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護りのチカラ  作者: amatt
6/9

真実 2

『ところでカーパーくんやプロトくんは職に就いて妻子もいたりするのかい。一族と共に生きていくには少し離れた町に移り、チカラを使うため時間の融通のきく職である必要があるからね。それをすぐに決めろと言われてもなかなか難しいだろうが。』

『いえ、僕もカーパーも定職には…。あ、それが集団に使い捨てに選ばれた条件だなんて勝手に考えてました。ハハッ…。』

プロトは恥ずかしそうに答えた。

『デフくんもアルバイトだったかな。平穏を望むそれぞれ一族の血が悪い方にでたのかな。』

『なるほど、そういうことですか。』

デフとプロトの言葉が重なった。

『ただ、ブクール一族はそのチカラでは暮らしていけないから家族を養うために皆ちゃんと働いて稼いでいるよ。パルレア一族の方は医師にむいているから多くが医療関係の仕事に就いているしね。その中で病院を開業したり運営するものもいて、そこからの寄付でこの施設は存続することができているんだ。』

『…』

『僕ももっと早くにこのチカラに目覚めていたら、絶対に医師になっていましたよ。これほど有利なチカラはないですから。』

デフは言い訳しつつ悔しがった。続けて質問をする。

『パルレア一族は見張ることはしないのですか?』

『ああ、同じように人手不足ということもあるが、基本我々の方から監視・接触はしていない。それに体の悪いところは見えるが、治せるものはまずいない。デフくんは非常にまれだよ。』

『そうなんですか。』

デフは照れくさそうに笑った。

『悪い箇所に手をあて念じて治そうなんて普通考えもやろうともしないからね。』

『…』

『まあ、医療関係に勤めているものが多いから、良くない使い方をしていたらウワサを耳にするだろう。その時は多少強引にでも対応することになるがね。』

『悪い使い方は見るだけなら10くらい、治すこともできるなら30くらい思いつきますよ。』

なぜかデフは得意げに話した。

『…なかなか想像力が豊かだね。ただ見るだけならいいが、治すとなると自分自身を治してくれる人がいないと続かないよ。』

『そうだ、このチカラを使う代償の疲れのようなものは何なんですか?寝ても全然とれないですし。』

『そう、僕にも同じようなことが起こってるんです。カーパーさんは立っていられなくなってしまって、死んでしまうかと思いましたよ。』

『うむ。これが一番知っておくべき事だろうね。それはチカラを使うことで蓄積されていくもので我々はこれを黒衣と呼んでいる。デフくんの言う通り、寝ても取り除くことはできず多く蓄積されたままでいたら死んでしまうこともある。』

『カーパーて人の心臓の部分が真っ黒になっていたのがそうですね。それをパルレア一族のチカラで治すことが可能ということですか。でも治すことにチカラを使えば使った人にその黒衣というものが付いてしまうんじゃないですか?』

『治すチカラとは対象となる悪いものを何分の1あるいは何十分の1の黒衣として自身の中に取り込むことなのだよ。もっているチカラの大きさで差がでるわけだが。チカラを使うには体力も必要とするから我々はそれを数人でおこなうことによって徐々に黒衣を薄く小さくし体に影響の無いようにしているんだ。』

『僕は体力の限界までチカラを使ったのに、ほんのわずかしか治すことが出来ませんでした。ベルテさんは僕も含めてあっという間に治してしまったのに…。ほとんど無駄なことをして余計なチカラまで使わせてしまいました。すいません…。』

『それは全く違うよ。デフくんがあの女の子を治そうとしなければ、僕は君たち2人を治すことは無かったはずだなんだから。それに目覚めたばかりでうまく扱えるわけないよね。』

『そう言ってもらえると…。僕も治すことができるようになるんでしょうか?』

『大丈夫、慣れとコツさえ掴めば扱えるようになるよ。大切な治したいという気持ちは本物だしね。』

『あのー。ブクール一族も視るチカラを使うと黒衣というものが付いてしまうのに自分たちで治すことはできなかったのですか?』

『ああ、チカラを使えるようになった当初はブクール一族自身では治すことはできなかっただろうね。ただ、それ以前からパルレア一族とは共に生きてきたから治してもらっていたというわけだ。』

『でも、視るチカラはブクール一族にとって良くない事を防いでいるだけではないのですか?一緒に暮らすことでパルレア一族にもチカラの恩恵があるんでしょうか。』

『共に生きてきたから我々は平和でいられたと思うよ。片方が平和でなければ、もう片方も平和ではいられない。そういう関係になっているから運命共同体といったところか。』

コンコン

ドアをノックし男性が入ってきた。

『お伝えします。プロトさんはそちらにお任せするとのことです。それからカーパーさんは我々と共に生きていく選択をされました。以上、失礼しました。』

『承知した。ごくろうさま。』

男性はすぐに出ていった。

『今のはブクール一族のもので唯一お互いを行き来し近況を報告してくれているんだ。』

『カーパーさんはあっちの人たちと暮らすことにしたんですね。僕はどうなるんでしょうか。』

『プロトくんがしたいようにすればいい。治してあげるからすぐに決める必要もないからね。』

『ありがとうございます。えっと、もう少し考えたいと思います。』

『今では一族どうしではないが分裂していると言いましたが何があったのですか?』

『簡潔に言ってしまうと掟を破った者に何割かが付いて行ったということなんだが。仲が悪いわけではないが気軽に連絡をしあうわけにもいかないものでね。』

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