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108・おっさん、しなしな事件を解決する

 そして翌朝、思いも寄らない事件が起こったのだ。


「ポテトスライスがしっけている……」


 昨夜作ったポテトスライスを確かめると、しなしなになっていたのだ。


「考えていなかったな……」


 昨日あれほどパリパリだったのに……。

 でもまあよく考えてみると、空気にさらされているわけだし、湿気のあるところに置いていたら、こういう風になるのは当然のことだったかもしれない。


「ブルーノさん、どうしたんですか?」

「ポテトが……しなしなに……」


 起きてきたリネアにポテトスライスを見せてあげた。


「おー、ポテトスライスなのだー。私が食べるのだー!」


 おっ、今日はドラコも早起きなんだな。

 それを横からドラコがパクリといく。


 しかし……。


「……しなしななのだ。これはこれで美味しいけど、昨日の方がもっと美味しかったのだ」

「だよな」


 俺もポテトスライスを口にしてみた。


 うん……やっぱり、昨日あれだけあったパリパリ感がなくなっている。

 しかし、これはこれで塩がよく染みていて不味くはない。


「とはいっても、これをお客さんに出せるわけもない」


 どうしたらいいものか……。


 俺が頭を悩ませていると、


「せめてアイテムバッグにポテトスライスを入れられれば、保存はききそうなんですが……」


 リネアが頬に手を当て、困り顔で言った。


「アイテムバッグ……」


 アイテムバッグとは、中に入れたアイテムや食材をそのままの状態で保存出来る優れものである。

 大きさも様々であるが、アイテムバッグには魔法が施されており、見た目以上の容量を誇っている。


「確かにアイテムバッグがあれば、お客さんが開けるまで、ポテトスライスはしなしなにならない……」


 しかし——そのアイテムバッグを手に入れることが大変なのだ。

 何故なら、どれだけ小さいアイテムバッグでも高価であることがほとんどだからだ。


 そのアイテムバッグの仕入れ値も乗せていたら、誰も買ってくれなくなるだろう。

 ってかポテトスライスの何百倍も値段がするので、本末転倒になってしまうのだ。


 だが。


「俺なら作れることが出来るかな?」


 何故なら、俺はスキル【スローライフ】を所持しているからだ。



 スローライフに関することを()()()実現する。



 このスキルさえあれば、スローライフに関する『生産』という部分も過度に実現することが出来るかもしれない。


「リネア、ドラコ。ちょっと待ってろ。パリパリのままポテトスライスを食べられるようにやってみるから」

「はい?」


 リネアは不思議そうにしていたが、俺は意に介せず二階の一室へと向かった。




 三十分くらいしてから、一階へと戻った。


「ブルーノさん、なにをしてたんですか?」


 首をかしげるリネア。


「ああ……実はこれを作ってたんだ」


 そう言いながら、リネアの前に『これ』を差し出した。


「それは……ただの袋のように見えるんですが?」


 そうなのだ。

 彼女の前に差し出したのは、一見ただの袋にしか見えないものである。

 大きさとしては、俺の顔くらいだろうか。


 だが、侮ることなかれ。


「この中にポテトスライスを入れて、販売しようと思う」

「あっ、それは良いかもしれませんね。お持ち帰り出来やすいようにですよね」

「そうだ。でもそれだけじゃない」

「はい?」


 リネアの頭上に『?』マークが何個も浮かんだ。


「わあーい、ポンポンするのだー」


 ドラコにいたっては、俺の手から袋を奪って中に空気を入れて遊んでいる。


「まあ……試しに()()作ってみたから、一個くらいドラコにプレゼントしてもいいけど……」


 ふう、と息を吐いた。


「リネア。この袋はな……ポテトスライスをそのままの状態で保存出来るんだ」

「そのままの状態で……ですか?」

「まだあんまり理解してないか」

「正直ブルーノさんが、なにを言ってるか分からないのです」

「ふむ……じゃあ、百聞は一見にしかずだな。とりあえず、ポテトスライスをもう一回作ろうか」

「はいっ!」


 と俺とリネアはエプロンを着け、台所へ向かった。


 そして無事にポテトスライスを作り終え、袋の中にそれを入れる。


「後はこれを封をして……明日になってみたら、俺の言ってることが分かるよ」


 ポテトスライスの入った袋は十個分になった。

 本当はもうちょっと作っていたけど、残りはドラコと一緒におやつにでもしよう。



 そしてさらに翌日——。



「リネア、袋を開けてみな」

「はいっ」


 まだドラコ達が目を覚ましていない早朝。ポテトスライスの入った袋を手に取り、リネアに渡す。


 リネアは緊張した面持ちで袋を開け、そして——。


「……! すごいです、ブルーノさん! ポテトスライスがパリパリのままです!」


 ポテトスライスの一つを口にしてみて、声を出して驚いたのだ。


「だろ?」


 俺もリネアと同じようにして、ポテトスライスを食べたみた。


 パリパリ。

 うん。予想通り、揚げたてパリパリのポテトスライスだ。


「一体、この袋はなんなんですか?」

「これはアイテムバッグだ」

「アイテムバッグ? あのアイテムや食べ物をそのままの状態で保存出来るものですよね」

「そうだ」

「こんな形してました?」

「改良したんだ」

「……?」


 アイテムバッグは食材そのままの状態で保存することが出来る。

 そのため、長期間ダンジョンに潜る時等は、かなり重宝するのである。

 ポテトスライスしなしなになる事件については、このアイテムバッグを使えば解決出来ると考えたのだ。


「この袋ごと渡せば、みんないつでもパリパリのポテトスライスを食べることが出来ると思うよ」


 パリパリ。

 ポテトスライスを食べながら、そう続けた。


「で、でも……アイテムバッグってかなり高価なんじゃ?」


 リネアがお金の心配をしている。

 確かに、普通ならアイテムバッグと一緒にポテトスライスなんか売ってしまったら、赤字必至だろう。


 だが。


「心配するな。そんなにお金かかってないから」


 ——というか、そこらへんの石とか草を集めて作っただけなので、ほぼ0だ。

 石が草がアイテムバッグに変化するとは。いやはや【スローライフ】の生産性には驚きである。


「だから気にせず、ポテトスライスがガンガン作っていこう。きっと人気商品になってくれるはずだよ」

「そうですね!」


 そして今日もリネアと一緒にポテトスライスを作るのであった。

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