表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
堕落聖女と変態魔王  作者: 竹輪
〜聖女編〜
19/117

17、最悪な目覚め



「っ……ゔ〜〜」


今朝は最悪な目覚めだった。

お説教という名目で行われたワカラセ行為は、未成熟な幼女の心には効果抜群だった。傷付いた柔らかな心に、エマは年甲斐もなくぺそぺそと泣きに泣いた。

泣いて、泣いて泣き疲れて、水も飲まずに眠ったせいで頭が痛いし目も腫れた。声も枯れて身体も怠い。

隣で呑気に寝息を立てる男を睨みつける。


「こいつ、まじこいつ...」


ふつふつと怒りが湧き上がる。

原因がまだ安眠しているのが気に食わない。

シオンのせいなのに、平和そうな顔で寝やがって。寝不足と頭痛によって引き起こされるイライラが募る。

全部、全部シオンが悪い。

旅の不平不満が思い出されて、エマは唐突に怒鳴り散らしたくなった。

持ちうる限りの語彙力で罵り、(なじ)り、言葉の暴力という暴力を浴びせてやる。

言うぞ、言ってやるぞと口を開いて「それはシオンを喜ばすだけだぞ」と冷静な自分が囁いた。喜怒哀楽、どの感情を向けたところで変態(シオン)は観客するぞと。

力なく口を閉じていく。

ぽすぽすと布団を叩いた。

足りない。

行き場のない感情を持て余して、八つ当たりするように目に入った花を燃やした。

紫色の花がぼとりと落ちて、消えた。


「ーー?おっ?」


花が灰になるとなんだかスッキリした。

頭痛は相変わらずだが、苛立ちは治っていた。

それがアンガーマネージメント...。自分の機嫌を自分で取れちゃうなんて、なんて偉いのだろう。

ふんふんと鼻を鳴らす。


「お腹すいた」


ベットから降りて身なりを整える。

スッキリしたらお腹が空いたので、シオンを叩き起こして朝食に向かった。 



***********



「ごちそうさまでした」


空になったお皿の前で手を合わせる。

宿を出たふたりは、朝食をパンとシチューで手早く済ませていた。

食後のコーヒーで喉を潤していると、積み上がった皿を眺めていたシオンが心配そうに呟いた。


「もうよいのか?」

「うん、なんか頭痛くて」


デブリンでの食べっぷりと比較すると、今回の量はその4分の1にも満たない。少な過ぎると眉を下げる彼に、今朝からの不調を伝えたれば嬉々として膝を叩いた。


「風邪か!」

「生き生きとするな」


ガタッとテーブルに乗り上げる勢いでシオンが腰を上げる。人様の体調不良に興奮すな、と一喝して腰を下ろさせる。

看病したい欲求が顔から圧が滲み出て、口ほどに物を言っていた。

ええい、喧しい顔面を仕舞え。


「わたしのことはいいのよ。それよりも、探すことが最優先」

「最優先事項はエマが世界の女王として君臨することだが..……また夢を見たのか?」

「いつそんな野望を抱いた」


ちなみに夢は見ていない。

散々グズって眠ったせいか、夢のゆの字も無いほどぐっすりと眠った。気付けば頭痛に支配された最悪の朝。

白狐の夢どころか普通の夢も見ていない。

夢見は解決するか対象が死亡するまで、俺の夢は(エンドレス・)おわらねぇ(シー・ドリーム)させる拷問。一度で終わったという事は、ただの夢だった可能性が高い。

高いのだがーー


「ただの夢で片付けるには、わたしはこの村を知りすぎてる」

「死んだのではないか?」

「うーん、デリカシー」


ーーーそれにしては気になる点が多過ぎた。


エマはコンコ村に来たことがない。

村の名前と名産食しか知らない。

でも知っていた。教会や宿の場所だけではない。宿にある備品の位置や間取りまで、夢で見て知っていた。

夢は記憶を整理するための作業だ。

ある程度が似る事はあっても、知らない情報が現実と完全に一致する事はまずあり得ない。

だがエマは知っていた。

現実と一致していた。


「それに残香よ。残香の説明が出来ない」


あそことあそこと、それからここも。

宿の壁に、裏路地の地面に、村人の屋根に。

指を刺す場所には光魔法の残香がべったりと付着していた。隠す気がまるでない。今にしては珍しい光景だ。

それは、昨日よりもはっきりと確認できた。


「頭痛で敏感になってるのかもしれないけど、それにしたって多すぎる。普通なら通報されてドナドナ一択だよ」

「教会の聖女()や聖職者ではないのか?」

「あの子たちはレベルにすると3だけど、残香は20はあるから別人」

「どうりで背後に立っても無反応なはずだ。ナイフも持っていたんだがなぁ」

「止めろ、普通に捕まる!」


シオンの頭を軽く叩いた。

確認のやり方が狂人過ぎて恐ろしい。もう少し文化的な手段を選んで欲しいところだ。

頭が痛い。

早めに調べて此処を出たい。

見殺しは後味が悪いから調べるけど。


「調べたらすぐにココは出る。頭痛いし」

「ムラムラか」

「ムカムカかな」


朝食を終えたふたりは店を後にした。





ありがとうございます!

次回からは駆け足だ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ