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「デア・ルーラーは、敵の攻撃を受けジェネレーターが暴走を始めたの、爆発の危険があるから戦線を離脱。何とか修理しようとしたけどジェネレーターが爆発する危険が90%以上って結果が出て、デア・ルーラーの放棄を決定。本当なら、自爆か、友軍に撃沈してもらうんだけど、自爆システムはダウン。友軍も近くに居なかったから、最低限緊急廃棄プログラムを実行して総員退艦。私達は宇宙の彼方へと飛んで行くデア・ルーラーを、脱出艇に乗って見送るしかなかったの。脱出した後は、この艦隊に救出してもらって、この艦に厄介になっていたら、突然消えは筈のデア・ルーラーが突然この艦隊の前に現れた。それもどう見ても長い時間を掛けて劣化し、改造された姿でね」

 余計な事言っちゃったわねと苦笑するジェシカ中尉。

「今日のお話はこれでおしまいにしましょう。私は、この事を臨時司令部に報告してくるわ。貴方は休みなさい。もう夜の時間だわ」

「はい…」

 クレハは、自身がトルーデ王国で冤罪で悪逆女王と呼ばれた女王モミジの子孫だという事実を知らされ、ショックを受けていた。これ以上の対話は止めておいたほうが良いとジュリア中尉は判断した。

「それと、貴方が休んでいる間、そのKMB-06をこちらで預かりたいんだけどいい?」

「嫌っ!」

 その瞬間、クレハは机の上にあったサスケを抱きかかえた。それは幼い子供が、自身の宝物を取られまいとするかの様だった。

 過去の世界で、唯一の本当の自分を知るものであり、今まで助けてくれたサスケから引き離されるのは、今のクレハにとって恐怖以外の何者でもなかったのだ。

「でも、彼が壊れたままなのは、かわいそうでしょ?ここだったらパーツも揃っているし、すぐに直せるわよ?」

 何とかしようとするが、クレハはイヤを繰り返すばかり。

「であるならば、私の要求するパーツを持ってきてくれ。この程度の損傷であればパーツさえあれば、私は自分で自分を治せる」

 サスケはクレハに抱えられたまま答えた。

「えっ?」

「君達に私を修理する意思があるのならば、パーツのリストを渡すので持ってきてもらえるか?」

「…申し訳ないけど。それは出来ないわ」

 下手にパーツを与えてそれで武器を作られたらたまったものでは無いだろう。艦の危機管理の見地から言っても妥当な判断だ。

 ここで無理矢理取り上げるという手もあるが、それを行った場合、クレハとこの艦隊の人間との間に致命的な亀裂が入り、信頼関係の構築などは不可能になってしまう。

 自身らが君主と仰いでいる人物の若い頃に瓜二つの容姿を持つ少女と率先して嫌われたいと思う人間は居ない。

 顔をそっくりに整形しているという可能性もあるが、それはDNA検査をすればはっきりする。それまでは、下手に関係の悪化させるリスクを取ろうとは思わない。

「じゃぁKMB-06用のバッテリーを一つ貰いたい。もちろん充電済みの」

 その返答を予想していたサスケは、難易度を下げた注文を付けた。バッテリーのみだったら

「う~んそれくらいだったら良いと思うわ。でも、上に許可を得てからになるから、少し時間掛かるわよ」

「問題ない。現在のバッテリーでも一日は持つ」

「じゃぁ私は。報告に行くわ。一応外に見張りを立たせておくけど、くれぐれも部屋の外に出ない事。何かあったら壁にある端末で、連絡して。あの端末は私に直接繋がるようになってるからね」

「…」

「ああ、分かった」

 いまだに、サスケを抱え込み俯いているクレハの代わりにサスケが答えた。

「あと、クレハさん。あまり考えすぎないほうが良いわよ。じゃあね。おやすみなさい」

 最後にそれだけ言うと、ジェシカ中尉は部屋から出て行った。


「サスケ…私…」

「休めクレハ。考えるのは後で良い。ここに君の追ってはいない」

「うん。サスケ、あなたは何処にも行かないよね?そばにいてくれるよね?」

「言っただろう。君が絶対に生き延びると思い続ける限り、君と私は、目的を同じとする同士だ。…もしかして、自身の出自を知って死にたくなったか?」

「違うっ!」

 クレハは叫ぶと同時に、サスケを少しからだから離し、カメラアイと目を合わせた。

「絶対に生き延びるって気持ちは変わってない。でも…でもね…。不安なの。トルーデには友達が一杯居るわ。きっとその子達が私の出自を知ったら、私から離れていく…。それが悲しいのよ。もしかしたらお父様も…」

 クレハの瞳からポロリと一筋の涙がこぼれ落ちる。

 サスケは、想像する。ボットでしかない自分が、クレハの感じる悲しみを…。

 サスケにとって出自とは、製造元を示すただの記号でしかない。

 それでもサスケが理解出来る形で当てはめて考えた。

(クレハは、自分の製造元が、世間から不良品を出した工場で作られたモノだと知った。それゆえに周りから自分が周りから不良品だと思われるのを悲しいんでいる。だが、そもそも不良品が出たという事実が無い。であるならば…)

「クレハ。君は、悲しむ必要は無い。君は、不良品が出たと報道した社会に訴えをおこし、報道した社会に損害賠償を請求すべきだ。しかる後、名誉の回復を宣言するのだ」

 その瞬間クレハはきょとんとした表情になった。そしてサスケのあまりに滑稽な理解に笑い出した。

「アハハハハ!何言ってるのよ。サスケは!」

 サスケが人であるクレハを完璧に理解できないように、クレハも又機械であるサスケの事を完璧に理解出来ない。だが、それでも一機と一人の間にも分かる事はある。

 それは、相手が自分を心配してくれているという事。

「うん。今日は休むわ。どうせ私の友達や知り合いが生まれるのは、まだ何百年も先だものね」

 クレハは、サスケを抱え込んだまま、ベットにもぐりこんだ。

「私を抱えたままでは寝づらいだろう?」

「でも、私が眠ってる間に持っていかれたらイヤだから…」

「そうか…」

 しばらくすると、クレハは寝息を立て始める。

 サスケは部屋のシステムにアクセスすると、部屋の明かりを暗くした。



 クレハに宛がわれた部屋から出たジェシカ中尉は、その足で艦長室に向かった。

 扉の横に付いた端末を押し、入室の許可を待つ。

 端末から、艦長付きの副官の声がし、用向きを尋ねた。

「ジェシカ中尉であります。遭難者の事情聴取が終わりましたので、ご報告に上がりました」

「入れ」

「失礼します。クロードロン艦長」

 軍艦の中ではかなり広い部屋を歩く。その大きさは10畳ほどであろうか。ほとんど物は置いていなかったが、壁には大きなモニターや、この艦のクルーの集合写真などが飾られていた。部屋の奥には部屋の大きさの割りにこじんまりとた机があり、この艦の長がその席について仕事をしていた。部屋の隅には帽子掛けが置かれ、艦長の制帽がそこに掛けられていた。

 クロードロン艦長の手元には端末があり、その画面には各艦の修理状況や負傷者などの情報が送られてきていた。

 ジェシカ中尉が机の前まで来ると、画面から目を離し、彼女を見上げる。

 口の周りにもっさりとした髭を生やした壮年の男性だ。野趣あふれるダークグレーの瞳を持ち、口には、火の着いていないパイプをくわえている。

 厳つい顔をしているが、実はタバコは吸えず、尊敬している人物がパイプを持っているからと言って同じタイプのパイプをくわえている。

 ただ、クルーの誰もが、クロードロン艦長が尊敬しているその人物が誰かは知らない。

 それでも、クロードロン艦長は、士官学校をしっかりと卒業し、幾多の戦場を渡り歩いてきた生粋の軍艦乗りだ。部下からの信頼は厚い。

「報告を聞こう」

「はっ!」

 ジェシカ中尉は、クレハとサスケから聞いた話を包み隠さず話した。

 報告を聞いたクロードロン艦長は、頭を抱えた。


 先の戦い。地球連邦との決戦では、この戦艦フェルニダードが突撃艦隊の中でも先陣を切った。だが、当然敵からの猛攻を受け被弾、艦隊の中で最初に落伍した。

 トルーデ軍では、戦闘不能または、突撃速度が出せなくになった艦は即座に艦隊から離脱しなければならない。これは、被弾した艦が、へたに艦隊に居る事により、爆発し、味方艦に損害を与えたり、速度の出なくなった艦に合わせて速度が落ちない様にする為だ。

 落伍したフェルニダードは、あらかじめ決められていた落伍した際に集合する場所であるこの宙域に移動し、艦の修理と、その後から続々と集まってくる味方艦のとりまとめを行っていた。

 そんな時だ。が正体不明の光に包まれた、所属不明の駆逐艦が現れたのは。

 型式から、トルーデ王国から作られた駆逐艦である事はすぐに分かったが、対象の艦は識別信号を一切出さず、動力炉も止まっていた。なのに突然現れた。不気味以外の何者でもない。

 だが、現れた駆逐艦の正体はすぐに分かった。 

 何故なら、その艦に乗っていたクルーがフェルニダードに救助されて、搭乗していたからだ。

 何とか砲が撃て、動ける艦で取り囲み、誰何を行ったが、通信装置が壊れているのか返事は無い。どうしたものかと考えていたら、デア・ルーラーから古い光通信によって救助信号が発信された。

 救助信号が発信されたのなら救助をしない訳にはいかない。

 救助隊を送ってみれば、居たのはモミジ陛下と瓜二つの顔を持つ少女と、流暢に喋るKMB-06、それにまだ起きてはいないがサイボーグ化された老人。

 わけが分からない。


「ウゥム。君は、この少女が本当に未来から来たモミジ陛下の子孫だと思うかね?ジェシカ中尉」

「モミジ陛下の子孫かどうかは、DNA検査の結果を待たなければ分かりませんが、未来から来たというのは、信じられそうです。事実、突然現れたデア・ルーラーをカイルマン大尉の部隊が調査したところ、それだけの経年劣化を確認しましたし、デアルーラーの格納庫や倉庫内に製造年月日が未来の食料や、どの様な機能を持つか分からない機械などが多数発見されています」

「未来がボロ舟に乗ってやってきた…か。私一人では、判断が出来んな…。件の少女は今どうしている?」

「現在は、部屋で休ませています。相当疲労していたようで今は、眠っています。もう一人の同行者は現在医療用カプセルの中に入れて様子を見ています」

「君は今の話を2時間以内に纏めて提出してくれ。それを他の艦に送り意見を募る。それにしても旗艦でクーデターが、それにしてもウィリアム公が起したと言うのは信じられんな」

「はい。ウィリアム公は、モミジ陛下を良く支えていた方ですから…」

「だが、プラネットインテェリウムを陛下以外の命令で撃てるとしたら、ウィリアム公以外考えられん。プラネットインテェリウム搭載艦はウィリアム公麾下の艦隊に属しているからな」

「ですが…」

「一応、ウィリアム公の艦隊に探りを入れよう。不確実な情報だが、だからこそ確認せねばならん」

「ハッ!」

(だが、その事を知る事が出来たとして、損傷した艦しか無い我々に一体何が出来るのか…?例え、他の艦隊に連絡したとしても、情報元が自称未来から来たと言う正体不明の漂流者からだと知ったら絶対に信用されないだろう。何にせよ我々は今出来る事をせねばならない)

「朝になったら、食事を取らせてここに連れてきてくれ。もちろん他のクルーに顔は見られないようにしてな。直接話を聞く必要があるだろう」

「は!了解しました」

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