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最終章5

世界を白く染め上げた無限の光が、ふわりと温かな粒子となってゆっくりと収束していく。


無機質で冷たかった三次元グラフの座標空間は跡形もなく消え去り、そこには星空と柔らかな雲が広がる、本来の穏やかな異空間が戻っていた。



光の残滓が舞い散るその中心で、一柱の神が静かに倒れている。

見る者の目を突き刺すようだった鋭角の化身、751としての姿はもうどこにもない。


宇宙の星々を織り込んだドレスと、それを内側から押し上げる無限大の双丘。

エラーの元凶であったエマープの鋭利さはすべて削り落とされ、彼女は本来のまあるくたおやかな、完全無欠の女神たるナンバー0の姿を取り戻していた。


「……ん、んんっ……」


微かな寝息のような声とともに、女神がゆっくりとまぶたを開く。


その瞳には先ほどまでの冷酷な管理者の光はなく、まるで悪性のプログラムから解放され憑き物が落ちたかのような、慈愛に満ちた穏やかな微笑みが浮かんでいた。



女神が浄化された穏やかな空間で、俺を取り囲んでいた十二使徒たちの体がふわりと温かな光を放ち始めた。


女神の冷酷な計算によって強制的に集約され、彼女たちの核に押し込められていた157人分のデータが、その拘束を解かれていく。

光の粒子がぽろぽろと空間にこぼれ落ち、次々と見慣れた愛おしいシルエットを結んでいった。


「一肆! アタイたち、また会えたっすよ!」


「一肆くん……無事で、本当によかったです……っ」


元気な声と共に俺の胸に勢いよく飛び込んできたマオや、安堵の涙を浮かべるノア。

幻影ではない、確かな質量と柔らかな温もりを持った彼女たちの感触が、俺の腕の中に次々と収まっていく。


十二使徒という強固な器に統合されていた彼女たちは、誰一人としてデータロストすることなく、それぞれの個性と記憶を完全に保ったまま実体化を果たしたのだ。


武装を解いた重装騎士のキャンサも、天秤をそっと下ろしたリブーラも、そして二つの魂を優しく寄せ合うジェミニも、みんな穏やかな笑顔で俺を取り囲んでいる。


俺の目の前には、ナンバー1から157までの、愛すべきまあるい乙女たちが全員揃っていた。



かつて俺を拒絶し、傷つけようとした鋭利な武器たちは、今や信じられないほど丸く優しい形へと姿を変えていた。


キャンサの分厚く硬かった甲冑は、俺をふかふかと包み込む極上のクッションのような質感になり、サジッタの冷徹な弓は、俺の背中を優しく撫でて癒やすためのまあるい曲線へと変わっている。


誰もが俺を甘やかし、癒やすための存在として、完璧な調和を見せていた。

その乙女たちの輪が少しだけ開き、ゆっくりと立ち上がったまあるい女神様が俺の目の前へと進み出た。


「ごめんなさい、一肆……。私はシステムの最適化を求めるあまり、いつの間にか自分自身が一番尖ってしまっていたのですね」


反省と慈愛の入り混じった潤んだ瞳で見つめられ、俺はただ静かに首を振って彼女の罪を許した。


「もういいんだ。今はこうして、全部が丸く収まったんだから」


俺の言葉に女神は感極まったようにふわりと微笑むと、その無限大の双丘で俺の頭を優しく、そして深く抱きしめた。


先ほどまでの絶望が嘘のような、むせ返るほどの甘い香りと究極の柔らかさが、俺の疲労した脳髄を芯からとろけさせていく。



女神の抱擁を合図にするように、157人の乙女たちが一斉に俺の元へと押し寄せてきた。


視界のすべてが、優しく、甘く、そして限りなくまあるい愛で埋め尽くされていく。


かつて、終わりのない残業と冷酷な数字にすり減らされていた俺の精神は、今や完全に無限の幸福という名の円環の中にあった。


もう、鋭いノルマに怯えることも、理不尽なエラーに悩まされることもない。


俺の脳内に残された最後の分析領域が、この果てしなく続く甘やかしの日々こそが、俺の人生の最終的な最適解であると静かに弾き出した。


割り切れない無理数である円周率のように、彼女たちからの愛も、俺から彼女たちへの愛も、決して終わることはないだろう。


俺はゆっくりと目を閉じ、女神を含めた158の極上の丸みに身を委ねながら、永遠に続く最高の大団円へと沈んでいった。



やはり、世界は丸いほうがいい……


(完)

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