第19話 秘薬
・・・ナタス(悪魔)は俺に言った。
「簡単な事だ。この薬を飲めばいい。・・・この薬は『戻るんデス』。一粒飲めば3時間。二粒飲めば6時間。三粒飲めば9時間過去へ戻れる。」
お前はどこの悪徳業者だよ。
てか他に名前なんかあるだろ・・・。
まず俺はそう思った。
だがそれと同時にナタスならそれぐらいやれるだろうとも思った。
「ただし・・・勘違いするなよ?過去へ戻っても過去の自分は存在するんだ。だから未来を変えるなんて事も出来はしない。この薬はただ、同じ時間に自分を複数存在する事が出来るようになる薬だ。」
「・・・え???過去に戻れるんだろ?未来を変える事も出来るんじゃ・・・?」
正直ナタスの言っている意味の半分以上は意味が理解できなかった。
「まぁ体験するのが一番だ。とりあえず今回キミにこの薬を全てあげよう。・・・・・忠告としてだが『一秒一秒を精一杯生きろ。未来をやり直せるなんて思うな』そんなところだな。」
「わかった。だがこの薬本当に大丈夫なんだろうな?見るからに怪しい色してるが・・・。」
そう。
この薬、色は紫。
ビンにはドクロマーク。
完璧な毒薬にしか見えなかった。
「私を信じられないのか?理論上は完璧だ。・・・・・・・・・人体実験はまだしていないが。」
後半ボソボソとなにを言ってるか分からなかったが、ナタスを信じられないはずが無い。
今まで俺はナタスに何度と無く助けられた。
それにナタスの発明品なくしては今の快適な生活など出来はしない。
俺がこの5年間。
一番長く同じ時間を過ごしたのはベルの次はナタスである。
ナタスは俺の知る女性の中で最も頼りになる知的な女性。
唯一、外面的にも内面的にも年上の女性。
・・・・・その他の女性がアホで幼いなだけかもしれないが。
「・・・・・わかった。それじゃあ来週はこの薬を飲んで生き延びてみせる。」
「それでこそ私の惚れた男だ。どうなったかデータは私に報告しろよ?・・・・クックック。これだからライトの研究は止められない。」
相変わらずの口癖と笑い声。
これさえなければ美人な姐御なんだがな。
「・・・了解。身体に異常が出たりしたら怖いから報告はするさ。」
そして部屋を出ようとした俺にナタスは言った。
「・・・・・・・・・あんまりデレデレするな。私も女なんだ。」
声は小さかったが俺にはそう聞こえた。




