真実 1
車に乗せられ30分ほど丘を越え隣の街に入った。その間車内の会話はなかった。カーパーは座席の背もたれにもたれ掛かり窓の外を眺めていた。車はある建物の前で止まった。
『カーパーさん着きましたよ。ここが僕らのアジトです。さあ、もう少し頑張って歩いてもらいますから。』
カーパーは男の肩を借りて建物の中に入った。居間のような部屋に入ると数人の若い男女がイスに座っていた。彼らはこちらを見たが特に反応もなく視線を戻した。そこを通り抜けさらに奥の部屋のドアまで来て、男がノックしドアを開けた。
『失礼します。カーパーさんを連れてきました。』
おそるおそる部屋に入ると1人の老人が立っていた。
『だいぶツラそうだね。そこのイスに座りなさい。』
そう言うと老人もイスに座った。
『さっそくだが、今から君には君の人生にとって重大な選択をしてもらう。心して聞いてくれ。』
カーパーは小さくうなずいた。
デフとプロトは男性に連れられバスに乗った。
『僕の名前はベルテ。プロトくんは初めましてだがデフくんとは実は以前に病院で会っているんだ。そのときデフくんは寝ていたから知らなくて当然だけれど。』
それを聞いて驚いて振り向く。
『あっ、あの時に。僕の疲れがとれていたのはベルテさんが。それとホライえ〜と小さな女の子の病気を治してくれたのもそうですか?』
ベルテはうなずいた。
『ありがとうございました。やっぱりそうだったんだ。』
デフは何度もうなずいた。プロトは話の内容が理解できず、流れる景色をぼーっと見るだけだった。数分でバスを降りた。そして路地に入って少し歩いたところでベルテは立ち止まった。
『ここに入るよ。』
その建物は福祉施設だった。中には老人や小さな子供などが20人ぐらいいて、おしゃべりしたりゲームをしたり走りまわったり寝ていたりと騒がしかった。ベルテはその子供たちの中にいた初老と思われる男性に話しかけた。男性はこちらを見て立ちあがり3人を別の部屋に招き入れた。
『やあ、よく来たね。私はこの施設を運営しているジルマ。デフくんとプロトくん、チカラに目覚めた君たち2人には当然このチカラについて知る権利がある。質問がなければ今から私が順に説明をしようと思うのだが。いいかな?』
『チカラに目覚めた?僕は夢を見せられただけなんですが。』
プロトはすかさず質問をした。
『ああ、それは勘違いをしているね。いや、勘違いさせられていると言えるかもしれない。だがそのチカラは君たちの中に眠っていたものなんだよ。いいかい?』
いきなり全てが覆されたようでプロトの頭は混乱してしまった。
『では、始めるよ。このチカラは約2000年前には使われていたという。どのようにして使えるようになったのか。それはそれぞれの一族が平和であり続けるようにと何世代にもわたって願い念じたものがある時形になったものだそうだ。私やデフくんのパルレア一族は治すチカラを。プロトくんのブクール一族は視るチカラを手にした。そう、君たちはそれぞれ一族と血のつながりがあるからそのチカラに目覚め使えるのだよ。目覚めるきっかけは人それぞれだがね。』
『それじゃあカーパーを連れていった集団はブクール一族の人。』
『カーパー?ああその人もプロトくんもその集団も同じブクール一族だね。ただパルレア一族とブクール一族は今互いに何割ずつか混ざっている状態だがね。そして稀に現れる大きなチカラをもって生まれたものが、そのチカラを便利なチカラさらには人を傷つけるチカラへと発展させていってしまったという。当然争いに利用されることになった。争いは幾度となく繰り返され、約200年前にようやく終える事となった。争いに疲れ果てた人々、平和を望むそれぞれの一族の長、これらが重なるのにとても長い年月を要した。』
『ということはジルマさんや他の皆さんは色々なチカラを使うことができるのですか?』
『いや使えない。一族の長たちは争いを生むこのチカラを後世に伝えないようにと取り決めたからね。教わることで扱えるようになるものは便利なチカラさえも。ただ、それぞれ最初に使えるようになったチカラ。治すチカラや視るチカラなどだが、これらはもともと血に刻み込まれているもので平和の為のみ使うことを許されるとした。』
『あのー、この視るチカラはブクール一族の人を助けてるということですか?』
『ああ一族を助けているというのはそうだが直接助けてるかと言うと違う場合が多い。視るチカラには意志があるといわれている。だから人を助ける事が一族を平和へと導くよう影響を与えているのだろう。が、いつどのような影響を与えているのか分かり得ない。』
『どうしてブクール一族の人は体力が限界になるまで何も教えてくれないのですか?同じ血が流れているのに。』
『それは一族のためであるが、彼らなりのやさしさでもあるのだよ。まずこの視るチカラは悪い事に利用できるが思いつくかい?』
『はい20ほど。』
それほど把握して無いはずのデフが割って入った。
『………』
『うむ。事情を知らなくても悪い事に利用するものにはチカラを使われるわけにはいかない。同じように人を助けずにいれるものも。たとえ小さな事故であっても、のちに大きな影響を与えるかもしれない。一族の平和に関わる事だからね。そういうものにはチカラを封じ込めて今まで通りの生活に戻ってもらうことになる。もちろん体は治してあげてね。』
『封じ込める事ができるんですか。それなら最初から力づくでも封じ込めてしまえばいいんじゃ…。自分たちだけでチカラを使う方が確実だし。』
『その通りなんだが現実人手が足りなくなってる問題があるんだ。プロトくんが知らなかったようにチカラの目覚めていない子に親は一族について教えないものが多い。血に縛られず自由に生きて欲しいという想いから。平和な時代の流れだろう。だから共に生きるという選択を与えて仲間を募っているのだよ。このチカラの代償を体験してもらった上でね。』
『このやり方は本当に恐怖を感じますよ。それでどうやって封じ込めるのですか?』
『それにはある道具を使う。かつて争いの最中チカラを弱めるために作られた石のかけら。かけらとなって弱まってはいるが体力が限界の状態で使うと、弱められてチカラは視ることができず血も絶やすわけにはいかないと自ら奥底に眠ると考えられている。そうして眠ったチカラが再び目覚めたとは聞かない。逆にチカラを増大させるために作られた石のかけらは、チカラを目覚めさせるきっかけとして使われている。』
『かけらとなっているのは争いを終わらせた時の取り決めで道具類も壊してしまったからですね。』
プロトが質問する前にデフが答えを出した。




