がわずかに紅潮している。
色っぽさが加算される。
「そうか! 俺もお酒好きなんだ。気が合うじゃないか」
「はいっ!」
「そうと分かれば、今日は宴会だ! どんどん飲め!」
——結局。
俺達は記憶を失うまで、葡萄酒を頬張るのであった。
◆ ◆
「う、う〜ん、ここは……?」
俺はゆっくりと瞼を開ける。
薄暗い部屋。
自分の家の天井ではない。
徐々に頭が鮮明になっていく。
「ああ、そういや……昨日はリネアの歓迎会で……それで、ちょっとお酒を飲み過ぎたんだ……」
——ここは、そうだ。ディック達の家だ。
飲み過ぎて、潰れて、この部屋に辿り着いたということか。
頭が痛い。
ディック達には悪いことをしたな。
「まあ、明日謝ればいっか……」
まだ眠い。
俺は再度、枕へと帰還し眠りに落ちようと瞼を閉じ——。
「失礼します」
清廉とした女性の声が聞こえた。
誰だろう?
この時の俺、まだお酒が残っている影響で正常な判断が出来なかった。
「ブルーノさん……」
その声の主は、足音を立ててゆっくりとこちらに近付いてくる。
賊か?
それなら早く起き上がらなければならない。
しかしそれは出来ない。
二日酔い……頭が痛い……まだ意識がはっきりとしない……。
「私……」
やがて——声の主は俺を見下ろす位置まで近付いてきた。
ここまで近付いてくれば、これだけ暗くても相手の顔が見える。
その声の主は——。
「私を——抱いてください」
と——。
声の主、リネアはそう言って俺に抱きついてきた。
「リ、リネアっ?」
どうして彼女が俺の部屋まで?
リネアの花弁のような髪に香りを嗅いで、初めてここで意識がはっきりとする。
「私……私……なんにも出来ないんです!」
「そ、そんなことないって! ってか、抱きつくの禁止!」
「なんでですかぁ? 私に魅力がないからですかぁ?」
そう言って、リネアが俺の顔を真っ直ぐと見てくる。
そんなわけない。
魅力的すぎて、このままでは我慢出来なくなるからだ。
「リネアリネア! まずいって!」
「まずいって? わ、私の体は美味しいですよぉ?」
よく見ると、彼女の顔は未だに赤く、舌も回っていない。
そうだ。
リネアも俺に釣られて、昨日はたらふく葡萄酒を口にしたのだ。
まだ酔っぱらっているということなのか。
「とにかく冷静になろうって」
俺はリネアの両肩を掴んで、ゆっくりと体を離す。
そうすると、リネアは不満そうにほっぺを膨らませ、
「むぅ〜、どうしてですかぁ?」
「どうしてって?」
「どうして私を受け容れてくれないんですかぁ?」
いや、受け容れるとか容れないとかそういう問題じゃない!
「私……酔っぱらってると思いますかぁ?」
リネアがとろーんとした瞳を向けながら続ける。
「酔っぱらってるだろ!」
「酔っぱらってないですよぉ、まだまだいけるんですからぁ。私、お酒強いんですからぁ」
酔っぱらってるヤツに限って、そんなことを言うんだ。
「私、考えたんですよ……どうしたら、ブルーノさんに恩返し出来るかって」
「だから……」
「私はドジです。でも……自分で言うのもなんですが、私——結構、胸大きいですよ?」
そう言われて、自然と視線が下に向いてしまう。
大きく開かれた胸元。
服の上からでも分かる、大きな双丘。
……大きい。
そしてすごい柔らかそうだ。
しかも胸だけではない。
スカートがはだけ、健康的な太ももが露出しているのである。
この薄暗がりの中、リネアの白い肌が輝いているように見えた。
——ゴクリ。
「あっ今、エッチなこと考えましたねぇ?」




