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 時間は元に戻る。

 きっちりと研究所へと狙いを定め、スカルヴァイドから放たれたビームは、見ている誰もがデブリを突き抜け、ビームは研究所へと着弾するだろうと思っていた。

この宙域には大量にデブリが浮遊しているが、ビームが通る程度の隙間は沢山ある。


 撃たれる直前。それを察知したサスケ達は早速クレハ考案の装置を動かした。

「敵からのロックオン確認。攻撃が来る」

「シールドリング。ディフェンスモードじゃ!」

「お願い!ちゃんと動いて!」

 シールドリングとは、正に研究所の周囲を回っているリングの事だ。リングを構成しているのは、この宙域に漂っているデブリだ。多数のデブリが研究所の周りを同時に回っている。

 本来なら惑星とは程遠い質量しかない研究所にはリングが出来るような重力(引力)は無い。

 だが、研究所の倉庫には、破壊された艦船の残骸から回収して修理した重力発生装置が大量に保管されていた。それらを連結し、重力(引力)を発生させたのだ。

 今は、研究所に落ちはしないが、研究所から離れる事も無いスピードで大量のデブリを研究所の周りを飛ばしている。

 つまり簡単に言えば人口的に土星の環を研究所の周りに作り出したのだ。


 プロフェッサーが装置を動かすと研究所の周りを回っていたデブリがゾワリと動きを変えた。

 研究所のほぼ中心から数十m離れた位置で作られたリングが、ビームの着弾すると思われる位置を覆い隠すように動き出す。

 ビームは、そのままシールドリングに当たり、輪の中のデブリを蒸発させながら直進する。が、次から次へとビームの斜線に割り込んでくる為、スカルヴァイドから放たれたビームが削られ、散らされる。それでも研究所へと着弾するが、その段階になると、研究所の周りに蓑虫の蓑のような外殻を貫くような威力は持っていなかった。

「なんやてぇ!?」

 それを見たデアードの声が彼の居るブリッジに響く。

 同じような声がスカルヴァイトのブリッジにも響いていた。

 駆逐艦といえどビーム砲はビーム砲だ。その威力は、折り紙付。だが、そのビームが直撃しても研究所には僅かな傷しか付けられなかった。近距離であれば戦艦の装甲を貫く事が出来るビームがかすり傷程度しか付けられなかった事に、騒然となるブリッジ。だが、デルトンだけは違った。

「ハッ!いくら守ろうと、それで勝てると思うなよ!!」

 艦長席に座りながらデルトンは歯をむき出しにして笑った。

「何やってやがる!たかが一発防がれただけだろう!撃って撃って撃ちまくれ!」


サスケ達は、モニターの前でその様子を見ていた。

「…敵弾命中!ただし、シールドリングにより攻撃力の大幅な弱体化を確認。研究所表層の装甲に微小な損傷」

 端末に接続して、状況を見ていたサスケが報告する。シールドリングによって弱体化されたビームは、研究所の装甲をほんの少し融解させることしか出来なかった。

「やった!」

 シールドリングのアイデアを出したクレハが喜んだ。

 クレハが、重力発生装置によるデブリの活用を考えたのは、あのクレハが悪夢を見る原因となったあのドラマだった。あのドラマの中に、主人公が乗っていた船の重力発生装置が誤作動し、周りに在ったデブリを引き寄せて大変な目にあうという話があった。その時のシーンに船の周りにデブリの環が出来ていたのだ。それをヒントに思いついた

 デブリをそのまま使うという発送は、デブリになった機械部品を修理したものを使うという固定概念に囚われていたサスケとプロフェッサーには無い発想だった。

「重力発生装置正常作動。動作に問題は無い」

「しかしお嬢ちゃんも良く考えたもんじゃな!重力発生装置でデブリを引き寄せ、それを使って防御するとは…」

「えへへ!」

 クレハは、嬉しそうに無重力でふわふわと浮いている自分の髪を撫で付ける。

「どんどん来るぞ!備えろ!」

 次の瞬間、四隻の海賊艦から次々とビームを撃ち始める。

 サスケは、敵艦の砲口を観察し、研究所の何処を狙っているかを正確に計算。着弾予想地点を覆うようにリングの軸をずらして行く。

 ビームがリングを構成しているリングに次々と当たり飛沫が飛び、ビームによって溶けたデブリが研究所へと当たりへばりつく。

「この状態を維持するのは危険だ。研究所の過負荷で重力発生装置が吹っ飛ぶぞ」

 サスケの報告にプロフェッサーも自身の前にある端末を操作する

「今なら、やつらもこちらに集中しておるじゃろう。計画を次の段階に進めるのじゃ。さぁ糞餓鬼共は慄くが良い!」

 プロフェッサーは、端末にコマンドを入力すると実行キーを迷い無く押した。



 スカルヴァイドのブリッジでは、ビームがリングへと当たり飛沫を散らしている様子がよく見えた。

「撃って撃って撃ちまくれ!あのリングを剥いじまえば、こっちのもんだ!それとビームの出力を上げろ!」

 どっちにせよあのリングを排除しなければ、危なくて研究所に接舷する事すら出来ない。シールドリングの破壊は、必須だ。

 デルトンは、ビームを撃ちまくっていれば、いずれあのリングを構成しているデブリが全て弾き飛ばされると考えていた。

 それに呼応するように他3隻の駆逐艦から発射されるビームの出力が上がる。絶え間なく放たれ、シールドリングを貫きながら研究所の表面へと着弾し、装甲を削る。

「研究所を囲っているデブリだって無限じゃねぇ。ビームで全部引っぺがしちまえ!」



「…と奴らは、そう思っているだろう」

 明らかに出力の上がった敵のビーム砲によってシールドリングが削られていく様子が映っているモニターを見ながら呟いた

「デブリの補給状況はどうなっているんじゃ」

「順調よ。外に出てたメンテナンスボット達が、ちゃんとデブリをこっちに送ってる!」

 クレハの見ているモニターには改造し、任意の方向に重力を発生させる事が出来るように改造された重力発生装置を組み付けられたメンテナンスボット達が、組み付けらた重力発生装置を使って細かなデブリを研究所に向けて落としている姿が映っていた。


 研究所を中心に丁度海賊艦隊が居る面の反対側では、多数のデブリが川のように流れていた。それの終着点はもちろん研究所だ。無数のデブリという綿から糸をつむぐようにメンテナンスボット達が研究所の方に飛ばし、研究所を芯とした糸巻きで巻き取られるようにデブリはシールドリングに加わる。

 当然それらは海賊達に見えない位置で行われている為、海賊達は誰もその事に気付く事は出来ない。

 

 数十分後、艦を止め、じっくりと砲撃を続けているのにも関わらず、一向にシールドリングの密度が変わらない事に、デアードが苛立つ。

「なんでや!何であのけったいなリングが無くならへんねん!」

 ビーム砲を出力を上げて撃ち続けているというのに、研究所の周りを飛ぶリングの密度は一向に変わらない。むしろ、その密度を上げているようですらあった。

 打って変わって海賊側は、出力を上げたビーム砲を撃ち続けていた為に砲身がオーバーヒート寸前。ジェネレーターからのエネルギーも足りなくなっていた。

「お頭!ビーム砲に回すエネルギーが枯渇し始めました!それに、これ以上同じ出力で撃ち続けたら砲身が持ちませんぜ!」

 既に研究所の正面は傷だらけになっているが、それでリングの能力が下がっている様子は一切無い。

「ちっ!主砲の出力を下げろ…。あと砲の収束率を下げろ!まずはあの忌々しいリングを壊せ!他の艦にもやらせろ!」

「それではあの研究所まで!攻撃が通りませんが?」

 副艦長が反論する。

「良いんだ!言われたことをとっととやれ馬鹿野郎!」

 砲の収束率を下げると威力は下がるが、その分効果範囲が広くなる。いわば、ショットガンの様にしようと言うのだ。研究所本体への攻撃を諦め、先に研究所の周囲を取り巻いているデブリの排除を優先する判断だ。

それは、即座に火器管制官と他の艦に伝えられた。

 他の艦も明らかに放たれるビームの太さが太くなった。これにより先ほどより、はるかに効率よくデブリの破壊が出来るようになった。

「お頭大変です!無数のデブリがこっちに向かってきます!」

「ああ!この辺りはデブリばっかなのは当たり前じゃねぇか!馬鹿は報告はするんじゃねぇ!」

「そうじゃないんです!お頭!戦闘中だとしても異常な数のデブリが、こちらに向かって来てるんです!」

「なにぃ?」

 デルトンが、自身の席にある端末にレーダーを表示させるするとそこには、スカルヴァイド…いや海賊艦隊に大量のデブリが向かってくる様子を映し出した。

「こいつぁ…っ!シールドを左舷に張れ!」

 他の艦もほぼ同時にシールドを展開し、向かってくるデブリに対して防御を固める。

 対空火器で防御するには、デブリは小さく、そして数が多かった。

 

 シールドの展開は各艦共に間に合い、シールドに無数のデブリが衝突した為に生じるスパークがバチバチと無数に発生する。

 小さなデブリがぶつかる程度では駆逐艦のシールドは当然破れない。元々敵艦のビーム砲を防ぐ為のものである為にその出力も高い。だがそれにも限界はある。

 タダでさえビームの乱射により、エネルギーが少なくなってきており、ジェネレーター出力を限界にまでまわしたとしても、シールドを張り続けるには心もとない。

 そんな状況を打破する為に、前進するように命令した。

「ここにいるのは危険だ!前へ出ろ!あのデブリの川の範囲内から抜けろ!」

「ですが、この場所は狭く前の艦にぶつかる可能性が!」 

「なら、前に居る奴に早く進め!でねぇと沈めるぞ!と言え!馬鹿野郎!」

「はぃ!」

 スカルヴァイドが通信を送ろうとした瞬間、デブリが向かってくる方とは反対の方向から一筋のビーム砲が放たれた。放たれたビームは、先頭を進んでいた駆逐艦ディロットの推進旗艦へと直撃した。

 推進部が一瞬風船のように膨らむと、一気に爆発する。その爆発で先頭のディロットはバランスを崩し、その場で縦横に回転を始めた。

 そうなれば、後続に居たスカルヴァイドを含む3隻はぶつからないように停止するしかない。

「シールドを正面に展開!前部スラスター最大出力!」

 艦首についているスラスターが停船する為に全力でふかす。

 艦長席で前に飛び出しそうになる体を押さえながらデルトンが叫ぶ。

「野郎はめやがったな!ビームの発射地点を特定して破壊しろ!あの糞商人!あのあたりにビーム砲があるなんてデータには無かったぞ!」

 爆発したディロットのパーツが、ガンガンとスカルヴァイドの艦体を叩く。

「おい!どうなってやがる!」

『わてもそんなん知りまへん!』


 海賊達がプロフェッサーの縄張りに入った時、最初は海賊達も隠されたビーム砲の位置がデアードの提供したデータと違う場所に移動していた場合を危惧し、行動していた。だが、データどおりの場所にビーム砲がある事と、研究所を覆うリングシールドを見てデルトン達は、"あんなものを作っていたのだから設置していたビーム砲を移動させる事ができなかった"と思った。

 思ってしまった。

 海賊達の最大の誤算だったのが、サスケと言う異常存在がプロフェッサーが側に居た事だろう。

 確かにデアードの盗聴した記録には、プロフェッサー、クレハ、サスケの声が記録されていた。一応デアードも、正体不明のサスケの正体を探ろうとしたが、サスケに関するデータなどデアードの調べら得る範囲にあるはずがない。結局はサスケについて何も分からずに今日と言う日が来てしまっていた。


 サスケは、迎撃作戦が決まるとシールドリングの設置と、隠し砲台の移動。そして、デア・ルーラーの修理を24時間ほとんど休む事無く、尚且つ効率よくメンテナンスボット指示しながら人間では不可能な事をやってのけた。


 海賊達は、クレハ、サスケ、プロフェッサーが張った罠へと無用心に足を踏み入れていたのだ。

ストックが尽きたため。今後更新が遅くなります。すいません。

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