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開けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いいたします。
商人が目で指示して、通信に出る。
すると、通信画面に、何時ものプロフェッサーの姿が映った。
『何の様じゃ?』
不機嫌そうな言い方に、来るのは予想されていた事を知る。
「ども~博士はん!儲かりまっか!」
商人は、それに表面上は普通に返した。だが、内心何してくるか分からないプロフェッサーに恐怖を抱いている。
『今日は取引の日ではなかったはずじゃが?』
「ええ、ちゃいます。今日は大事な話があって来たんですわ」
『ほう、それはお前の連れてきた物騒な連中の事か?ワシの砲台も破壊しおってからに…』
「はい。博士はんが引退なさる言うんで、今までの貸しを返してもらおうと思うとるんです」
『貸し?そんな物は無かった』
「とぼけちゃあきまへん。こんな場所まで、態々こんな危険な場所まで行商に来てたんですから、そりゃあ貸しになるってもんですわ」
『はっ。取引は双方の同意で成り立って追ったじゃろうが、そんな下らない事を言いにわしの砲台を壊してまで来たんじゃなかろうな!』
「くっ下らない!?」
『まどろっこしい事してんじゃねぇよ』
プロフェッサーの映っていたウィンドウの隣にデルトンが映ったウィンドウが現れる。これは、通信をリンクした証拠だ。つまりプロフェッサーの通信にデルトンが割り込んで来たという事だ。
プロフェッサーの見ているウィンドウにも、商人の隣にデルトンが表示されている。
『おい。テメェの所で女を匿ってんだろ?とっとと差し出しな。さもなきゃ殺す』
それは、海賊の頭に相応しい端的な脅しだった。
『はっ!そんな安っぽい脅しでワシがどうにかなると思っておるのか?たかが海賊風情が良い気になるなよ?酷い目に会う前に尻尾を巻いて逃げ帰る事じゃな。糞餓鬼』
だが、プロフェッサーはそれを鼻で笑う。
「わてが言うのもなんですが…。博士はん。今の方は泣く子も黙るロリポップ海賊団のデルトン殿でっせ!早く謝ったほうが良いでっせ!」
商人の男もハラハラしながら言う。この時商人が心配していたのは、プロフェッサーの自身の事ではなく、プロフェッサーの研究所と、そこに死蔵されているであろうパーツの事を心配していたのは言うまでも無いだろう。
『情報をお前が言うか?デアード?』
プロフェッサーの一言にデアードと呼ばれた商人の顔が引きつる。今まで名乗った事はあったものの、一度もプロフェッサーに名前で呼ばれた事の無かった。
そして、続けて言ったプロフェッサーの言葉に、デアードは衝撃を受けた。
『貴様がこんな事をせなんだら、ワシがここを去る時は、貴様にここをくれてやろうと思っていたが…商人の強欲ここに極まれりじゃな…』
「なっ!」
損得を至上の判断基準とする商人にとってタダで多数の艦船用のパーツが手に入るチャンスがあったのに、それを自分でふいにしたというのは、あまりにもショックが大きかった。
まぁそれはプロフェッサーの嘘なのだが、商人のメンタルを攻撃するのに十分な威力があった。
『もう、ここに貴様にくれてやるものなど無いわ!痛い目に会いたくなければ、とっとと帰れ!』
「くぅ!もう賽は投げられたんや!今更引けるかいぃ!デルトン殿!やっちゃって下さいな!」
顔を真っ赤にしたデアードは、叫んだ。
『言われなくても、そうするぜ!野郎共攻撃開始だ!』
『馬鹿者共め!後悔するがいいわ!』
通信は切られると同時にデットロリポップ海賊の艦から、ビーム砲の砲撃が始まった。
攻撃している様子を、後ろの艦のブリッジで見ていた商人に、駆逐艦オルガーの艦長が言う。
「…いいのか?あの様子だとあの外道達は、あの施設を壊すかも知れんぞ?」
「そうなったら、デルトンの艦を沈めればいいだけですぅ」
「まぁそれもいいかもな」
デアードと駆逐艦オルガーの艦長が話し合っている間に、スカルヴァイドの主砲がビーム砲を発射した。
時間は、プロフェッサーがソースのボトルに付いていた盗聴機を破壊した時まで遡る。
「あやつなら最後の一儲けに情報を売るはずじゃ!攻めて来るぞ!海賊共が!」
「そんな!」
「では、どうする?研究を諦め脱出するか?今なら、逃げ出す事も出来るだろう」
「ふん!ワシの理論の証明まで後ちょっとなのだぞ!今更ここで諦めてたまるか!ワシは実験を終えるまでここから動かんぞ!」
「そうか…もう、駆逐艦のジェネレーターの修理は終えている。我々は、報酬を受け取って脱出する」
無慈悲にもサスケの宣言に、興奮していたプロフェッサーは冷や水を被ったかのように黙り込んだ。額からは、冷や汗が流れ、顔が青くなっている。
「いや、まぁそうなんじゃがのう…」
「どうかしたのか?…まさか、報酬の船は無いとは言わないだろうな?」
あまりの豹変振りに、嫌な予感を感じたサスケが聞いた。
「いやいやいや、船はあるんじゃ…ただ…」
プロフェッサーは、口ごもる。
「ただ?」
「タイムマシンを作るのにちょっとパーツが足りなかったから、船ばらしてパーツ取っちゃった!テヘペロ!」
「えっ!?」
あまりの衝撃発言に、クレハが立ち上がる。
「その程度なら問題ない。すぐ解体して組みなおせば、多少時間は掛かるがどうにかなる」
「パーツは、加工して組み付けたから元に戻すのは無理じゃ」
「なん…だと!?」
あまりの事に今度は、サスケがテーブルの上で固まる。
「なっなら、私達の乗ってきた脱出艇で逃げればいいじゃない!っていうかプロフェッサーも一緒に逃げるわよ!」
「その…それも…。パーツ…貰って…動かすのはちょっと…」
だがそんな希望も、容易にプロフェッサーが打ち砕く。黙り込む二人。
「じゃってワシが船をおんしらにやったらあの脱出艇はここに置いて行く予定じゃったろ?ならあの脱出艇は用済みじゃと思ったからパーツを取ったんじゃ!おんしらもあの脱出艇からパーツを取るなとは行っておらんかったしの!」
開き直りの域に達し始めたプロフェッサーにサスケ達は脱力する。
「…」
「…」
気まずい沈黙が食堂を支配する。
「…だったら、あの駆逐艦に乗って逃げればいいじゃない?もう動かせるくらいに放ってるんでしょ?」
「動かすくらいなら出来るが、逃げれるかは別じゃ。のうサスケ君」
「現在の修復具合だと、兵装は使用不可。ジェネレーターの修理は出来ているが推進系が修理中で、あまりスピードは出ない。ワープは一応使用出来るが、どっちにせよデブリの多いこの周辺では、使用する事は出来ない」
駆逐艦の特徴は快速さと他の軍艦と比較すると小さな艦体による小回りの良さだ。その特徴が無ければ、装甲の薄いただの宇宙船でしかない。
「それにこの辺で駆逐艦が移動できるルートは限られておる。仮にこの宙域を無事出られたとしても、そこはまだ悪名高き、リンデット宙域のど真ん中じゃ。すぐに他の海賊達に見つかるじゃろう」
「ならば篭城しかないな」
普通なら罵っても不思議ではないが、サスケは罵倒している時間があったら次にどう行動すべきかを考えたほうがよいと判断し、淡々と策を練り始める。
一方クレハは、元はといえば、クレハの調味料が欲しいという我がままさえなければ、商人にクレハの居場所が知られ、且つプロフェッサーが、実験が終わったらこの場所から去る事を知られる事は無かった。それゆえに文句を言いたいと言うよりは、申し訳ない気持ちで一杯だった。
「じゃろうな。だが、問題なのは、あやつは、ワシの設置したビーム砲の位置を知っておるじゃろうという事。きっと、ビーム砲を根こそぎ破壊しながら、ここに来るじゃろうな。…戦力を集める時間を含めて、あやつが攻めてくるとしたら三日から四日と言った所じゃろう」
「今この研究所にある備品のリストをくれ」
「大したもんはないぞ?兵器関連はあの商人が優先的に持ってったからのう」
その間に、クレハは、プロフェッサーがテーブルに叩き付け床に転がったソースのボトルを回収し、飛び散ったソースを布巾で拭いていく。
プロフェッサーは、懐から端末を取り出すと、現在研究所にある物品の全てのリストをサスケに転送した。
「…これは、厳しい」
リストを見たサスケは、ポツリとそう漏らした。
リストに書かれていたパーツの中には兵装に関する物はほとんど無かった。あったとしても、それは、照準装置などの射撃補助装置であったりレーダーのパーツであったりと直接攻撃力を持つ物無い。次にサスケが探したのは推進装置系のパーツだった。ブースターなどの推進系の装置があれば近くに浮いている大きなデブリに取り付け、なんちゃってミサイルにする事すら出来ない
現在研究所の倉庫に眠っている物のほとんどが、艦の生活に関するパーツで、兵器に転用出来そうな物はほとんど無かった。
サスケとプロフェッサーがウンウンと唸っていると、ソースの片づけを終えたクレハが戻ってきた。
「ねぇ私にも見せてよ。そのリスト」
「ん?ああ、ええぞ」
お前には、期待していないといった雰囲気を出しながらもプロフェッサーはクレハの端末にもリストを送った。
「う~ん。何に使うのか分からないパーツが一杯ね…」
それはそうだ。リストに書かれているパーツのほとんどが、商品番号で表記されており、それが何のパーツなのか素人が見ても判別するのは難しい。それでも、大まかに何のパーツなのかは、大枠として書かれていたので何とかクレハにも分かった。
リストを指でフリップしながら見ていた時、不意にクレハが声を上げた。
「あ!ねぇ!これ使えない?これなら一杯あるみたいだし、使えると思うんだけど?」
「なんだ?」
サスケとプロフェッサーがクレハの指差す端末を覗き込んだ。
それは、サスケにもプロフェッサーにも予想外なパーツだった。
「これは…使えるのか?」
「これをね…」
クレハの説明を聞き終え、サスケとプロフェッサーがそれが実現可能か考える。
ドキドキとしながら、自身のアイデアが使えるがどうか祈るかのように待つ。
「…いけるかもしれん」
「そうじゃな。時間も無いし。これならなんとかなるかもしれん」
「やった!」
自分の提案が有効な事にクレハは喜んだ。今まで足を引っ張りどおしだっただけに、その喜びはひとしおだ。
「だが時間があまり無いことには変わりは無い。急いで準備するぞ」
「じゃな」
「はーい!」
迫り来る海賊の脅威にサスケ達は動き出した。




